一連托生
「……他にも出来ることがあるのか?」
ヘルグ兄様は、ポカンとしている。
「……もしかして」
アズール様は、文献からの知識で何か気付いていそうね。
(聞こえますか?今、3人の意識を繋いでます。アズール様は文献で知っていたようですね)
二人は、私を目を丸くして見つめている。
(今はお互い心の声が筒抜けだから、悪いことを考えると分かっちゃいます。だからお気を付け下さいませ)
ヘルグ兄様は、私とアズール様の顔を交互に見ながら、思わず声に出している。
「なんだコレ?凄いな」
(便利だな)
(ヘルグラウ、口にしなくても伝わるぞ?)
アズール様は、能力の理解ができているのか、心の声だけで話し始めた。
「あっ」
(そうか筒抜けだったな?面白い。このまま内緒話ができるな?)
ヘルグ兄様は楽しみながら、若干混乱しているようだ。
(内緒話…‥これはそんなレベルではないな。この能力、諜報活動に向きすぎだろう?)
実際に使ってみたことで、アズール様は難しい顔をした。
(そうなんですよ。だからこそ、教える相手は慎重に選ばなきゃならなかったのです)
私はわざとチラッと二人を見た。
(お二人の能力のせいで、こうして知らせる事になってしまいましたわ)
わたしが膨れて見せたら、二人揃って気まずそうな顔をした。
(あと、この能力は、私の側にいなくても強く想えば声は届きます。認識できていれば、どこにいても念話ができます)
私は、能力でできる事を説明しておいた。
(ちょっと便利なんて物じゃないな。ティトが警戒する意味が理解できたよ)
ヘルグラウが、憔悴した様子になっていた。
(これは、俺とヘルグラウ……もう面倒だから、俺もヘルグ呼びで良いか?)
アズール様は、ヘルグ兄様をいつもより簡易的な呼び方をするようにするようだ。
(ん?良いぞ?)
ヘルグ兄様は、全く気にしていない。
(仲良しですね)
(ティトは、俺達と仲良くなっておいて好都合かもな? 俺に、いい考えがあるんだ)
(え?なんですか?)
私達は、お互いの顔を見つめながら無言でお茶を飲んでいる。
傍目から見たら、異様にみえるだろう。
(学園がそろそろ始まるだろう?そうすると、能力を使いたくなる時があると思うんだ)
(確かに、そうでしょうね?)
(俺達の能力はさっき明かしただろう?ヘルグラウの『野生の勘』と俺の『絶対記憶』は既に王族や官僚達には明かされている)
(……そうなんですね)
(だから、ティトは俺達と行動している時なら、能力を使用したとしても、俺達の能力で何かしたと思わせる事ができるかもしれない)
(本当ですか?)
私は期待を込めて二人を見つめた。
(ああ、アズールの言う通りかもしれないな)
(学園が始まれば、生徒同士のトラブルなどは日常茶飯事だ。巻き込まれたら、能力を使う事は増えるだろう?)
(まあ、そうなりますよね?)
(アズールの絶対記憶と、基本的な思考能力があれば、色々な事の予測は可能だし、俺の勘もあれば、後からいくらでも言い訳ができるな)
(確かに、誤魔化せそうですわ)
私は、嬉しくて両頬に手を当てた。
(能力の細かな詳細は、本人にしか分からないから、俺達2人の能力は誤魔化しが効く )
(ただし、俺達がいない所で能力を使われるとフォローできない。隠したいならば、可能な限り俺達の側で使うようにしてくれないか?)
(アズールか俺と行動を共にしていれば、ティトの安全は保たれるな)
アズール様とヘルグ兄様は、満足そうに頷き合っている。
(巻き込んでしまって良いのでしょうか。もしも、私の能力が周知され、2人が隠していると知られてしまったら、責任を問われませんか?)
(危険な人物を隠蔽したとなれば、アズールも俺も責任に対する罰はかなり重くなるだろうな)
(そうなりますよね……本当にそれで……)
(ティト、俺もヘルグも分かって言ってるよ。どうせなら3人ともリスクを分け合って、お互いの人生を縛り合えば安心じゃないか?)
(誰かが迂闊な行動をとれば、全員危険にさらされる。アズールと俺ができる事なら、ティトの能力を使わないで解決しよう)
(共同責任という奴かしら?頼もしい味方ね)
(まず、情報はティトが見つけるだろ?それを共有して、基本的に俺の勘の力と、アズールの思考を使って解決すればいい)
(それが一番いいな。そうすればティトが無闇に能力を使わなくて済むな)
(あぁそうだ。だからティトは決して1人で抱え込まないこと。それは約束してくれるかい?)
(ヘルグ兄様……ありがとうございます)
(あと、いつか俺たちが仕えている、ユングを身内だと認めてもらえる事を俺は願ってるよ)
(アズール様もありがとう……王子の件は分かりました。拒否するだけじゃなくて、ちゃんと見極めてみようと思います)
私は能力を切って、自分の声を出した。
「本当は1人では怖かったの。1人でできる事は限られているから。だからこれから先、何かあったら二人に相談させてください」
私はとても強力な協力者を得る事ができた。
「心配しなくていい。もうすぐ学園が始まる。ティトは、俺の妹分だから、一緒にいても何もおかしくないだろ?」
ヘルグ兄様も、普通に会話しだした。
既に能力は切っているが、能力を使わなくても私のことを大切に思っているのが、一目で理解できるほどの、とても良い笑顔だ。
「俺のことも仲間に入れてくれ。学園に入学前から親しくしていたと、初めから周りに知らせておけば、一緒にいても何もおかしくはない」
アズール様も、作戦に乗り気のようだ。
「ちょうどお揃いのポーチもあるしな?」
お揃いのポーチと、お揃いの魔力のペンを懐から取り出したアズールは、
こちらにフリフリとアピールをしてきた。
「なら、ヘルグ兄様の事は良いとして、アズール様もお兄様とお呼びした方が良いかしら?」
その方が周りから見たら、嫉妬の対象にならなくて、いいのかもしれない。
アズール様はもの凄くモテるらしいし……
ただの仲良しでは、女性陣の嫉妬がすごいことになりそうだわ。
「ティト、アズールを兄様呼びしてみろよ」
ヘルグ兄様が促したので
「アズールお兄様?」
これで良いか?と私は首をかしげた。
「何かに目覚めそうだから、やめてくれ。様は付けなくて良い。アズールで良い」
アズールは、なぜか天を仰いでいる。
「では、アズ兄様はどうですか?」
何か、ダメだったみたいなので、もう少し親しみやすいような呼び方にした。
「それなら、軽くて良さそうだな」
ヘルグ兄様も賛同した。
「ギリギリ許容範囲内か?それならいい」
何かまだ思うところがあるみたいだけど、納得はしたらしい。
「では、ヘルグ兄様とアズ兄様ですね?これからも、よろしくお願いします」
なんとなく、2人が一緒なら全てうまくいくような気がした。
「これ、絶対王子も兄様と呼べと言うよ?」
ヘルグ兄様が、アズ兄様に耳打ちしている。
聞こえているから、内緒話になってない。
「そうだな、ユングの考えだと、ティトに自分を兄と呼ばせる選択肢しかないだろうな」
——私は全力で聞こえないふりをした。
もうすぐ学園が始まる。




