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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第1章 始まりのお話

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巡り合わせ

 ep3【3人の少年】の続きの時間軸になります




「アズール、どうなんだ。シュピネル嬢と何があったんだ?」 


 ユング王子がアズールを問い詰めている。


 いつも冷静なアズールが、困っているのを見て、王子は多分楽しんでるな。


 ——ほっとくか。


 とはいえ、さっきのは本当にシュピネル様の娘だったのか、あの小さな娘がティト?

 

 ……余り成長しなかったようだな。


 随分とめかし込んでいたし、目を閉じて寝ていたから分からなかった。


 かつて自分の事を「ヘルグ兄様」と呼び懐いてくれた可愛い妹分とは、直ぐに打ち解けて仲良くなれたんだ。



 ——あの時以来、会えなかったんだよな。




***




 商会からシュピネル家に移動して、迎えが来るまで、客間で魔道具の使い方などを仲良く喋り、今度また遊ぼうと約束などもした。


 そろそろ迎えが来る頃合いで、


 ティトが「ヘルグ兄様」と呼んだその時、


 彼女の兄が、背中にケルベロスでも背負っているかの形相で


「『兄様』? ティト『彼』は『誰』かな?」


 と、尋ねて来たので


「ヘルグラウ・フェルトシュパートです。ティトとは、商会で出会ってから友達になりました。お兄様ですか?よろしくお願いします」


 挨拶をして握手の手を出したら、氷よりも冷たい刺さるような眼差しで


「既にティトと呼んでいるのかい?ティトは『僕の妹だから』今日はお客様だから許すけど……よくよく考えて行動してね?」


 握手は完全に無視されたし、物凄い形相で迫って来た。


 ティトも兄の登場に、悪い事はしてないのに青い顔をしてブルブル震えていた。


 ——すごく機嫌が悪いな。八つ当たりかな?


 彼女の兄は、外に迎えが来たとの知らせを知るや否や


「お迎えが来たようですね?今日はティトと仲良くしてくれてありがとう。さあ、御者を待たせてはいけないよ!」

 

ティトには挨拶もままならず、僕は慌ただしく追い出されてしまった。




***




 その後も、何度か父が交友にと打診したが、毎回タイミング悪いのか、はたまた嫌われてしまったのか。


「ティトの不在や体調不良で、結局1度も会えなかったんだよな……」


 相性も良く、妹分が出来て嬉しかったんだ。折角仲良くなれたし、残念だったが……



 学園が忙しくなり、すっかり忘れていた。



 ふと、ユング王子を見ると、物凄い笑顔で


「さあ、聞いてあげるから話してごらん?」


 顔を手で覆い、項垂れてソファーに座るアズールの真横にわざわざ座り、肩を抱きながら迫っていた。


「ユング王子、それ近すぎて逆に喋りにくいと思いますよ。とりあえず離れてあげて」


 とりあえず、助け船ぐらいは出してやるかな。


「後、昔、妹分がいるって言ったの覚えてる?それ、シュピネル嬢の事だったわ。綺麗さっぱり、すっかり頭から抜けていたけど」


 起きている時に合わなくて良かったな。


「何ぃ?会おうとして、結局、会えなかった、可愛いけど兄が凄く怖いあの娘か!今まで、誰か聞いても、絶対教えてくれなかったよな?」


 そういえば、言わなかったな?


「王子の専属護衛として学園にいたし、どこの家か分かると、彼女の兄が気まずいだろうと思ったのでね」


立場的に、色々やり難いんだよな。


「それに、妹分とか言ってるけど、結局会えなかったし、何だかカッコ悪くて、なかった事にしたかったのかな?」


随分と前のことだからな


「その頃は、まだ納得できずモヤモヤしていたんでしょうね。今は、忘れていた事がかなり気まずいですが」


 彼女はもう忘れているかも知れないな。


「久々の再会だったのに、結局、本当の意味では会えなかったのだな。皮肉にもアズールは、偶然とは言え彼女に出会ったようだな?」


 にやにやしながら、王子はアズールを揶揄っている。余り虐めてやるな。

 

 アズールがだんだん小さくなっているぞ?


「アズール?何をそんなに気にしているんだ?何かしたなら謝れば良いのでは?」


 あの兄は厄介、いや、面倒そうだけどな。


「彼女が、ヘルグラウの……俺は……特別何かをしたわけではないんだ……」

 

 ティト、アズールを凹ませるとは凄いな?


「そもそもティトは俺のものじゃない。何をそんなに気にしてるんだ? 何もしてないなら気にする事ないだろ?」


 一体、何があったんだよ?


「まあ、そうなんだけど……やっぱり俺のせいかも知れないんだよ」


 アズールが、ポツリと呟いて話し始めた。

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