巡り合わせ
ep3【3人の少年】の続きの時間軸になります
「アズール、どうなんだ。シュピネル嬢と何があったんだ?」
ユング王子がアズールを問い詰めている。
いつも冷静なアズールが、困っているのを見て、王子は多分楽しんでるな。
——ほっとくか。
とはいえ、さっきのは本当にシュピネル様の娘だったのか、あの小さな娘がティト?
……余り成長しなかったようだな。
随分とめかし込んでいたし、目を閉じて寝ていたから分からなかった。
かつて自分の事を「ヘルグ兄様」と呼び懐いてくれた可愛い妹分とは、直ぐに打ち解けて仲良くなれたんだ。
——あの時以来、会えなかったんだよな。
***
商会からシュピネル家に移動して、迎えが来るまで、客間で魔道具の使い方などを仲良く喋り、今度また遊ぼうと約束などもした。
そろそろ迎えが来る頃合いで、
ティトが「ヘルグ兄様」と呼んだその時、
彼女の兄が、背中にケルベロスでも背負っているかの形相で
「『兄様』? ティト『彼』は『誰』かな?」
と、尋ねて来たので
「ヘルグラウ・フェルトシュパートです。ティトとは、商会で出会ってから友達になりました。お兄様ですか?よろしくお願いします」
挨拶をして握手の手を出したら、氷よりも冷たい刺さるような眼差しで
「既にティトと呼んでいるのかい?ティトは『僕の妹だから』今日はお客様だから許すけど……よくよく考えて行動してね?」
握手は完全に無視されたし、物凄い形相で迫って来た。
ティトも兄の登場に、悪い事はしてないのに青い顔をしてブルブル震えていた。
——すごく機嫌が悪いな。八つ当たりかな?
彼女の兄は、外に迎えが来たとの知らせを知るや否や
「お迎えが来たようですね?今日はティトと仲良くしてくれてありがとう。さあ、御者を待たせてはいけないよ!」
ティトには挨拶もままならず、僕は慌ただしく追い出されてしまった。
***
その後も、何度か父が交友にと打診したが、毎回タイミング悪いのか、はたまた嫌われてしまったのか。
「ティトの不在や体調不良で、結局1度も会えなかったんだよな……」
相性も良く、妹分が出来て嬉しかったんだ。折角仲良くなれたし、残念だったが……
学園が忙しくなり、すっかり忘れていた。
ふと、ユング王子を見ると、物凄い笑顔で
「さあ、聞いてあげるから話してごらん?」
顔を手で覆い、項垂れてソファーに座るアズールの真横にわざわざ座り、肩を抱きながら迫っていた。
「ユング王子、それ近すぎて逆に喋りにくいと思いますよ。とりあえず離れてあげて」
とりあえず、助け船ぐらいは出してやるかな。
「後、昔、妹分がいるって言ったの覚えてる?それ、シュピネル嬢の事だったわ。綺麗さっぱり、すっかり頭から抜けていたけど」
起きている時に合わなくて良かったな。
「何ぃ?会おうとして、結局、会えなかった、可愛いけど兄が凄く怖いあの娘か!今まで、誰か聞いても、絶対教えてくれなかったよな?」
そういえば、言わなかったな?
「王子の専属護衛として学園にいたし、どこの家か分かると、彼女の兄が気まずいだろうと思ったのでね」
立場的に、色々やり難いんだよな。
「それに、妹分とか言ってるけど、結局会えなかったし、何だかカッコ悪くて、なかった事にしたかったのかな?」
随分と前のことだからな
「その頃は、まだ納得できずモヤモヤしていたんでしょうね。今は、忘れていた事がかなり気まずいですが」
彼女はもう忘れているかも知れないな。
「久々の再会だったのに、結局、本当の意味では会えなかったのだな。皮肉にもアズールは、偶然とは言え彼女に出会ったようだな?」
にやにやしながら、王子はアズールを揶揄っている。余り虐めてやるな。
アズールがだんだん小さくなっているぞ?
「アズール?何をそんなに気にしているんだ?何かしたなら謝れば良いのでは?」
あの兄は厄介、いや、面倒そうだけどな。
「彼女が、ヘルグラウの……俺は……特別何かをしたわけではないんだ……」
ティト、アズールを凹ませるとは凄いな?
「そもそもティトは俺のものじゃない。何をそんなに気にしてるんだ? 何もしてないなら気にする事ないだろ?」
一体、何があったんだよ?
「まあ、そうなんだけど……やっぱり俺のせいかも知れないんだよ」
アズールが、ポツリと呟いて話し始めた。




