意気投合
「僕は、ヘルグラウ・フェルトシュパートだ。さっきは庇えなくてごめんね?」
銀灰色の髪に、スモーキーグリーンの少し垂れ目な瞳を持つ彼は、耳が垂れた犬のような表情をしている。
「気にしないでください。謝らいでください。私はティーフロート・シュピネルです。庇おうとして下さり、ありがとうございました」
色合いといい、雰囲気も優しい少年だ。
「お父様はとても強そうでしたね。見ていてとても素敵でした」
さすが総帥様ね?
「ありがとう!さっきいたのは僕の父で、軍の総帥なんだ。かっこいいだろう?」
お父様みたいな騎士になりたい。と言っていただけの事はあるわね。
「ヘルグラウ様も学園を通じて、騎士を目指されるのですか?」
憧れてるなら目指すわよね?
「そうだね、騎士科を受講予定だよ。他にも興味があるものはやるかな。学園では通学期間が重なるね、会えるのを楽しみにしているよ」
「あと、敬称は要らないよ。僕は偉くないし、それに、そんなに歳は違わないだろ?君は、今いくつなんだい?」
——学園って何年間なのかしら?
「えっと……(7歳で倒れたから今は8歳?)先日、8歳になった?」
——多分あってるわよね
「なんで疑問…まだ8歳になりたてかな?僕は10歳だから、2つ年上だね。僕は今年から学園に通うんだ。今日もそのために来たんだよ」
——残念ながら10歳に見えないです。
「お兄様の2つ下なんですね?お身体がとても大きいから、お兄様と同じくらいかと思ってました……ごめんなさい」
ちょっと失礼だったわね。
「はは、僕にとっては体が大きいのは誉め言葉だよ。ありがとう、ティーフロート嬢」
——あしらい方が10歳じゃないわ。
「“嬢”というほど洗練されておりませんわ。むずむずしちゃいますから。ティトでいいです」
嬢はもっと大人になってからでいいですわ。
「ティトか。可愛い響きだね? 僕のことも、ヘルグラウでいいよ」
——何だか既にスマートな紳士ね
「それはちょっと生意気すぎます……そうね、ヘルグ兄様はどうかしら?」
なんだかお兄さんぽいし。
「いいね、その呼び方。妹ができたみたいで嬉しいな。ティト、僕の通学用の空間魔法のカバン一緒に選んでよ。後、これからよろしくね」
——ヘルグ兄様10歳にして中々やるわね?
「よろしくお願いします、ヘルグ兄様」
シスコンのお兄様には、“お兄様”と呼ぶ相手が増えたこと、知られない方がいいわよね?
そう考えながら、ヘルグ兄様と握手をした。
「いつまでも立っていないで、こちらにお座りなさいな。一緒に選びましょう」
お母様から声がかかったので、二人でソファに並んで一覧を見る。
「いろいろあるのですね?」
一覧には様々なデザインの鞄がある。
「そうだね、見た目だけでなく、それぞれ機能が全然違う。シュピネル様、学園に通うのにお勧めなのはどれになりますか?」
ヘルグ兄様はお父様に尋ねた。
「君は、お父上と同じ道を行くんだよね?騎士科だと遠征もあるし、討伐した証明部位もあるだろうから……っと、予算は聞いたかい?」
遠征もあるんだ? 実践的なんだな。
「父は細かいことは気にしない性格なので、きっと今日も『一番いいやつをくれ』としか言わないと思います」
ヘルグ兄様は、眉間に皺を寄せ考え込み
「予算はあってないような物かと……でも、後で、母に怒られそうなので程々がいいです」
ヘルグ兄様は、情けない顔になった。
——この人、多分苦労人タイプだわ。
「ヘルグラウ君は、持ち物はマメに整理整頓するタイプかな?」
父は、一覧を見ながらヘルグ兄様に尋ねた。
「神経質になる程まめではないと思いますが、整頓は嫌いじゃないです」
お父様が、ふむと一覧に目を向ける。
「であれば、自然修復と時止めはありで容量はそこそこだな。この部屋ぐらいの大きさがあれば、比較的大きな物でも入るだろう」
——この部屋の大きさ?
「大型の魔物の場合は、皆で協力して解体するだろうし、屋敷サイズはいらないかな」
——屋敷サイズの荷物とは?
「鞄には、そんなに大きなサイズもあるのですか?屋敷ごと入れるのかしら?」
私の隣から、プッと笑う声がした。
「ティト、流石に屋敷は持ち上がらないんじゃないかな?建物の基礎が埋まってるし」
——むむっ、バカにされてるわね?
「移動出来る屋敷にしたら、入るのではないですか?それなら便利そうですわ」
前世には、移動出来る家が有りましたよ?
「ティト? 確かにそれがあれば旅の途中便利だが、護衛がしっかりいなければ襲われやすくないかな?」
お父様の指摘は確かだけど……
「王族なら……使えそうですわね?」
護衛が周りに付くだろうし?
「……伝えてみよう。屋敷サイズの鞄は、この商会のように、商品を運搬する人達向けだよ」
大型のトラックみたいな感じなのね?
「一般的な使い方では無いが、稀に整理整頓が苦手な人が『出すのが面倒』で使っているよ」
ゴミ屋敷になるタイプには有用ですね……
——何でも放り込むんだろうな
「ヘルグ兄様、笑いすぎです!」
横を見たら、隣でずっと笑っている。
「ごめん、発想が予想外だったから。シュピネル様、先程の内容でお願いします。後は見た目ですよね。ティト、どれが良いと思う?」
私は、ヘルグお兄様と「あれがいい」「それはどうだ」と意気投合してデザインを選んだ。
***
「……随分相性が良いのではないか?」
「そうね、年齢的にも良さそうですわ。後は本人達次第かしら?」
「……ティトにはまだ早くないか?」
「学園に入る迄に決める方もいましてよ?」
「せめて、学園の三年生位迄は待っても良いのでは……あの年頃は心が変わるだろう?」
「だから、本人達次第と言っているでしょう?何を焦っているのですか、今からそんなでは困りますよ?」
なんて、お父様とお母様が話し合いをしていたなんて、私は全く知りませんでした。
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