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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第1章 始まりのお話

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思考誘導と自滅する男

見つけてくれてありがとうございます。

更新は不定期になります。出来る時に頑張ります

 男の思考は ( ) ティトの誘導は《 》




「……お手数おかけしました」


(くそ、マズイな、フェルトシュパート閣下とシュピネル閣下、大物じゃないか)


(この店を懇意にしているのか。くそっ、この場所が使えれば!この店が出来てから、我が商会は裏通りだから客足が減ったんだ!)


「いや、娘と共に来ていたのだが、君が大声をあげていたのでね。こちらとは長い付き合いなんだ。これからは気をつけなさい」


 (くそ、全く面倒だな)

《間が悪かったか》


「この者が大声を?さっき何かあったのですか?……シュピネル卿がいるのを見かけ、何も知らずに挨拶に寄ったが」


 (軍の総帥か…)

《気にしなくていい》


「少し問題がね。娘は待ちきれず、閣下のご子息を誘って商談室に共に入っていきましたよ。妻も中におります。かまわなかっただろうか?」


(中に、妻と娘も来ているのか?)

《チャンスじゃないか!》

(そうだ、近付くチャンスだ!)


「ははは、我が子も、シュピネル卿のご令嬢にお誘い頂くとは、隅に置けませんな」


(さっきの子供はフェルトシュパート閣下の子供か。手を出したら危なかったな)

《これは逆に運が向いたのでは?》

(このような大物と顔を合わせるなんて)

《運がいいな!》



 「おい、どうかしたのか?」


(閣下が話しかけて下さった!)

《よし!いいぞ》


(せっかくのチャンスだ!顔繋ぎしをしよう)

《急がなくては》


(早くしなければ帰ってしまうか!)

《子供たちを使って恩を売ろう》


(そうか、今商談室にいるんだよな)

《乗り込んでお近づきになろう》


《急がなければ》

(今すぐ行こう帰ってしまう!!)


「失礼、閣下、奥方様とお子様たちにもご挨拶させていただきたいのですが」

《話は後だ!早く、急いで!走って行こう!》


「うちの妻達ですか? 何のために?」


「いや、その、ご挨拶を。では失礼」


(早く行きたいのに悋気か?挨拶ぐらい良いではないか)

《商談室は目の前だ。強引でいい》


(行ってしまおう!)

《邪魔される前に早く!急がなければ》


「待て!どこに行く!」


(早くあの部屋に早く行かなければ!ん?何かが腕をつかんで……?)

《気のせいだ!早く行くんだ、引っかかっただけだ。早く振り払え、早く早く》


(この!邪魔だ!!)

《早く急げ!早く行くんだ》



(よし!間に合ったか!)

《よくやったぞ!》


 商談室の扉が、バンと開いた



「そこまでだ!」


 低く重厚な声が聞こえた。


(ちょっと待て、なんで俺が、総帥に組み伏せられている?)

《俺は何もしていないぞ!》


「何をするんだ!」


(何が起きている?挨拶しようとしただけだ)《今日は何しに来た?》


(店を潰しに来たのに、なぜ私がこんな……)

《この店に恥をかかされたんだ!》


(この店が全部悪いんだ!)

《そうだ!全部言ってぶちまけてやる》)


「この店が、全部悪いんだ!《どうするつもりだった?》火でもつけて絶対潰してやる!!」



 やる事は終わったので、私は男に繋いでいた意識を外した。



 ——上手く出来たわよね?



「あの男は、いったい何を言っている?フェルトシュパート卿、物騒な物言いに、我が家族に対しての非礼、このままにはされまい」


 お父様は、足元に転がる漢を見た後、フェルトシュパート卿をみた。


「ご子息は、一旦我が家で預かろう。その者の悪略を暴いてくれ」


 お父様は私がお願いした通り、犯罪歴を見るよう、フェルトシュパート卿にお願いした。


「そうだな息子は任せる。手間をかけるが、代わりに息子に魔道具を見立ててくれないか?」


 お父様は、こちらにチラリと目を向けた後、構わないと頷いた。


「私は魔道具はあまり得意ではないから丁度良かった。ヘルグラウいいね?シュピネル卿に迷惑をかけるんじゃないぞ」


 フェルトシュパート卿は、空いている片手で息子を撫で、


「立て!行くぞ!」

 

 フェルトシュパート卿は、部屋に乗り込んだ男を掴んだまま、外へ連行していった。


 彼の頭の中は、きっと(なぜだ!!)でいっぱいだろう。




「ティト、ちょっといいかい?」


 お父様に呼ばれて、私は部屋から出た。


「勝手に男の子を連れて来てはいけないよ?お父様の知り合いだから大丈夫だったけど、違ったらご家族が心配するからね?」


(いったい何をした?あの男、急に挙動不審になったぞ?あぁ、表での話は聞かなくていい。反省するフリで、黙って下でも見てなさい)


 お父様は、表向きは説教をするらしい。


(お父様、使い分けて会話できるなんて随分と器用ですわね?)


 私は、言われた通りに叱らるフリをする。


(先程は、あの方の心の声に同じ声で、より思いを強くしたり、考え方にきっかけを与えたり、急がせてみました)


 思った以上に、うまくいってしまった。


(元々の考えを強めただけなので、近いうちに問題は起こっていたでしょうね。私を使って、お父様に恩を売ろうと考えていましたよ?)


 一体、何をするつもりだったのか


(そもそも、初めから商会内で事故を起こそうとしていたみたいですし)


 ちゃんと調べられて反省すべきだ。


(ティト、そんな事よく出来たな?しかし怖い能力だな。洗脳したり精神を壊せるだろう。大丈夫だと思うが、使い方は気を付けなさい)


 お父様は、私の能力の使い方に不穏さを覚えている。


(前世の記憶のせいかと、即座に悪知恵に対応出来るくらいは苦労して来たので……)


 散々騙され続けたから、悪事を働く人の思考回路が読めたのかもしれない。


(お父様、私の能力は、自分だけの利益や人を貶め、危険にさらすよう使い方はしません)


 それは、人としてやっていいことではない。


(能力を使うとしたら、手の届く範囲の理不尽な悪事を回避するか、誰かの幸せになるお手伝いくらいですわ)


 気付いたのに見て見ぬ振りは、したくない。



「反省しているな?戻ろう、皆が待ってる」


(程々にするんだぞ)


「はい。申し訳ありませんでした」


(お父様、ありがとうございます)


 お父様に促されながら、私は部屋に戻った。




「ごめん。僕のせいで、君が怒られた。シュピネル閣下、悪いのは、何も考えず勝手について行った僕です。彼女を責めないでください!」


 少年は頭を下げて、お父様に訴えかけた。


「気を使わせてしまったね。娘を庇ってくれてありがとう。それと、閣下は付けなくてもよいよ。ほら、一緒に魔道具を選ぼうか」


 少年は顔を上げ、お父様を見て笑顔で


「はい!シュピネル様、魔道具選びのアドバイスよろしくお願いします」


 少年はお父様にペコリと頭を下げた後、振り返ってこちらを見ると、


「よろしくね!名前、聞いてもいいかな?」


 少年はニカッといい笑顔で笑った。





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