思考誘導と自滅する男
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
男の思考は ( ) ティトの誘導は《 》
「……お手数おかけしました」
(くそ、マズイな、フェルトシュパート閣下とシュピネル閣下、大物じゃないか)
(この店を懇意にしているのか。くそっ、この場所が使えれば!この店が出来てから、我が商会は裏通りだから客足が減ったんだ!)
「いや、娘と共に来ていたのだが、君が大声をあげていたのでね。こちらとは長い付き合いなんだ。これからは気をつけなさい」
(くそ、全く面倒だな)
《間が悪かったか》
「この者が大声を?さっき何かあったのですか?……シュピネル卿がいるのを見かけ、何も知らずに挨拶に寄ったが」
(軍の総帥か…)
《気にしなくていい》
「少し問題がね。娘は待ちきれず、閣下のご子息を誘って商談室に共に入っていきましたよ。妻も中におります。かまわなかっただろうか?」
(中に、妻と娘も来ているのか?)
《チャンスじゃないか!》
(そうだ、近付くチャンスだ!)
「ははは、我が子も、シュピネル卿のご令嬢にお誘い頂くとは、隅に置けませんな」
(さっきの子供はフェルトシュパート閣下の子供か。手を出したら危なかったな)
《これは逆に運が向いたのでは?》
(このような大物と顔を合わせるなんて)
《運がいいな!》
「おい、どうかしたのか?」
(閣下が話しかけて下さった!)
《よし!いいぞ》
(せっかくのチャンスだ!顔繋ぎしをしよう)
《急がなくては》
(早くしなければ帰ってしまうか!)
《子供たちを使って恩を売ろう》
(そうか、今商談室にいるんだよな)
《乗り込んでお近づきになろう》
《急がなければ》
(今すぐ行こう帰ってしまう!!)
「失礼、閣下、奥方様とお子様たちにもご挨拶させていただきたいのですが」
《話は後だ!早く、急いで!走って行こう!》
「うちの妻達ですか? 何のために?」
「いや、その、ご挨拶を。では失礼」
(早く行きたいのに悋気か?挨拶ぐらい良いではないか)
《商談室は目の前だ。強引でいい》
(行ってしまおう!)
《邪魔される前に早く!急がなければ》
「待て!どこに行く!」
(早くあの部屋に早く行かなければ!ん?何かが腕をつかんで……?)
《気のせいだ!早く行くんだ、引っかかっただけだ。早く振り払え、早く早く》
(この!邪魔だ!!)
《早く急げ!早く行くんだ》
(よし!間に合ったか!)
《よくやったぞ!》
商談室の扉が、バンと開いた
「そこまでだ!」
低く重厚な声が聞こえた。
(ちょっと待て、なんで俺が、総帥に組み伏せられている?)
《俺は何もしていないぞ!》
「何をするんだ!」
(何が起きている?挨拶しようとしただけだ)《今日は何しに来た?》
(店を潰しに来たのに、なぜ私がこんな……)
《この店に恥をかかされたんだ!》
(この店が全部悪いんだ!)
《そうだ!全部言ってぶちまけてやる》)
「この店が、全部悪いんだ!《どうするつもりだった?》火でもつけて絶対潰してやる!!」
やる事は終わったので、私は男に繋いでいた意識を外した。
——上手く出来たわよね?
「あの男は、いったい何を言っている?フェルトシュパート卿、物騒な物言いに、我が家族に対しての非礼、このままにはされまい」
お父様は、足元に転がる漢を見た後、フェルトシュパート卿をみた。
「ご子息は、一旦我が家で預かろう。その者の悪略を暴いてくれ」
お父様は私がお願いした通り、犯罪歴を見るよう、フェルトシュパート卿にお願いした。
「そうだな息子は任せる。手間をかけるが、代わりに息子に魔道具を見立ててくれないか?」
お父様は、こちらにチラリと目を向けた後、構わないと頷いた。
「私は魔道具はあまり得意ではないから丁度良かった。ヘルグラウいいね?シュピネル卿に迷惑をかけるんじゃないぞ」
フェルトシュパート卿は、空いている片手で息子を撫で、
「立て!行くぞ!」
フェルトシュパート卿は、部屋に乗り込んだ男を掴んだまま、外へ連行していった。
彼の頭の中は、きっと(なぜだ!!)でいっぱいだろう。
「ティト、ちょっといいかい?」
お父様に呼ばれて、私は部屋から出た。
「勝手に男の子を連れて来てはいけないよ?お父様の知り合いだから大丈夫だったけど、違ったらご家族が心配するからね?」
(いったい何をした?あの男、急に挙動不審になったぞ?あぁ、表での話は聞かなくていい。反省するフリで、黙って下でも見てなさい)
お父様は、表向きは説教をするらしい。
(お父様、使い分けて会話できるなんて随分と器用ですわね?)
私は、言われた通りに叱らるフリをする。
(先程は、あの方の心の声に同じ声で、より思いを強くしたり、考え方にきっかけを与えたり、急がせてみました)
思った以上に、うまくいってしまった。
(元々の考えを強めただけなので、近いうちに問題は起こっていたでしょうね。私を使って、お父様に恩を売ろうと考えていましたよ?)
一体、何をするつもりだったのか
(そもそも、初めから商会内で事故を起こそうとしていたみたいですし)
ちゃんと調べられて反省すべきだ。
(ティト、そんな事よく出来たな?しかし怖い能力だな。洗脳したり精神を壊せるだろう。大丈夫だと思うが、使い方は気を付けなさい)
お父様は、私の能力の使い方に不穏さを覚えている。
(前世の記憶のせいかと、即座に悪知恵に対応出来るくらいは苦労して来たので……)
散々騙され続けたから、悪事を働く人の思考回路が読めたのかもしれない。
(お父様、私の能力は、自分だけの利益や人を貶め、危険にさらすよう使い方はしません)
それは、人としてやっていいことではない。
(能力を使うとしたら、手の届く範囲の理不尽な悪事を回避するか、誰かの幸せになるお手伝いくらいですわ)
気付いたのに見て見ぬ振りは、したくない。
「反省しているな?戻ろう、皆が待ってる」
(程々にするんだぞ)
「はい。申し訳ありませんでした」
(お父様、ありがとうございます)
お父様に促されながら、私は部屋に戻った。
「ごめん。僕のせいで、君が怒られた。シュピネル閣下、悪いのは、何も考えず勝手について行った僕です。彼女を責めないでください!」
少年は頭を下げて、お父様に訴えかけた。
「気を使わせてしまったね。娘を庇ってくれてありがとう。それと、閣下は付けなくてもよいよ。ほら、一緒に魔道具を選ぼうか」
少年は顔を上げ、お父様を見て笑顔で
「はい!シュピネル様、魔道具選びのアドバイスよろしくお願いします」
少年はお父様にペコリと頭を下げた後、振り返ってこちらを見ると、
「よろしくね!名前、聞いてもいいかな?」
少年はニカッといい笑顔で笑った。




