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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第1章 始まりのお話

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専属侍女

 朝日が昇る時間が早くなってきた。


 外はすでに明るく、ソフィアが自室のカーテンを開けると、窓から光が部屋いっぱいに差し込んだ。


(……て……しら?……ね)


 眩しくて眉間に力が入ると、微睡んでいた意識がハッキリしてくる。


 ——眩しいわ。でも、まだ起きたくない


(お嬢様ったら、眩しいのが嫌なのはわかりますが、ダンゴムシになってますよー)


 ——それは、恥ずかしいわ。


 ……レディとしてちゃんと起きます。


(あら? 真っ直ぐに戻りましたね? やはりお嬢様は眠っていても、お人形さんのように可愛らしいですわ……早く起きてくださいませ)


「……おはよう、ソフィア」


 ——ソフィア近いわ。


 彼女、既にベッドサイドにいましたわ。


「おはようございます、お嬢様。お加減はいかがですか? お茶をお持ちしますか? お支度なさいますか?」


(良かった。お目覚めになられた。この1年、

 ずっとこのやり取りを心待ちにしていました)


「……ありがとう。先に支度をするわ」


 ソフィア、ずっと心配していたのね。



 ***



 昨晩、執務室での話を終えた後、部屋を出るとお兄様が待機していて。


「ディアが未だ興奮しているから、ティトの食事は自室に戻ったほうがいいと思いますよ」


 と、お母様に提案された。


 お父様とお母様にも、その方がゆっくり休めるだろうと気遣われてしまった。


「下の子達には、お父様から話をすればさすがに明日には落ち着くでしょう」


 私はお母様の監視付きで、弟と妹に簡易な挨拶だけ済ませて自室に戻った。


 部屋に戻ると、待機していたソフィアの給仕で簡単に食事を済ませ、ベッドに入った。


 ——やっと一人になれた


 考えなきゃならないことは、沢山あるのに、目覚めてから、常に色々な声が聞こえて来て、私はちょっと疲れていた。


「一人になれて、ようやくホッとしたわ」


 倒れる前は、当たり前だった話し声のない時間が、愛おしく感じた。


「明日には、能力の検証もしたいわね」


 ベッドに横になって考えていたら、あっという間に眠りに落ちていた。



 ***



 倒れてから意識だけだったからか、時間の概念が全くなかったわ。


「もう、1年が過ぎていたのね……」


 ポロリと言葉が溢れた。するとソフィアが私の手を握り膝をついて


「お嬢様、昨日はお目覚めになられたばかりなのに、一日中忙しくされていましたので、お疲れになられたでしょう?」


 ソフィアは心配そうに私の手を撫でた。


「長く眠られてご不安もおありでしょうが、ソフィアはいつだってお嬢様の味方です」


(お嬢様は人に甘えず一人で抱えてしまう。我慢しているだけかもしれない)


「ソフィア……」


(お嬢様は使用人にも優しくて……周りは、笑顔を当たり前に思っているけど、お嬢様だって嫌な時や辛い時もあるのに……)


 ——気づかなかったわ。


 ソフィアは私のことを、かなりよく考えてくれていたのね。


「だから、何なりとソフィアにお申し付けくださいね?」


(少しでもお嬢様の役に立ちたいし、なにより甘やかしたいわ)


 能力のことを思うと、ソフィアには色々協力してもらった方が良いかもしれない……


 お父様とお母様に相談しよう。


「ソフィア、いつもありがとう。もし、私がソフィアを専属にしたいと言ったらどうする?」


 そろそろ、私も専属の侍女を決めなければならないお年頃なのよね。


「私の専属になることをどう思う?大変だから当然断っても大丈夫よ」


 お母様が探しているかもしれないけれど……


 可能なら小さな頃からいて、私のために泣いてくれるソフィアがいいな。


「そんな!泣いて喜びます。許されるなら不眠不休に無給無休で、こちらからお願いします!」


(え?! そんな幸せあってもいいの? やっぱナシとか言われたら3年は引きずるわ!)


 ——ソフィア?


「……お嬢様からそんなこと言って頂けるなんて、これは夢でしょうか?」


(誰よりも、お嬢様をお支えできる位置に行けるなら何でもやるわ!ライバル潰したいぃ!)


「ち、ちょっとソフィア落ち着いて! 夢じゃないし、お父様とお母様に相談するから、嬉しいからって泣かないで!」


 不眠不休も、無給も無休も駄目です! 


 ちゃんとどちらも貰ってください!


 ソフィアは私のこと好きすぎるみたいだわ、コントロールしないといけないかも? 


 ——でも嬉しいわ


「お嬢様、旦那様と奥様に、私からもアプローチした方が宜しいでしょうか?」


 ソフィアは見たことがないほど、真剣な眼差しをしている。


「お給料を頂いているので、買収は出来ませんし、弱みを握ると解雇されてしまうし……」


 ——誰の弱みを握るつもり?


「私がお嬢様のお役に立てると立証するには、何をするのが効果的でしょうか?」


(旦那様や奥様より、更に上の立場の方の弱みを探すのが先かしら?それじゃだめ? 思考誘導の魔法を構築するのが先かしら?)


 ——ソフィア?!思考も発言も物騒です! 

 

 魔法の構築とか、有能な能力の無駄遣い……



 ——ツッコミが追いつかないわ!


「弱みも買収もしないでください!って、ちょっとソフィア何でがっかりした顔するの?」


 私が反対したら、ソフィアはこの世の終わりみたいな顔をした。


「何もしなくて大丈夫よ。ソフィアがよくやってくれているのは、みんな知ってるわ」


 ソフィアは元から、空気読みは天才的なの。


 ——能力なのかな?


 それとも観察眼かしら?


「とりあえず朝食の後、お父様とお母様に気軽に聞いてみるわ。だからソフィアはお仕事しながら待ってて。使用人の買収もダメよ?」


(なぜ使用人を買収しようと考えていたことがバレたのでしょうか?顔に出てたならまだまだ未熟ですね。もっと修行しなければ……)


 ——ソフィア、何の修行なのかしら?


「畏まりました。良き返事が返ってくるのを心待ちにしています」


(楽しみすぎる!! 早く専属になりたいぃ!)


 ソフィアは心の声は暴走しているけど、話しながら、テキパキと身支度を整えてくれた。


 ——副音声付きの会話は難しいわね。


 間違って心の声にツッコミそうになる


 ソフィアや、お父様みたいに表裏のない場合は誤魔化せるし、お兄様みたいに振り切ってくれる分には見なかったことに出来る。



 ——問題は老獪な狐や狸に対してよね。


 つらつら考えている間に準備は整った。



「ソフィアありがとう。では食堂に参ります」


 私は張り切っているソフィアを連れて、食堂に向かった。




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