能力『シスコン』
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「おはようございます」
食堂に着くと、そこにはお父様とお母様が、既に席に着いていた。
「ティト、下の子達が来る前に私の考えを、能力で聞いてくれ。会話はしなくても良い。お母様が私に話しかけている間に伝えるよ」
お父様は周りを気にしながら、小さな声でこちらに伝えてくる。
丁度、シュヴェルトお兄様が食堂に入ってきたのが見えた。
「……畏まりました」
頷くと、お母様はお父様に、天気やお茶会の話を話しだす。
(昨夜、話に時間がかかったから、他の子供達が心配していたよ。眠りの理由が能力によるものだろうと、医官からも言われていたんだ)
そうだったのね……
(だから皆ティトの能力を気にしているんだろうな。何かは伝えた方が疑われないかと思うんだが、具合が良い能力はあるかな?)
お母様がお父様に話す内容が、私の淑女教育へと移行して、タイミングよく途切れた。
「お母様お父様、基本的に良いと思いますが、私自身の事なので、一旦、私にお任せ下さい。自分なりに考えております」
二人の話の流れ的に、私の返事はおかしくなかったはず。
お父様、お母様は深く頷かれた。
——とりあえず、良かったのかな?
妹のフリーディアと弟のシャルラックも、集まり丁度席に着いた。
「ディア、シャルおはようございます」
妹のディアと目が合いニコリと笑うと、彼女はパァッと可愛らしい笑顔を向けた後に、ちらっとお母様を見た。
——昨夜、注意を受けたんだろうな
弟のシャルは私のことよりも、目の前のご飯に釘付けだ。
「揃ったな。食事を頂こう」
お父様の言葉で、共に食前の祈りを捧げ食事を食べはじめる。
食事中は、こちらから会話はしないが、それぞれが考えている事が次々と頭に入ってくる。
お父様は私の能力の事、お母様は1年の遅れに対しての事。
——1年か……結構長いわよね。
お兄様は、相変わらず私を褒め称えている。
——お兄様……お願いだから黙って
無理なことだけど願ってしまう。
ディアは『能力判断』の事、シャルは、ウインナーが美味しくて、アスパラガスは食べたくないらしい。
——二人とも可愛いわね。
(ティト、食事が終わったら話をしよう。能力は隠して欲しい。顔色を読みやすい位なら、王宮の使用人等にはいるので良いかも知れないな)
食事を食べ終えたお父様が、心の声を使って伝えて来る。
お父様は、私より能力を上手く便利に使っているように思うけど……
——気のせいかしら?
私は、最後のオムレツを口にしながら小さく頷いた。
食事を終えると、目の前にお茶が配られた。
——みんな食べ終わったわね。
私は緊張で少し浅くなっていた呼吸を整え、家族の顔を見た。
皆、私が話し始めるのを待ってくれている。
「一年もの長い時間、心配をおかけしたことを先ずは謝らせて下さい。本当に申し訳ありませんでした」
一度立ち上がり、頭を下げると、
「お姉様のせいではないわ!」
(お姉様は今一番大変なのよ!助けなきゃ!)
とディアが叫んだ。
「姉様は悪くない!」
(やな事言う奴がいたら、僕が許さない!)
と、シャルも続くけど……心配で泣きながら「バーカ!」と言っていた事を姉様は忘れていませんよ?
「謝らなくて良いよティト。家族なのだから、何かあれば心配するのは当然だろう?」
(ああ、ティトはどこまでもみんなに優しいな。まるで天使のようだよ!)
と安定で賛辞するシュト兄様も続く。
皆、優しいな……ありがとう。
「謝らなくて良いから座りなさい。皆が言う様に貴女が悪いわけではないわ。折角、みんなが揃ったのだから、肩の力を抜きなさいね」
(昨日の感じだと、まだ混乱があるかも知れないわね。能力も強いだろうから、心労が心配だわ)
——お母様、心配かけてごめんなさい。
「はい、ありがとうございます」
私は、もう一度頭を下げてから席に着いた。
「ティト、そう何度も頭を下げないでくれ。皆、目覚めが嬉しいだけだよ」
お父様の言葉にみんなが頷いている。
「昨日話した通り、ティトは1年もの時間が止まっていたんだ。目覚めて直ぐに1年も過ぎてしまって辛かったね?」
お父様は、労うように言葉をかけてくれた。
「ティトは普段から真面目に教育も受けていたから、焦らなくてもゆっくりでも大丈夫だ。自分のペースで頑張りなさい」
(今、ここにいてくれるだけで良いのだよ。決して無理はしないで欲しい。私達は味方だよ)
——涙が出そうだわ。
お父様もお母様も、私の能力を聞いた後も、聞いたからこそなのか、私の心を常に心配してくれている。
——私、幸せ者だわ。
前世を思い出したら、当たり前のこの環境が、とても恵まれていて幸せなんだと改めて実感する。
涙が溢れそうになるが、目に力を込めてそれを阻止する。
「はい。ありがとうございました。お父様、私の今後の進路について自分なりに考えてみたのですが、後でお時間頂けますか?」
お父様は、私のやりたいことが分かっているくせに、わざわざ時計を確認してから頷いた。
——お父様、名俳優だわ。
「お母様も、今後の淑女教育にも関わる内容になるかもしれませんので、一緒に聞いて欲しいのですが、お時間頂けますか?」
——とりあえず検証に付き合って下さいませ
「……お姉様、あの、本来は能力の事をあれこれ聞いてはいけないと言われたのですが……」
大人しく話を聞いていたディアが、話に割って入ってきた。
「倒れてしまうような能力を持ってしまって、お姉様は大丈夫なのでしょうか?」
(お身体に負担は?本当に大丈夫でしょうか?)
ディアは、お父様お母様の顔を見ながら恐る恐る尋ねてきた。
(ディアは我慢ができないようね?)
お母様は、ディアの今後の教育計画を頭の中で高速に立て直している。
——ディア、ごめんね。
「心配してくれてありがとうディア。能力のことは家族だけの秘密だから、決して他人には話さないと約束できるかしら?」
「必ずお約束しますわ!」
(少しだけでもお姉様の力にならなきゃ!)
「言わないよ!絶対!」
(約束は絶対守る。僕がお姉様を守るんだ!)
二人とも良い子ね……ありがとう。
「話しても大丈夫なら聞かせてくれるかい?勿論誰にも言わないよ。」
(ティトの能力を知れるなんて、何て素晴らしいんだ!)
——お兄様の声だけ、消せないかしら?
「私の能力もティトに知ってもらいたいが……
『シスコン』て、言葉自体も、何だかよくわからないんだよな)
お兄様……ふざけてますか?
いつもの賛辞の言葉は、能力なのですね……それ、必要ですか?
私がお兄様の能力だと思っていた空気読みは、元からの素質だったのですね……
——そちらの方かわ能力として凄いですよ?
お兄様の能力に気持ちが振り回されかけたけど、私は振り切って話を始めた。
「……ありがとうございます。私の能力は『人に対して勘が鋭い』です。顔を見て何となく相手がどんな気持ちか分かるの」
この辺りが妥当よね?
「だからいずれ、王宮の女官になると良いかなと考えているわ。それに基づき学習をしていこうと思うの。この後相談する予定よ」
——メイドは見た!とか実際出来そうよ。
ディアもシャルも納得しているみたいね。
「時間が掛かったのは、人の気持ちに敏感になり過ぎていたの。無意識で色々なことを記憶していたみたいで……」
適当でも、私は子供だから許されるわよね?
「勘が鋭くなったら、今までの気づきが、いっぱい溢れちゃったみたいなの。私ったら、随分と繊細だったみたい」
嘘をつく時は真実も混ぜる事で、現実と齟齬が起こり難い。
——このくらいで良いわよね?
「確かにお姉様は、何も言わなくても良く気付いて下さいましたね。正に才能ですわ。王宮女官だなんて素敵です!応援しますわ!」
(いつも優しいだけで無く、良く気付いてくださいました。さすがお姉様、私の自慢ですわ)
ディアは興奮し、手を叩き応援してくれた。
「良く理解できたよ。でも、顔色を伺い過ぎて自分を蔑ろにしないようにな?」
(ティトの内面の素晴らしさは、元々の才能だったのか。それが更にだなんて、優しさと気遣いの化身、まるで女神じゃないか!)
お兄様、表の声だけ聞いておきたいです。
「姉様は王宮でお仕事するの?じゃあ僕も王宮で働ける様になるね」
(側で守るなら、僕も行かなきゃ)
シャルお姉様は嬉しいわ
「皆、ありがとう頑張りますね」
何となく話が収束した時……
「ティト、今から話をしたい。お母様と一緒に執務室迄来なさい」
(丁度頃合いだな)
「他の皆は、それぞれの日課に戻りなさいね」
(解散の頃合いね)
お父様お母様はやっぱり一心同体だった。




