表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第2章 思春期のお話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/113

誤解と理解


 ある朝、校舎内に入ると、廊下に令嬢達の人だかりが出来ていた。


 ——なんの集まりだ?


 あの場に、掲示板などはないはずだが……


「不真面目にする意味が全くわからないわ」


 近づいていくと、ティトの視線の先には、令嬢に取り囲まれながらも笑顔を振りまいているティーゼフがいた。


 ——まるで昔のアズールだな。


「あいつ、よくあの状況で笑顔になれるな。俺には無理だ……ティト、行こう」


 横に目を向けてみたら、アズールは思い出すのも、見るのも嫌なのか、ティトの肩に手を置き、足早に通り過ぎていった。


 ——ちょっと話してみるかな。


「……ティーゼフ。久しぶりだな」


 俺は久しぶりに会った年下の幼馴染に、興味本位で声をかけてみた。


「あ! ヘルグラウ様! ごめんね、予定ができたからまたね」


 ティーゼフは、令嬢達の壁を掻き分け、俺の元へきた。


「大丈夫か?」


 令嬢達に触られまくったのか、ティーゼフは、あちこち着崩れている。


「ったく、距離感がおかしな令嬢ってなんなんでしょうね?」


 ティーゼフはさっきまで笑顔だったのに、途端に迷惑顔だ。


「なんだ、喜んでいたんじゃないのか」


 ティトも、アズールも勘違いしていたぞ?


「一人二人なら嬉しいけど、さすがにあの量は怖いですって……でも、邪険にもできませんから」


 やっぱり、今でも真面目じゃないか。


「ティーゼフ、お前損な性格してるな?」


 完全に誤解されていると思うぞ。


「えー、なんか酷いな。それより、ヘルグラウ様、助けて頂きありがとうございました。お久しぶりですね!」


 ティーゼフは、人懐っこい笑顔で手を差し伸べてきた。


「ああ、元気そうだな」


 俺はティーゼフと握手をした。


「俺、編入後は騎士科に入りました。後輩として可愛がってくださいね」


 ——騎士科に?


「お前は、魔法科だと思ってたよ」


 確か、得意だったよな?


「まあ、そうする予定だったのですが……」


 ティーゼフが、困ったように笑っている。


「能力絡みか。すまん、余計なことを聞いたな。騎士科なら俺も今、指導の手伝いしてるから、よろしくな。じゃあ、また」


 ——そろそろ、教室に戻さなきゃな。


「はい、またゆっくり話でもしましょう!」


 ティーゼフは、元気よく手を振って教室に向かって走っていった。


「あいつ、昔から俺の前ではかなり素直なんだけどな……」


 親友達から、理解されないティーゼフを不憫に思いながら、俺も訓練室へ向かった。




 ***




「貴方という人は……何度、同じことをお伝えしなければなりませんの?」


 オランジュが、声を荒げているわ。



 ——また、ティーゼフね?



 アズ兄様と教室に向かっていたら、後ろからオランジュの叱責する声が聞こえてきた。


「あ、オランジュおはよう! 今日も朝からイライラしてるね? 怒った顔も可愛いよ」


 ティーゼフはヘラヘラしながら、オランジュをからかっているのか褒めてるのか、わからない言葉をかけている。


「うるさいですわ。それよりも早く着衣の乱れを直しなさい! みっともないですわ」


 オランジュ、頬を染めていては説得力に欠けてしまいますわ……


「あー、やってるな」


 後から来たヘルグ兄様が、二人を見て苦笑いをしている。


「ヘルグ兄様、どこにいたの?」


 いつの間にかいなくなっていたわ。


「ああ、さっきティーゼフを救出したんだ」


 ——救出?


「あれは、好んでいたのではないの?」


 めちゃくちゃいい笑顔だったわよ?



(ティト、繋いで)


 ヘルグ兄様からの念話だわ。


(繋ぎましたわ)


(ヘルグ、どうした?)


(二人とも、ティーゼフを勘違いしてるよ)


(勘違い、ですか?)


(言ったろ? あいつは真面目だって)


 ティーゼフを見てみるけど、オランジュに対してヘラヘラ笑っている。


(そうは見えませんわ)


(確かに……昔は真面目だったな)


(あいつは、家族から歳が近いアズールと比較されて育ったから、歪んではいるけどね)


(アズ兄様と比較ですか? それは……無理がありますわ)


『絶対記憶』と比較するなんて無謀だ。


(だから、陰でよく泣いていたよ)


(そうだな。俺の能力がわかるまでは、アイツはかなり厳しく教育されていたよな……)


(それは……ちょっと可哀想ですね)


(しかも、ティーゼフの両親は、俺の能力を知った途端、掌を返したんだ)


(……え?)


(ティーゼフは元々賢かったから、アズールほどじゃないけど、優秀になったアイツを両親揃って持ち上げ始めたんだよ)


(うわ、やな感じ)


(だよな? だからあいつも『今更なんのつもりだ』って、反動で不真面目になったんだ)


(俗に言う反抗期ってやつだな)


 アズ兄様は、哀愁たっぷりなため息をついている。


(妙に賢い分、イタズラが親の手に負えなくなって、本家の俺たちに迷惑をかけないようにと、外国に渡ったんだ)


(バカな事はするけど、ちゃんと向き合えば、ティーゼフは理解できるやつだよ)


(俺にも責任あるから、なかなか強くは言えないんだよな)


(お前、昔から気にしてるけど、アズールの責任じゃないぞ? あいつが強かなのはちゃんと知ってるだろ?)


(まあな。ただ、今もバカが止まらないみたいだから、そろそろまともになってもらわないとな……)


 アズ兄様とヘルグ兄様が、オランジュとティーゼフに目を向けた時、


「もう! 揶揄うのはやめてくださいませ!」


 ティーゼフに振り回されて混乱したオランジュが、足早に教室に入っていった。


 残されたティーゼフは楽しそうに笑うと、私達に気付き、手を振り去っていった……



 ——あの人、肝が太いわ。



(あーあ、フルオリート嬢、ティーゼフに目をつけられたな)


(とりあえず、オランジュが巻き込まれて風評被害を受けなければいいのだけど……)


(アズール、以前のことがあるから、フルオリート嬢はこれ以上グランディエラ家と騒ぎにならない方が良いよな?)


(そうですよね?)


(グランディエラ家としても、このままでは困るから、ティーゼフに声をかけておくよ)


 アズ兄様は、眉間にグッと力を入れて天を仰いでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ