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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第2章 思春期のお話

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妖精姫のちっちゃな疑問


「フェルトシュパート様は、5年連続騎士科のトップになりましたでしょう? 同時に魔術科の防衛学も学ばれるなんて驚きました」


 私の身長の話から、ヘルグお兄様の成績の話に移行した。


 ダリエ曰く、基本的に騎士科は文官とは違い、トップで居続けるのは相当難しいらしい。


「見た目も穏やかなのに逞しくて、実力もあるなんて素晴らしいですわ」


 ロアは、うっとりしながらヘルグ兄様を褒めている。


 ヘルグ兄様は、サラッとやってのけているから、一緒にいてもあまり実感がわかない。


 ——能力『野生の勘』


 ヘルグ兄様なら、あらゆる困難もあっさり回避するんだろうな。


「でも、それを言ったら、神童と言われたグランディエラ様も、魔術科と文官科で、受けている講義は全て満点でトップですわ」


 なぜ、ダリエが、アズ兄様の成績を自慢げに話しているのでしょうか?


「それこそ前代未聞ではなくて?」


 ダリエとロアが、アズ兄様の事を天才だと言うけれど……


 ——能力『絶対記憶』は、ちょっとずるいのよ。


「幼児期からずっと一緒にいたせいかしら? 周りが騒ぐような凄さは、私にはいまいちわからないのよね」


 二人の努力は、誰よりも知っているから……


 ——あの二人なら、出来て当然なのよ。


「それは、ティト様も同レベルに才能がおありだからだと思いますわ。ねえ? ロア」


「ダリエの言う通りですわ。ティト様も魔術全般に、侍従学、外事専攻と受けられている講義はすべて満点でトップじゃないですか」


 二人から尊敬のまなざしを向けられるけど、私の場合、アズ兄様とヘルグ兄様といたせいで、成績が問答無用で伸びただけなのよ。


「先日も、ロアと偶然聞いたのですが、ティト様は『見た目の可憐さからは、想像ができないほどの才女』だと言われていましたわ」


「ええ、ダリエの話は本当の事ですわ。今では下の学年の生徒達からも、ティト様は憧れの先輩になっていますのよ」


 ダリエとロアは顔の前で指を組み、「さすが私たちの妖精姫」と私に向かって祈り始めた。


 ——そろそろ、妖精姫はやめてくれない?


 もう14歳になったのに、いつまでも小さいイメージが抜けないのよね……。


 実際に小さいから仕方がないけれど……


 私は祈り続ける二人を前に、この場をどう収めていいか迷っていたら




「……いい加減にしてくださいませ! 恥をかかせないで!」


 教室の外廊下で、誰かが叫んでいた。




「まあ、大きな声で、どうしたのかしら? ティト様、ちょっと様子を見てまいりますわ」


 ダリエが、何があったのか確認に向かった。



「ティト様、今の声、オランジュ様ですわ。朝から珍しいですね?」


 ロアは声の主をオランジュだと気付いたようだけど……


 最近のオランジュは、私に対して狂信者っぽくなりはしたけれど、基本的には落ち着いた令嬢よ?


「昔ならわかりますけれど、今のオランジュが声を荒げるなんて余程の事ではなくて?」


 ダリエは幼少期の失敗を経て、今では周りからも淑女の鏡だと言われるほど、言動も行動も安定した令嬢へと生まれ変わった。


 ……はずだよね?


 廊下が気にはなるけれど、野次馬は下品な行為なので、クラス委員として様子を見に行ったダリエに任せることにした。




「シュピネル様、歓談中にお騒がせして大変申し訳ありませんでした」


 ダリエが戻ってくると同時に、一緒に近くに来たオランジュが私に頭を下げてきた。


「気にしなくていいわ。オランジュ、何かあったの?」


 オランジュは、私の事を今も頑なにシュピネル様と呼ぶ。


 ティトでいいといったのに、自分の身分を弁えない出過ぎた行為をしてしまったからと、変わらず家名で呼んでくる。



「……その、よく分からないのです」


 オランジュは、困ったように眉を寄せ目を閉じると、ぐっと眉間に皺を寄せた。


「分からないって……結構な大声でしたよ? オランジュは、何もないのに廊下で大声をあげたのですか?」


 私が訪ねるとオランジュは、目を開けて私をじっと見た。



 ——能力、使おうかしら?


 でも、乱用はよくないわ……とにかく話を聞いてみましょう。



「その、先日の事なのですが……」


 オランジュが話し始めようとしたところで、授業開始のチャイムが鳴ってしまった。



 ——せっかくオランジュが話そうとしたのに!



 タイミングが悪すぎよ。


 まだ来ていない先生が、私は、このまま来なければいいとさえ願ってしまった。



「授業が始まるので、また今度お話を聞いて下さいませ」


 オランジュは、いつも通りの淑女らしい笑顔になると、席へと移動していった。



「ダリエ、何があったの?」


 様子を見に行っていたダリエに話を振ると、


「私が向かった時には、すでにことが過ぎた後でした。ただ……」


 ダリエは、声を小さくすると、


「周りの反応からすると、多分、オランジュ様にも春が来たのかと……」


 ダリエが、ふふふと口元に手を当てて楽しそうに笑った。


「まあ、オランジュ様にも、ついに恋のお相手が?」


 ロアも声を小さくしたまま、オランジュの恋バナに食いついている。


「間違いないかと。オランジュ様を取り囲んでいた外野の反応が、ティト様とグランディエラ様のやり取りを見た後のように……」


 ダリエは顔を緩めながら、


「それはもう色めき立っていましたわ……」


 と言って、頬に手を当てている。



 ダリエ……


 物凄く分かりやすい例えだけど……


 ——その例えは、恥ずかしいですわ!



「ダリエ、私の事は放っておいてくださいませ。それより、オランジュのお相手は?」



 オランジュは明らかに拒否していたわ?


 恋愛のお相手だとしたら、なんで大声をあげる必要があるの?



 何か、お相手に問題でもあるのかしら?

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