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レッドさんだって頑張ってるんだよ! 少しは労ってあげようよ!?


町の上空に向かって次々とワイバーン達がやってくる。

地上のモンスターだけで手が一杯だった町民たちは、新たな空からの襲撃に成す術が無い。

暴走の進路を食い止めるためのバリケードも、空からの攻撃にはまるで意味がない。


「おいっ、どうすんだよ! ワイバーンだぞあれっ!」

「どうするって、弓を構えるしかないだろっ!? 射ち落とすしか他に手がねえよっ!」

「盾を構えろっ! ワイバーンが体当たりしてきたら盾で凌ぐんだよっ!!」


町民も冒険者たちも、兵士たちも。それぞれが突然の事態に騒然としていく。

そんな中で、一人の顎髭を生やした年輩の爺さんが悠然と人々の波の中に割って入ってきた。

それに気付いた者たちが、その爺に通り歩く道を譲ってゆく。


「ほっほっ。ここらで真打ちの登場かのう? 儂もそろそろ出番が欲しいと思っていたところじゃわい」


「あんたは…… ギルマス!? おいおい、戦えるのかよ、あんた!」

「顎髭のジジイがなんか出しゃばって来てるぞ! いいのか?」

「どうせ老い先短い身なんだ、もう好きにさせてやれよ……」


その場に現れてきた年輩の爺さんに、冒険者たちがそれぞれ好き勝手に物を言ってくる。


「ほっほっ。なんで儂、こんなに人望無いのかのう……? まあ、いいわい。ところでお主ら、ワイバーンの最大の弱点を知っておるかの?」

「ワイバーンの弱点……? なんだ、そんなのあったか??」


ほっほっ、と笑い。顎髭を擦って。

その爺さんは、不敵な顔でニヤリと笑ってみせた。


「群れで空中に飛んでいるってことは──『広範囲殲滅魔法』を、町中でも容赦なくぶっ放せるってことじゃよ!!」


その顎髭の爺さんは、強大な魔力と共に詠唱を開始していった。



**


町の空に、巨大な熱源が渦巻いてゆく。

──ドオオオオオンッ!! という轟音が大空の広範囲に響き渡る。


眩い光線と共に、ワイバーンの群れを巻き込んだ大爆発が上空で引き起こされた。

余波の爆風と耳鳴りのする音が町の隅々にまで聞こえてくる。

どうやらギルドマスターという看板は、伊達では無かったらしい。


「おい、レッド! お前がモタモタしてるせいで見せ場をギルマスに持ってかれちまったぞっ!?」

「もう、何を躊躇してるんです? 早くあのボスの隙を作ってくださいよっ!」

「うるせー! お前ら他人事だと思いやがってっ!!」


ボスのミノタウロスと戦いながら、3人はチマチマと敵の体力を削っていた。

というのも、戦士レッドが消極的な戦法を取ってしまってボスに決定的な隙が中々生まれないせいである。

これでは戦士レッドの高ランク冒険者という肩書きも名折れである。


「お前は負けず嫌いで、根性だけは誰にも引けを取らない一級品のはずだ。今こそ『不死身のレッド』という名を世に知らしめろっ!」

「真面目な話、そろそろあのボスを止めないとダンジョンのモンスターがヤバいんですよねぇ……」

「ああ、もうっ! わかったわかったって! オレがあの牛野郎の動きを止めてきてやるよっ!! それでいいんだろ?」


何かを諦めたかのような顔で、戦士レッドはそう答えていた。

そのある種開き直ったスタンスこそ、このレッドがレッドたる所以である。

さすがダンジョン中でも信頼できる回復があると分かると平気で群れの中に突っ込んでいく男である。


「おい、牛野郎っ! 相手してやるよ、こっちだっ!」


戦士レッドの挑発を受けたミノタウロスは、その巨大な斧を握り構えて豪快に振り抜いてゆく。

それを剣で受け、だがしかし威力を殺し切れず、それでも後退は一切せずに。

戦士レッドは構わず剣を捨てて身体だけを強引にミノタウロスの顔面へと割り込んでいった。

牛の形相をしたその大きな顔面に、両手で思いっきり目一杯に掴み掛かる。


「今だ、オレごと撃てぇー! 気にするな、オレに構うことなく撃つんだぁー!!」


受付嬢マリーは、全くこれっぽっちも気にすることなく特大のファイヤーボールをレッド目掛けて撃ち放った。

顔面に特大のファイヤーボールを直撃で受けたミノタウロスは、よろけふためき、確実に深いダメージが入っている。

そこに力を溜めて一点集中していた武闘家ホークが、渾身の奥義を解き放った。


「終の奥義、インパクト・ストレートォオッ!!」


身体を衝撃の反動で壊してしまう終の奥義、その威力は絶大な切り札と呼べるモノだった。

ボスのミノタウロスがその巨体を吹き飛ばし、地面に叩き付けられて痙攣する。

やがてそれは完全に沈黙し、勝利という喜びの瞬間が訪れた。


「ほ、ホークさんっ!? 大丈夫ですかっ?!」

「ああ、またあの子に治してもらうからいいさ。ちょっとばかり、しばらく動けそうにないがな……」


身体を犠牲にして最終奥義を放った武闘家を心配そうにするマリー。

そして、それに対する抗議の声がすぐ隣から沸き上がってきた。


「おおいっ!? おれの心配は? ねえ、おれの事は!? ねえ、放置なの!?」


それは真っ黒に焦げて、少し焼けた匂いのする戦士レッドであった。

マリーは仕方なくその戦士にポーションをぶっ掛けた。



**


領地の彼方では、メアと領主がお互いに相対していた。

何度目かの対峙、追い付いては逃げられてを幾度も繰り返して。


「なかなかやるではないか、お前の連れ添いたちも」

「それはどうも。みんな頼りになる仲間だからねっ!」


次第にワープ地点が両極端ではなくなってきた気がする。

比較的近い場所にワープしていることもある。

選べるポイントが少なくなってきたのか……


だが、まだ焦りは見受けられない。領主にはまだまだ余裕がありそうな感じがする。


「ねえ、領主さん。私は思うよ? 確かに『洗脳』って能力は便利で統治者向けの力だと思う。これ以上、ないってくらいに……」

「ほう?」


もしモンスターテイムとか力が貰えるとしても、洗脳って能力があるならそっちの方が便利なのかもしれない。

人間でもモンスターでも、操って傀儡にしてしまえばそれまでだ。

領地の統治も、洗脳があればスムーズに行えるだろう。


だが……


「だけど、操られた者がそれで納得するかといえば、断じてそんな事はないっ!!」


私は領主のやり方が気に入らない。そう、ただ話はそれだけだ。

すかさず攻撃魔法のスピードを出来るだけ上げて撃ち放っていく。

だがやはり領主には届かない、展開されている空間の歪みを突破できないまま。


「──ふん、やはりお前は統治者には向いてないようだな。世の中には理不尽もあれば、綺麗事ではない事も沢山あるというのにな……」


残影の声を残して、またしても領主は空間の先へと逃げていく。

足下には妙な魔法陣が相変わらず描いてある。

転移ポイントは確かに存在し、領主はそれを頼りに転移をしているのは間違いない。


徐々に追い詰めている感じはある。いずれ追い付くのも、もう時間の問題だろう。

だけど領主にはまるで焦った様子がなく、全てが予定通りだと言わんばかりの態度だった。

まだ何かある、きっと何か本命の隠し球が……



地上の様子を見ると、モンスターの暴走は止まっていた。

右往左往し、中にはダンジョンの方へと帰っていくような個体もいた。

これで一息は付けるかもしれない。


だが、……



「グギャアアアアアッ──!!」


遠方の空から強大な何かが飛来してくる。

猛スピードで町の真上に現れたのは、今度は強力なドラゴンの姿だった。

ワイバーンの群れは、あれに追われていただけだったのか……

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