ピンチになったら転移で逃げる奴、いい加減にしろっ! この卑怯者めっ!
──ゴゴゴゴゴゴゴゴ………
「な、なんだこの音!? 地響きのような振動が伝わってくるぞっ!?」
「おい、ダンジョンの方角からモンスターが溢れ出してくるぞっ!!」
町民たちが慌て出す中、次々と地下に居たモンスターたちが地上へと這い出てくる。
これは意図的に引き起こされたスタンピード…… 普段は滅多に起こり得ない現象。
その中心には、群れを統率をするような巨体のダンジョンのボスが闊歩していた。
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「おいおい、領主の野郎。よりによってボスのミノタウロスを洗脳してやがるぞっ?!」
「あれを1体洗脳すれば、芋づる式にダンジョンのモンスター全てがあれに従うという算段ですか……」
「でも逆に言えば、あいつだけ倒せばモンスターの暴走は止まるってことだろ?」
現場に急行した3人が、状況を見て現状を把握していく。
モンスターたちの暴走は、町の人々やギルドの冒険者たちが必死に対処を行っていた。
「何かが起こる」という事前に予測していた危惧と、その為の準備期間があったおかげで対応は出来ている。
もしも何も知らなければ、対処の術さえ無かったかもしれない……
「おい、こっちは大丈夫だ! 雑魚どもはおれらに任せろっ!」
「装備もポーションも準備万端だぜ? いくらでも掛かって来やがれっ!」
「お前らはボスの方を頼む、あいつには生半可なパワーじゃ歯が立たねぇ!」
町の人々はバリケードを作り、弓矢や槍を持ち、モンスターに対処していく。
冒険者たちも率先してモンスターの進行を塞き止めてゆく。
時間はある、あとはあのボスをどうにかするだけだ。
「おいレッド、オレらであの巨大な牛を倒せると思うか?」
「へっ、以前はもうちょいで俺らが倒す寸前までいってたんだ。べつに、あの子がいなくたって問題無いだろ?」
「あの時のリベンジですね。メアちゃんが居なくたって、私たちだけでもあのボスは倒せるはずですっ!」
受付嬢マリーは魔力を迸らせ、武闘家ホークと戦士レッドの前衛組2人は前にへと出る。
今回はヒーラーがいない、そして攻撃を受けるのは前衛で足の遅い戦士レッドだけだ。
武闘家ホークは異常に足が早く、前回も攻撃を全て避けきっているのだ。
だからこそ、この武闘家はその戦士に聞いたのだ。
「お前、本当に今回大丈夫なのか?」という意味合いで……
それに対して、戦士レッドは答えてしまった。「問題無い」、と。
そして受付嬢マリーは、その言質を取ってしまった。
今回のボス戦において、ひたすら地獄を見るのはレッドという人物だけなのである。
「問題無いと宣言した以上は、頑張ってくださいね?」
戦士レッドの、阿鼻叫喚の悲鳴が辺りに響き渡るのはこの後、間もなくであった……
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転移魔法で逃げた領主を追い掛けているのは、ずば抜けた機動力のあるメアであった。
領地内の何処かにある「転移ポイント」…… それらを潰していけば、いずれはワープのように逃げる事も出来なくなるはずだ。
白い天使の翼を広げて、空を駆け抜けて、領主の気を追い掛けていく。
やがて一つ目のポイント、その場所へと辿り着いていた。
「ほう、随分早かったではないか。転移で逃げたというのに、こうも素早く追い付かれるとはな」
「領主さん、アンテナって知ってる? あなたはもう、私の魔力が少しでも掠った時点で発信器を持っているのと変わらないの」
“時間凍結魔法”に介入した時、私は時の止まった空間に無理やり力ずくで割り込んだ。
その時に私の魔力は、この領主に触れているのだ。
全てが無駄になったわけじゃない、アイさんは私に繋ぎのバトンを渡してくれていた。
「……お前は本当に、規格外な奴だな。見た目はただの幼女だというのに」
「大人しく、降参してくれる気になった?」
「ハッ、まさか!」
私の攻撃魔法が、領主を捉えようと瞬間的に疾っていく。
しかし領主は、またしても転移で姿を眩ませて何処かへと消えてしまった。
「──ダンジョンのモンスターなど、ただの時間稼ぎに過ぎん。せいぜい足掻き続けるがいい……」
またしても不気味な置き言葉を残して。
足下には妙な魔法陣…… これが転移先のポイント指定になっているのか。
私はそれを潰して霧散させる。
これで1つ目のポイントは潰した。これを、あと何回繰り返したらいい?
領主は不吉なことを言っていた。「ただの時間稼ぎ」だと。
放っておけば、いずれダンジョンのモンスター以上の何かが来る……?
私は翼を広げて、領主が逃げた次の転移ポイントへと急いで飛び立っていった。
**
モンスターの対処に追われている町民たちの中で、ハゲの軍団たちは避難誘導と前線の維持を率先して行っていた。
そして、ここに来て他の全ての兵士たちも何故か洗脳が解け掛かっていた。
メアのパーフェクト・ヒールを受けてない者まで、まるで悪い夢から醒めたかのように……
「なんか…… おれたち、今まで何してたんだ??」
「これ…… この惨状、もしかして領主の奴が何かやらかしている仕業なのか?」
「なんで俺たち、あんな領主の言うことを今まで聞いていたんだ??」
洗脳が解けた兵士たちが、次々と色んな疑問を抱いてゆく。
これは単に洗脳に回す余力が無くなったのだろうか?
それとも、『もっと大きな何か』を洗脳で動かすための、末端切り捨てなのか……?
「お、おい、あれ何だ……?」
「向こうの空の方から、何か飛んできてるぞ??」
「あ、あれ、もしかして飛竜の群れなんじゃないのか……?」
モンスターが溢れる中、突然のスタンピードで混沌としてる真っ最中で。
次に町を襲い掛かろうとしてたのは、“ワイバーンの群れ”であった。
小説を書く能力って何だろう?と最近よく思う。
それが全然足りてないような気がするんですよ。
何か、もっとこう何か、ぐわーっ!みたいな?




