四天王の中で最弱のレッド
「おらああっ!! 掛かってこいやぁー!!」
侵入した屋敷の中では、レッドさんが兵士たちと一戦交えていた。
単身突撃していったというのに、未だに粘って戦い続けている。
こうして見ると、レッドさんだって充分に強いよね?
「おー、おー、粘っとる。てっきり既に負けて人質扱いになってるかと思ってたぞ」
「もし人質になってたらレッドさんごと焼き払うつもりでいましたのに」
「うるせー! 人質になってしまったらまとめて丸ごと焼かれるの分かってたから頑張って粘ってたんだよ!」
どうだ!と言わんばかりの顔を皆に見せ付けるレッドさん。
うん、根性とその負けず嫌いさは評価するに値するよね。
並の戦士よりかはずっとガッツもあるし、素直に凄いと思うよ。
「でもな、無関係な人を先に逃す作戦な、なんか失敗してるみたいだぞ?」
「誰一人も逃げてませんし、単身切り込み突撃した意味ありませんでしたね」
「はあああぁ!? なんじゃそりぁー!?」
先にレッドさんが切り込みに行って、逃げる人がいたら逃がして、それから様子を見てから突入する。
そんな作戦を立てていたけど、実際の結果は逃げる人などいなくてレッドさんの骨折り損で終わってる。
まあジャブを打ってから様子を見る、という点においては多少の副産物もあったわけだけど。
「助太刀しますね! あと、領主の部屋はそこの突き当たりを曲がった所ですっ!」
フリフリの服に身を包んだルーズサイドテールの萌えメイドさんが戦いながら道案内をしてくれる。
身を翻しながら放ち出すその針の攻撃は、レッドさんと対峙していた兵士たちをあっという間に倒してしまった。
こうして見ると、レッドさんが雑魚敵に手間取っていた小物かのように映る。
うーん、やっぱりレッドさんはレッドさんかなぁ?
「ちょ、なんだこのメイドさんはっ!?」
「ナンパして口説いてきた助っ人ですよ、可愛いでしょう?」
マリーさん、適当なことを言いすぎじゃない?
実際には領主を暗殺しようと潜入してきたメイドさんで、いつの間にか洗脳されて逆利用されていた人。
きっと深い理由があるんだろう…… まあ深くは聞かないけどさ。
向かってくる兵士たちを見てみる。
中には戦闘職とは無縁の素人みたいな人までも混じっている。
やっぱり洗脳で動かされているんだろう、一般の素人とか本当にやり辛くて戦いにくい。
これならまだ強者と戦ってる方が何倍も気が楽だ。
私たちは敵を薙ぎ倒しながら、奥へと進んでいく……
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「メイドさんの方がレッドさんより強いっぽいよね?」
「あのスカートの下にはメイドの秘密が沢山詰まってるんだろうな」
「家事も出来て、美味しい紅茶も淹れてくれそうだわ」
「明らかにレッドさんより役立ちそう、やっぱりこの中だとレッドさんが最弱確定かな?」
「お前ら好き放題言いすぎだろー! それにメイドが家事とか紅茶淹れるの上手かったりとか当たり前だろうが! それで比べるのは卑怯だぞっ!」
メイドさんの針による殲滅は見事だった。
さっきもレッドさんが手間取っていた兵士たちを一瞬で片付けてしまっている。
ガチで勝負すればどうなるか分からないけど、メイドさんの方がトータル的な面で有能なのは間違いなさそうだ。
「ねえ。メイドさんは名前、なんていうの?」
「私ですか? 私は…… アイス・ミラストという名前ですが」
アイス・ミラスト…… どこか暗殺一家の家系だったりするのかな?
なんかメイドの嗜みで水とかも魔法で出せるみたいだけど。
でも名前からして、絶対に氷系の魔法使いだよね? この人。
スカイブルーの青い海のような髪が綺麗な人……
「じゃあアイさんは、四天王でいう所の『青龍』だね!」
火を操るマリーさんが朱雀。
武を扱うホークさんが白虎。
海のような髪で、水を出せるアイさんが青龍。
頑丈さだけが取り柄のレッドさんが玄武、で最弱。
これで四天王の完成かな?
みんなの特徴が一致して、綺麗に揃ったね!
「レッドさん、もしも負けた時には『クックッ、オレは四天王の中でも最弱だぜッ!』ってちゃんと言ってよね?」
「なんじゃそりゃ! 負けた時の台詞なんか知るかよ!」
お約束は大事なのに。
それに、レッドさんならその内使う場面あると思うよ?
「メアちゃん、『朱雀』ってなあに?」
「ええと、朱雀っていうのはね……」
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私たちは領主の館、その最奥の扉の前に辿り着いていた。
目配せをして、お互いに頷き合って最終の意思確認をする。
もちろん、誰も引き返す気は無さそうだ。
無駄に豪華なその扉を、ノックもせずに蹴飛ばして私たちは入っていく。
部屋の中には30過ぎの出来る雰囲気な見た目の、渋いオッサンが静かに立って居た。
「よく来たな、お前たち。ここが領主の部屋だと分かっt……」
「おらっ、先手必勝ォオオ!!」
空気を読まないレッドさんが、対面するなりいきなり領主に切り掛かっていった。
ちょ、何やってんの!? この人…… そんなに目立ちたいの? ねえ?
まぁレッドさんが大物に勝ってドヤれる可能性があるとすれば、今このタイミングでしか無いんだろうけどさ。
「──フンッ! なんだコイツは? ノックもないし、お前たち、中々に失礼な奴らだな?」
「……ッ、ぐはっ! くそっ、ただの貴族で偉そうな奴かと思ってたのに。……コイツ、強いぞっ!?」
まるで話が違うぞと言わんばかりに喚き散らすレッドさん。
いや知らんがな。女神様も領主には気を付けろ的な事を言ってたじゃん?
何やってんの…… 不意打ちで仕掛けて、ちゃっかり負けて、もう情けない。
何処からともなく、不気味な笑い声が聞こえてくる……
──クックックッ、と笑う声が床下の方から聞こえてくる。
「でもな、オレは四天王の中でも最弱……ッ! オレを倒した程度で、意気がるなよッ!!」
どうだ! とばかりに高笑いをする、倒れて床にへばり付いたレッドさん。
負けた時の台詞が云々って言ったけど、早速でいきなり使っちゃってるよこの人。
いや、そう言えとは言ったけどさ、別にその台詞を言った所でカッコ良くは無いんだからね?
負けて倒されてることに変わりはないんだからさ。
なんか可哀想だからとりあえずヒール掛けておいた。
「フンッ、彼は四天王の中でも最弱、四天王の面汚し。実力が足りないのに数合わせで名を連ねているだけ、あれを四天王だと思わないでほしい……」
そしてアイさんが前に出て、なんか用意してたかのような台詞を言い出し始める。
ちょっ、どこでそんな台詞思い付いてきたんだ、この人!?
っていうか、アイさんは領主に他にもっと言う事あるよね? よくも洗脳してくれたなー!? みたいなさ。
「次は私がお相手致します。四天王が一人、『青龍のアイ』。いざ、参りますッ!」
ねぇアイさん、周りに空気合わせすぎでしょ……
メイドさんは空気を読むのが上手いって言うけどさ。
なんか因縁の対決とかじゃなかったっけ? この領主とアイさんって。
それでいいのか? ねえ?
っていうかこの『四天王ごっこ』…… まだ続けるの??




