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ルーズサイドテールという萌え要素の塊みたいな髪型


メイドの、スカートの下に隠し持っていた針による全方位攻撃。


飛んできた針の攻撃は、マリーさんが私を庇って薙ぎ払った。

お母さんの方に飛んでいった針は、ホークさんが全部薙ぎ払っている。

マリーさんの私に対するナイトガードは鉄壁で、ホークさんの方も流石といった所か。


「ったく、最近のメイドは油断も隙もありませんね……」

「まあメイドは万能で、高度な暗殺部隊だっていう一説もあるぐらいだからなぁ」


そのメイドの身のこなしは見事で、只者ではない事がすぐに分かった。

ただの一般人や兵士程度ならば先程の針で仕留められていたであろう。

だけどまぁマリーさんやホークさん相手では、少々分が悪かったようだ。


「……くっ、離せ! この反逆者どもめっ!!」


あっという間に捕らえられたメイドさんが、ジタバタと暴れ出す。

スカイブルーのキューティクルで艶やかな髪が綺麗な女性だ。

ルーズサイドテールに結わえられたその髪型は、愛らしさを全面に醸し出している。


「──で、どうする? この人も、ハゲさせるのか?」


……今、なんと? この綺麗な髪の人をハゲさせる、だと?

いやいや、ないから! ちょっと有り得ないでしょそれは。

いやでも敵なんだよね、この女性…… ええと、どどうしよう?


「メア、その人にヒールを掛けてみて。きっと大丈夫だから」


お母さんが、そんな事を言う。ヒール?? どこも怪我はしてないように見えるけど。

まあお母さんがそう言うならば、試しに掛けてみようかな?

べつにMP残りを気にするようなものでもないし……


「パーフェクト・ヒール!」

「──離せ、離s……、えっ? 私は、いま何を??」


虹色の光がメイドさんを包み込み、溶け込み始めた辺りで彼女は急に大人しくなった。

まるで別人かのように落ち着き、今はこの状況に不思議と首を傾げている。

これは、一体どういう事??


「……やっぱりね、悪い人に見えなかったのよ。メア、おそらくこれは洗脳よ!」


お母さんには、どうやら人の本質や善し悪しを見抜く眼があるようだ。

それは特殊能力などではなく、純粋な今まで生きてきた人生の勘だとか、経験なんだとかで。

やっぱりお母さんって何気に高スペックだよね…… 国が王妃に選んでしまうだけのポテンシャルは持っているみたい。


で、この洗脳。もしかしたら、あのハゲ達と同じ現象なのかな?

パーフェクト・ヒールを掛けたら洗脳が治療されたって事??

そう考えると、色々と辻褄が合ってくる気がするよ。


「私は──そうか、領主に洗脳されてしまって……」


項垂れるメイドさん、どうやら全てを悟ってしまったみたいだ。

なるほど、これが領主のやり方だったのね…… ちょっと許せないかも。

しかもこのメイドさん、今回はかなり強力な洗脳を掛けられてこの場に向かわされてたらしい。


彼女は元々、領主を暗殺するつもりでこの屋敷に潜入していたようだ。

ところが機を窺っている内に、いつの間にか洗脳されていたんだとか。

寝首を掻くつもりが、逆に利用されてしまっていた、と。



屋敷の方を見る。

レッドさんが倒していった門番さんと、周りの兵士たち。

広くて立派な屋敷は、豪華な細工などが飾ってあって100人ぐらいが住めそうだ。

庭付きの塀で囲まれている、贅沢な建物。


中から逃げ出してくる者は他にいない……

全員が、もしも洗脳に掛かっているんだとすればこれ以上待ってても意味が無いかもしれない。

それに、そろそろレッドさんも心配だろう。


「──そろそろ、行くか」

「──そうね、これ以上待つ意味は無いわね」


純粋な悪だったなら、戦う事に躊躇は無いだろう。

だけど、洗脳された一般人ならば? 本当は、ただの善良な人だったとすれば?

戦う事に、戸惑いや躊躇いが生まれるかもしれない。


領主は、そこまで計算済みでこのメイドさんを向かわせたのかもしれない。

あわよくば不意打ちで数を減らし、洗脳が解けたなら解けたで、私たちに戦いの迷いを生ませるために。

現に、魔法でガンガン行こうぜ的な当初の気分はどこかに霧散してしまっていたのだから。


これから向かうのは、悪ではなく洗脳された一般人…… 実に、やり辛い。


「待ってください。私もっ、私も一緒に行きますっ!」


だけど、悪い事ばかりでもない。

どうやら可憐なメイドさんが、私たちの突撃メンバーに加わったみたいなのだから。

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