魔改造された教会
月明かりの下、真夜中に佇む人影が数名……
「おい、この教会はヤベェって。絶対何かあるぞっ!」
「前回襲撃してた奴等は全員返り打ちだったらしいぞ?」
「しかも全員がハゲにされてて、町中を歩けなくされたとか」
「なんでも、幼女が一番ヤバいらしいぞ……」
この兵士たちは、領主に命じられて今回の襲撃に来た者たち。
しかし前回の襲撃の失敗があり、その突撃に躊躇が生まれている。
領主に逆らうわけにはいかないが、ハゲにされるのも嫌である。
「何、心配するな。前は子供と思って油断してたのが失敗だったんだ」
「今回は油断もなく、装備も準備も万端だ。抜かりはない」
「相手が子供だと思うな。特に幼女には警戒しろっ!」
「そうだな。それに、何よりも……」
「「「成功報酬、金貨100枚……ッ!!」」」
あれだけコテンパンにされたというのに、懲りない大人たち。
どうやら今回は油断も隙も無く、準備も万端との事らしい。
果たして彼らは、幼女の魔の手から逃れられるのか?
そして、彼らの頭の頭髪は守り切る事が出来るのか?
それは髪のみぞ知るのであった……
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まずは先遣隊の一人が様子見の為に教会の敷地に踏み入る。
何も無さそうなので手招きし、残りのメンバーたちも呼び寄せる。
そして人数が集まり、重量に耐えられなくなった所で、その罠は発動した。
……いきなり、地面が陥没した。ズドドーンッ!!と。
「「「うわあああああーっ!!」」」
人間一人だけが乗って落ちる落とし穴など意味が無い。
──落とすなら、纏めて落とせ!! by レッド
叫び声が聞こえてきた所で、子供たちが起き上がったっ!
そして所定のポジションに付き、スタンバイをする。
この教会はもはや、一人の武闘家によって要塞と化しているのだ!
「正面A、スタンバイOK!!」
「後方B、スタンバイOK!!」
「東面C、西面D、スタンバイOK!!」
「「「よし。全軍、撃てーーっ!!」」」
ズバババッ!と射ち放たれる弓矢の嵐っ!
石造りの建物の上段隙間から、兵士の群れの中心に向かってそれは降り注いでいく!
群れているから誰かに当たりやすい! これではまるで格好の的っ!!
「「「ぎゃああああああー!!」」」
一目散に逃げていく兵士たち。とりあえず退避しないと弓矢の的にされてしまう!
退け退けーっ!と怒号が飛び交い、背中を向けてゆく軍団。
初戦の攻防は、どうやら子供たちの方に軍配が上がったようだ……
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「ハァハァ…… なんだよアレ! 普通に要塞じゃねえか!」
「あれは、砦を攻め落とすつもりの覚悟で行った方が良いのかもしれんな……」
「でも、弓矢が飛んでくる事は分かったんだ。なら、ちゃんと盾を身構えて進めば行けるだろ?」
「あと、固まるな。固まっていれば的にされちまう。今度はバラけながら行くぞっ!」
懲りない兵士たちは、作戦会議を終え、再び教会に向かっていく。
今度は矢を防ぐ為の盾を持ち、矢を受けない為の姿勢で進んでいく。
一応、彼らも兵士としてそういう訓練は受けているようだった。
バラけた兵士たち、盾を持って亀のように進む兵士たち。
そして、それに忍び寄ってゆく武闘家と戦士の影……
「ぎゃああっ!」「うわああっ!」「あべしーっ!!」……
闇に紛れて至る所で聞こえる断末魔に、兵士たちは竦み上がった。
どうやらバラバラになった所を各個撃破されている様子っぽい。
なんだこれは、これでは…… まるで敵の掌の上で踊らされているかのようではないか!
その時、不意に月明かりが映えて、鐘の音が鳴った。
──ゴーン…… ゴーン…… ゴーン…… ゴーン……
不気味な教会の鐘の音色に、その場の全員が意識を向ける。
よく見ると、月明かりの教会の屋根に、誰かがいる。
それはマリーゴールドのような髪を靡かせた、一人の女性。
メアちゃんのナイトを自称する、火の魔法使い。
「あなたたちは、罪を犯した…… メアちゃんに代わって、私がその頭髪の全てを燃やし尽くすッ!!」
まるで悪夢のような宣告と共に、火の魔法が兵士たちの頭髪を狙って次々と放たれていったっ!
ダウンしている兵士たちは避けることも出来ずに、為すがままに燃やされてゆくだけっ!
まずいッ! ここで倒されるという事は、あの末路が待っているという事っ。
敗北者たちの辿る結末を見てしまった兵士たちは、慌てて逃げ出した!
それを追撃するかの如く、背中を向けた兵士たちに教会から飛ばされる矢の嵐!
倒れた者から順番に頭髪を目掛けて火の魔法が飛んでくるっ!!
「「撤退だ、撤退っ!! 逃げろォーッ!!」」
兵士たちは逃げ出し、散っていった。
どうやら今夜も、教会の襲撃には失敗してしまったらしい……
尚その頃、メアはお母さんに抱かれてグッスリ眠っていましたとさ。




