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真夜中の襲撃っ!!


お母さんと二人で教会の中を掃除していると、既に空は茜色に染まり始めていた。

自分たちを狙った襲撃に子供たちを巻き込まないように、私たちは外に出ようとする。

それを慌てて引き留める老婆と子供たち。


「待ってください! お二人は外で野宿を為されるおつもりですか?」

「メアちゃん、行っちゃヤダー!」

「おれたちなら既に何度も領主に嫌がらせされてるぞー?」

「領主の兵士たちなんて恐くないぞー!」


これから私たちを狙った襲撃があるかもしれないと告げた上で、なおも二人を引き留めようとする子供たち。

どうせ領主には既に目を付けられてるのだから、私たちがいようといまいと変わりはないと、そう主張してくる。

それなら同じ嫌がらせを受けている身同士、まだ一致団結している方がマシなのだと言う。

うーん、まあ確かに私がいれば、気付きさえすれば迎撃する事は出来るのだが。


「じゃあ、ここで泊めて貰おうかな? お母さん」

「そうね。メアがいた方が、まだマシなのかもしれないわ」


最悪なのは、襲撃を受けてこの子たちを巻き込んでしまう事。

次に、私たちのせいでこの子たちが人質に捕らわれてしまう事。

だけどそれは、私たちがいようといまいと領主に目を付けられてるこの孤児院の子供たちにはどっち道起こり得る事なのだという……

ならば、徹底抗戦だっ! そうと言うのならば撃退できる限り撃退し尽くすのみ!!


「よし、覚悟は決まったよ! みんなも、迷惑を掛けるかも知れないけど宜しくねっ!」


「おれたち既に命救われてるぞー! 迷惑とか気にするなー!」

「徹底抗戦じょーとー!! 反撃の狼煙だぁー!!」

「領主の奴らを蹴散らせー! やっつけろー!!」


わいわいと騒ぎ上がる子供たち。まるで戦う事に闘志を漲らせているように感じる。

中には救ってくれた命を戦う事で返そうと思っている子供もいるようだ。

今の現状を打破するには、確かに今ここで戦うべきなのかもしれない。



夜が更け、闇が訪れた中で教会の敷地に静かに佇む侵入者が数人。

彼らの目的は領主に命じられたアンジェリカ王妃の誘拐。

その目的のためならば手段や方法など一切問われていない。

たとえ建物が崩壊しようとも、殺人が行われようとも領主が揉み消してしまう。


「王妃の誘拐に成功すれば金貨50枚だ、いいな?」

「手段や方法は好きにしていいんだろ? 何かあっても領主様が揉み消しちまうんだから」

「中にいるのは子供と老婆だけのようだ。全く、美味しすぎる仕事だぜっ!」


侵入者たちは寝静まって音のしない教会に張り付き、扉に手を掛ける。

鍵が掛かってるかと思いきや、どうやらそのまま開くようだ。

ブチ破ろうかと悩んでいたというのに、なんて無用心なんだろう。


「よし、扉はそのまま開くようだ。静かに侵入して寝床を襲うぞ!」


先頭の者が3、2、1と合図して、静かに扉を開け放つ。

そしてその瞬間、真っ暗闇な天井から降り注ぐ物体があった。

無駄に高い天井から落下速度を増したソレが、侵入者の頭上目掛けて直撃してくる!

バッコーン!!


「「「侵入者だー、やっつけろー!!」」」


そしていきなり物陰から箒やら鍋やらを持った子供たちが一斉に現れた!!

中には桑やスコップを持っていたりしてて普通に危ない!

5才くらいの幼女なんか、包丁を投げ付けてくる。うわ、幼女恐いっ!


「ぎゃああああっ!! なんじゃこれぇええー!!」

「痛っ、足に刺さった! 痛えよ、やめろコラっ!!」

「誰だ、トウガラシ投げつけた奴! 目に染みるからヤメろー!!」


寄ってたかって袋叩きに合った侵入者たち。

あっという間にロープでグルグル巻きにされて、捕縛された。

身ぐるみも剥がされて、素っ裸である。


「うう~ん、ムニャムニャ…… あれぇ? 侵入者ぁ~?」


寝惚け目のメアが起きた時には、既に子供たちだけで迎撃し終わった後だった。

なんという頼りになる子供たち。殺る気マンマンである。

子供たちは闘志を漲らせながら、次の指示をメアに仰ぐ。


「「コイツらどうする~?」」

「ムニャムニャ…… とりあえず、頭燃やしといてー!」

「「うん、わかったー!!」」


意気揚々と火を持ち、侵入者たちの頭髪を燃やしていく子供たち。

──燃やしていいのは、燃やされる覚悟のある奴だけだ。

家を焼かれた経験のある、幼女メアはそう語る。


「ぎゃああああっ!! やめろ、ハゲになっちまうー!」

「ハゲは嫌だっ! まだ若いのに、ハゲは嫌だー!!」

「ハゲとか生き地獄じゃねえか! やめろーっ!!」


コイツらをこの場で殺す気は流石に無い。かといってそのまま野に返しても始末が悪い。

だからこうやって頭髪をハゲにしておく。そうすれば町で見掛けても以前の侵入者だと一目瞭然で分かるから。

町中での目印はツルピカの頭。テカテカ照り返してきっと分かりやすいだろう。


ハゲが町中で嫌われるようになるのは、こうして間もなくのことである……



「おいっ、てめえら大人しくしろ!!」


それは別ルートから侵入を試みていた別班。

振り返ると、先ほど包丁を投げ付けていた幼女ミアが捕らわれていた。

更には別の男の子も侵入者の手によって刃物を添えられていた。


「へっへっ。ガキだと思って油断してたら調子乗りやがって」

「おい、コイツらを傷物にしたくなきゃ黙って言うことを聞け!」


捕らわれた男子と幼女のミアはお互いに目配せして頷き合う。

そして男子は添えられた刃物に躊躇することなく、隠し持っていた刃物で侵入者に切り掛かった!

幼女のミアは手に握ったトウガラシの粉を侵入者の眼に投げ付けた!


「「ぎゃあああああ~っ!!」」


不意打ちで反撃を受けた侵入者たちはよろけ、すかさず他の子供たちがそこに追撃を畳んでいく。

メアは怪我を負ってしまった男子にヒールを掛け、跡が残らないように回復させた。

子供たちには分かっているのだ、このメアがいれば大怪我を負ったとしても大丈夫だって事を。


自分たちがこの子の弱点になるような事には決してなってはいけない。

易々と人質になるような真似は、絶対にしない。

そんな事になるくらいなら、死んだ方がマシだ!


さっきの男子は、昼間にメアに命を助けてもらっていた男子だった。



「おおーい、お前ら大丈夫かぁー?」

「メアちゃん、助けに来ましたよー!」

「外にいた兵士共なら片付けておいたぞっ!!」


扉の外からレッドさん、マリーさん、ホークさんがやって来る。

どうやら騒ぎを聞き付けてこの場所に到着したらしい。

ダンジョンでレベルアップしてきたこの3人なら、兵士たちにも充分渡り合えるだろう。


「レッドさん、ホークさん、マリーさん…… みんな、どうして?」


「おいおい、オレらは“仲間”なんだろ?」

「まったくもぅ、探したんですからねっ!」

「おれたちも派手に暴れて来たからな、既に同類ってヤツだ!」


外の方を見てみると、薙ぎ倒された後の兵士たちが沢山倒れてる。

侵入者の他にもこんなに敵が群がっていたんだね。

まったく、次から次へとよくこんなに兵士を送り込むよ。


「さーて、じゃあ新しい住処の拝見でもしようかな?」

「なかなか年季の入った教会だな、これもまた悪くない」

「メアちゃん、今夜から私達も此処に住みますからね!」


なんだか勝手に住む方向で話を進める3人たち。

えっ、元々住んでた家は? いきなり引っ越して良いの?

レッドさんとホークさんは…… やっぱり普段ぼっちだったりするのかな?

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