なにやら聖母様もここに降誕した模様
古びて年季の入った石造りの教会堂は、儀式や洗礼などをするには少し小さいように思えた。
大聖堂というには遠く、しかし小さな祈りを捧げるには丁度良いのかもしれない。
そう考えると町並みから少し離れた古びた教会というのも悪くない気がする。
中には痩せ細った子供や、倒れ伏せた子供たちが横たわっている。
酷い有り様だ、領主がこの孤児院に支援などを一切してない事は一目瞭然だった。
唯一の大人であるお婆ちゃんも、弱々しく身体を鈍らせている。
私は横たわっている男の子の側に向かい、手を添えた。
これは栄養失調と、それによる免疫力低下で病気を併発しているようだ。
まずは病気を治療しなくてはならない。
「パーフェクト・ヒール!」
虹色の光が幼い男の子を包み込み、その身体に溶けていく。
苦しそうにしていた表情が和らぎ、安らかなものになった。
良かった、これで病気の方は治癒出来ただろう。
目を開けた男の子に、お母さんが水を飲ませてあげている。
少し落ち着いたら、柔らかくて消化に良い食事から取っていけるだろう。
私は順番に、次々と倒れている子供たちを治癒していった。
「息苦しくない…… 身体が楽になった!」
「あれ、私さっきまで意識がはっきりしていなかったのに……」
「俺、もうダメかと思ってた…… このまま死ぬんじゃないかって!」
子供たちが起き上がり、自分の身体の調子を何度も確かめている。
お互いに顔を見合わせて、それから堪らず泣き出す子供までいた。
それをお母さんが優しく慈愛に満ちた微笑みで頭を撫でていく。
「聖女さま…… それに聖母さまっ! この度の御慈悲、本当にありがとうございますっ!」
お婆ちゃんが私たちに頭を下げ、深く礼の言葉を述べてきた。
聖母さまってのは、どうやらお母さんの事のようだ。
うん、お母さんは聖母さまだよね! そこには激しく同意するよ!
「お母さん、一緒にスープを作ろう! 病み上がりのお腹にはスープが1番だよっ!」
お婆ちゃんに断りを入れて、私たちは奥の調理台を貸してもらった。
少し年季の入った鍋だったりしたけれど、大丈夫。料理するのには問題ない。
私はアイテムボックスの中から食材を取り出し、お母さんと一緒に量多めのスープを作っていく。
お水を沸かして、出汁を取って、野菜とお肉を煮込んで。
だんだんと良い匂いが立ち込めて、食欲を刺激してくる。
ふふっ、前世では結構家庭的だったんだよ、私!
「メアって、料理を作るのが本当に上手いわよね…… まだ5才だっていうのに」
お母さんと一緒に料理をしていると、お母さんは私の料理の腕前をいつもベタ褒めをしてくる。
もっと材料が揃えば色々作れたりもするから、それをいつかお母さんにも味わってもらうよ!
前世の知識で作った料理とかを披露するのも、異世界での定番の楽しみ方だよね。
調理場の外の方では、漂ってくるスープの匂いに子供たちがそわそわしているのが窺える。
待ちきれないのか、お皿を持ってこっちをずっと見ている子もいる。
良かった、食欲の方は準備万端のようだ。今行くよっ!
「お待たせっ! 順番にお皿によそっていくから、慌てないでね!」
スープを持って現れた私たちに、子供たちから大きな歓声が上がった。
やっぱりある程度の仕上りは確保したいっていう……




