応援してくれる人々!!
夜明けと共に、私たちは歩き出す。
お母さんの手を取って、二人で一緒に。
太陽は眩しくて、空気は穏やかだった。
お母さんと一緒に町を歩くのは、私のささやかな楽しみだった。
それが今ようやく叶って、少しばかり嬉しく思う。
……あんな事がなければ、今はもっと浮かれた気分だったのだろうな。
私たちは、以前マリーさんと買い物をした事のあるお店に辿り着く。
「すみません、果物を売ってくれませんか?」
「お嬢ちゃん、すまねぇ。あんたらには物を売るなっていう、領主の御達しが来ててな……」
どうやら例の領主は私たちを締め上げて、泣き付くのを待つつもりのようだ。
この町全体がそうなのだとしたら、これは結構大変な事態だろう。
いい性根をしている、どうやらここの領主はとても汚ならしい性格をしているみたいだ。
「果物の値段は10倍払う、私たちはここで買った事を一切口にしない、それでどう?」
「……………」
このおじさんは、以前マリーさんと買い物に来た時はとても朗らかな人だった。
それが今は領主との圧力の境目で、とても困った顔をしている。
このおじさんにこんな顔をさせるなんて、領主はやっぱり悪い奴だな。
「あ~、そういえば禁止されてるのは“売る事”だったな~。ほらっ、お嬢ちゃん、この果物はタダでやるよ。持っていきな!」
ニカッと笑って、おじさんは果物を1つ、私に差し出してきた。
売るんじゃなくて、あげるんだからセーフ!だとか言っちゃって。
やっぱりこのおじさんは良い人だ、それに屁理屈も上手い!
「おじさん、ありがとう! いつか恩返しもするよ!」
「いいって。それよりも、果物の事は黙っとけよ? あと悪いが、俺の所はもうアテにはしないでくれ……」
すまねぇ、と申し訳なく謝ってくるおじさん。
大丈夫、何度もおじさんの所を頼ってたら怪しまれちゃうもんね!
分かってるよ、おじさんにこれ以上迷惑は掛けないつもりだから。
お店を後にして、広場でお母さんと一緒に座る。
貰った果物を2つに分けて、お母さんと半分こ。
よかった、朝食はなんとかなったよ!
新鮮な果実の味がして、サッパリ美味しい。
お腹は少し満たせたから、次はギルドに行こう!
「ほっほっほ。お嬢ちゃん、待っておったぞ!」
顎髭のあるお爺ちゃんが、ギルドの入り口で私たちを待っていた。
今日はいつになく貫禄のあるオーラを解き放っている。
昨日は少し情けない姿を見せてた気がするけど、やっぱりこの人は此処のギルドマスターなだけあるのだろう。
「お爺ちゃん、ギルドの中に入ってもいい?」
「ほっほっ。実は領主から、お主ら2人は相手にしないように通達が来ててのぅ……」
顎髭を擦りながら暢気にそんな事を言うお爺ちゃん。
そんな事だろうと思ったよ、だって雰囲気がいつもと違うもんね。
「それで? どうするの? 私たちをここから追い出す?」
少しお爺ちゃんを挑発してみる。
「……いや、止めておこう。儂はこれでも歴戦の強者のつもりでのぅ、だからお嬢ちゃんの方が遥かに強い事ぐらい、儂には分かるのじゃ……」
……さすがギルマス。私の見た目には惑わされていないようだ。
「それに、長年の人生の勘が告げておる。領主を敵に回すよりも、お嬢ちゃんを敵に回す事の方が遥かにヤバイッ!とな」
そう言って立ち塞がっていた入り口から退き、道を開けるお爺ちゃん。
なかなか判断力のあるお爺ちゃんだ、その勘は正しいと思うよ?
私たちはお爺ちゃんの横を通り抜けていこうとする。
「──待てっ! そちらの方は、もしかして……? なるほど、そういう事か……。ようやく事件の全容が儂にも見えてきたわい!」
……このお爺ちゃん、ボケてるようでめちゃくちゃ鋭いね。
ほっほっほ、とか言いながら暢気に顎髭を擦っているけど、眼光が鋭いよ!
そして、全部分かった上で私たちを通してくれている…… 有難い事だ。
「お爺ちゃん、ありがとう! その判断、後悔はさせないよっ!」
私たちはギルドの中に入っていく。
向かう先は受付のカウンターだ。
少しやつれた感じのする受付嬢の二人が出迎えてくれる。
「「ようこそ、いらっしゃいました! 素材の換金は済んでおりますのでっ!!」」
おおっ、本当に一晩であの山盛りの素材を換金してくれたのか。
正直、かなりの無理を言ってしまったんじゃないかと思ってたんだけど。
受付嬢、2人の顔色を見てみる…… うーん。やっぱり、相当な無茶をしたんだろうな。
「二人は、私が領主に目を付けられてるのは知ってるよね? ……それでも、私の味方をしてくれるの?」
「「当たり前ですっ!! 私たちは、どんな時でも幼女ちゃんの味方ですっ!!」」
その二人の言葉に嬉しくなって、私はそのまま二人に飛び付いた。
ギューッて抱き締めると、2人はアタフタしながらもギュッと抱き締め返してくれた。
「苦労が報われた…」「ああ、幸せ…!」とかなんだと言ってるよ。
その時、扉がバーンと開いてマリーさんが大量の荷物と共に入ってきた。
「メアちゃん、食糧を今のうちに買えるだけ買ってきましたよっ! これで当分の間は大丈夫のはずですっ!!」
そして荷物の中から大量の食糧を見せてくるマリーさん。
おおっ、こういう時は初手の時間差が物を言うよね!
状況を見て、この初動の早さ! さすがはギルド職員なだけあるねっ!
「ほっほっ。このギルド内で、お嬢ちゃんと揉めようだなんて思う輩はおらぬよ。のう、みんな?」
「おお、嬢ちゃんと敵対しようだなんて恐れ多いぜっ!」
「領主がなんだ、俺たちゃ自由が売りの冒険者だぜ?」
「嬢ちゃんのお陰で俺は長年の怪我が治ったんだっ、この恩はなんとしても返さなくちゃいけねぇ!」
「今度オレたちとも一緒にダンジョンに行ってくれ、一緒にミノタウロスを倒そうぜっ!!」
ギルドのみんなが沸き立ち、私たちを大きく鼓舞して応援してくれる。
どうしよう、こんなにも優しくしてくれて。
なんだか私……、胸が熱くなりそうだよ!!
「ありがとう、みんな! 私達、領主には絶対に負けたりなんかしないからねっ……!」
今世の中で頑張ってる人達にも、大きな鼓舞を送りたいです……




