第8話 届いてほしい私の気持ち
前回の続きで朔夜視点スタートです。
勉強会が始まって1週間が経過した。私はバイトに行っていたので2回ほど参加できなかったが、それでも参加した日は新につきっきりで勉強を教えていた。しかしながら状況は芳しくない。試しにテストの予想問題を作り3人に解いてみてもらった。慶樹は問題なし、凪は英語、社会があまりよくないが暗記教科なので1週間もあれば赤点回避くらいはできるだろう。
問題は新だ。数学、理科が一向に伸びない。一応国語、英語、社会は伸びてはいるがまだまだ怪しいラインなので個人的にはもう少し伸びてほしい。新がサボっているわけではない、むしろ頑張っている方だ。最近だと授業で寝てる姿すら見なくなった、それどころか目に少しくまができている。きっと家でも寝ずに勉強しているのだろう。私の教え方が悪いのだろうか?
しかし、中学の頃は慶樹や凪にも教えていたのでむしろ人より教え方が上手いと自負している。もう少し教えるペースをゆっくりにした方がいいだろうか?しかしそれだとテストまでに絶対に間に合わない。何か他に方法はないだろうか...
「朔夜、お前はこっちじゃないだろ」
慶樹に言われハッとする。いつの間にか駅に着いていたらしい。
「じゃーなー!」
「また明日」
新と一緒に慶樹と凪を見送る。私たちは学校が徒歩圏内なので4人で帰る時は毎回2人を見送る→途中まで一緒に帰る、の流れがテンプレになってきている。
「じゃあ帰ろっか!」
「うん...」
最近新の元気がない、というより私に対して責任を感じているのかもしれない。みんなといる時の会話は普通なのだが、私と話す時は目も合わせてくれない、初めて会った頃に戻ったみたいだ。
「私の教え方が下手でごめんね、そんなに気にしなくていいから!」
この一言を伝えるだけで新はまたいつも通りに戻るかもしれない、また私と普通に話してくれるようになるかもしれない、
しかし言えないのだ。
無意識のうちに私のせいだけじゃない、なんでこれがわからないの?
そう思っているのだ。友達に気休めの言葉をかけられない所かこんなことを思うなんて、私が悪いはずなのに、いらないプライドが邪魔をする。最低だ、私...
ポツポツ...ザアアアアアアアアア!!!!
「わっ!何、雨!?」
「あそこに公園があるからそこで雨宿りしよ!」
新に手を引っ張られて公園のかまくら?に移動する。
どうしよう、傘は持っていない。いつまで降るだろうか。とりあえず持っていたタオルで体を拭く。
「桜姉が傘持って迎えにきてくれるって...」
「ほんと?じゃあそれまでここで待っ...」
そこで気づいた。学校の制服はワイシャツの上にカーディガンかブレザーを着ている。私の場合はカーディガンに腕を通すだけで前は閉めてない、そして今はずぶ濡れの状態。つまり...ブラが透けている。
慌てて腕で前を隠す。
「新!見てないよね!?見てないよね!?」
急いで新の方を見る、が新はなぜか体育座りで俯いている。
「...新?どうしたの?もしかして体調悪いの?」
「...ううん、大丈夫...」
よかった、どうやら体調不良というわけではないらしい。しかし新は俯いたままだ、どうしたのだろう...
「...ごめんね、朔夜」
「...え?」
突然私に謝る新、よくは見えないが目には涙を浮かべているように見える。なぜ新は私に謝る...
いや、理由は自分自身が1番よくわかっているはずだ。
だが聞かずにはいられなかった。
「...どうして謝るの?」
なぜ聞いたのか、新に責任を感じてほしくない、他の理由で謝っているならそっちの方がいい。理由を聞いたのは私の考えが間違っていてほしいと思ったからだ。しかし新の言葉は私の予想通りだった。
「俺が馬鹿なせいで、朔夜の時間使わせてごめんね」
やめて、聞きたくない
「朔夜はちゃんと教えてくれてるのに、俺の理解力がないから...」
違う、私が悪いの
「俺が赤点とっても朔夜のせいじゃないから」
そんなことない
「勉強はもう教えなくていいから、俺のことは気にしないで3人で体育祭たのし...」
「それは違う」
不意に漏らした私の本音、その勢いで私は喋る。
「あたしね、体育祭すっごい楽しみなの。
噂で聞いたんだけど今年はサッカーがあるんだって!だから、みんなで慶樹を応援するの。慶樹がシュート決めたら思いっきり騒いじゃったりして!」
みんなと、新と話したかったこと、
「凪は運動できないからきっとどこかで転ぶと思う!中学校3年間で毎年転んでたから、それであたしが手当てしに行ったりして...きっと楽しい思い出になる。」
最近辛そうな顔をしてて話せなかったこと、
「でもね、そんな思い出の中に新だけが参加できなかった、なんて悲しい出来事は作りたくないの」
全部が私の気持ち、
「みんなで輪になってお弁当食べたり、1位になってはしゃいじゃったり、その後に打ち上げ行ったり、その中にはちゃんと新がいないと良い思い出なんて言えない。」
変に思われてもいい。だけど、
「あたしはね、勉強仕方なく教えてるわけじゃなくて、新に絶対に体育祭出てほしいから教えてるんだよ」
この思いだけは伝えたかった、
「まだ会ってそんなに日は経ってないし、新は私のことまだなんとも思ってないかもしれないけどそんなの関係ない...私の中では慶樹や凪と一緒。」
だって
「もう大切な友達だから」
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正直朔夜に勉強を教えてもらうのは嫌だった。
決して朔夜が嫌いだからというわけじゃない、
朔夜に教えてもらう度に理解できない自分が嫌だった。つきっきりで教えてもらってるのにこんなのも解けないのか、問題を間違える度に自分に嫌悪感を抱いた。
凪が分からないところを教えてもらい、理解している姿を見るのが嫌だった。慶樹が答えの解説を見るだけで理解しているのが嫌だった。差を感じるから、友達なのに距離が遠ざかっている気がするから。
同じ問題を間違える度に朔夜に聞き直すのが嫌だった。いつか嫌われるんじゃないかと思ったから、見捨てられるんじゃないかと思ったから。
高校生になっても何もできない自分が嫌だった。昔みたいなことにまたなると思ったから、みんなに迷惑をかけるのが嫌だから。
ずっとずっと不安だった。
しかし朔夜の言葉に救われた、こんな駄目な自分でも友達と思ってくれる人が今、目の前にいる。泣くのを我慢していた、また虐められるのは嫌だから。だがしかし、我慢の限界だった。
気づけば俺は朔夜に抱きつき、思いっきり泣いていた。朔夜には俺のことがどう見えてるだろうか。きっとカッコ悪く写っているだろう。でも泣かずにはいられなかった。
雨は一層強くなった、
俺の心を描くように。
いつもより長くなってすみません。
「この話おもろいな、足しちゃお」
って思ったらこうなりました。
気をつけます。




