追走
再開したけどみんなまた読んでくれるかな…
執筆最後まで続けるモチベください
ブックマークとか評価とかコメントとか待ってまーす
雑踏の中を走った。
羽のついた靴が見えた気がした。人波をかき分けて追いかける。しかし追いつけない。人が多すぎる。
「リズ、あっちだ!」
「わかった!」
二人で路地に飛び込んだ。
しかしそこには誰もいなかった。
薄暗い路地の突き当たりに、古びた雑貨店があった。看板が傾いている。ドアが半開きになっていた。
「……入ったのか?」
「かもしれない」
二人で中に入った。
ベルが鳴った。
店の中は、外観からは想像できないほど広かった。天井まで届く棚に、正体不明の瓶や箱や巻物が所狭しと並んでいる。どこかから時計の音がする。何かが光っている。
「……なんだここ」
「不思議な店だね」
エルメシアの姿を探して、二人は棚の間をうろうろした。奥に進めば進むほど、棚が増える。右に曲がっても棚。左に曲がっても棚。
奥の方で、白髪の老店主が何かをぶつぶつ言いながら棚を漁っていた。
「どこにいったんだ……たしかここらへんに……」
「……あの、エルメシアって人を見ませんでしたか?金髪の、羽のついた靴を履いた」
老店主はちらりと振り返っただけで、また棚に向き直った。
「さあね。それよりこっちが大変でね……あの薬草、どこにしまったか……」
独り言のように呟きながら、また棚を漁り始めた。
どこかで見たような瓶を手に取ると、中で何かが動いた気がして慌てて戻した。
「こっちか?」
「違う、行き止まりだよ」
「じゃあこっち?」
「……また棚だね」
気づけば入口がどこかわからなくなっていた。
ようやく出口を見つけて店を出ると、また雑踏に放り出された。
広場に出た。
噴水を囲んで市民が集まっている。子供が走り回っている。屋台が並んでいる。
「いた!」
噴水の縁に、金髪の人影が見えた。
二人で駆け寄る。
「エルメシア!」
人影が振り返った。
悪戯っぽい笑みが、こちらを見た。
「お、なかなか早いね」
「捕まえた!」
トオルが手を伸ばした瞬間。
「残念、ハズレ!」
エルメシアの姿が、煙のように掻き消えた。
手が、空を切った。
「……っ!」
「くっ……」
二人して、噴水の前で立ち尽くした。
周りの市民が、くすくすと笑っている。
「頑張れよ嬢ちゃんたち!」
「エルメシア様はそう簡単には捕まらんぞ!」
温かい野次が飛んでくる。
トオルは頭を抱えた。
「どうすりゃいいんだ……」
「とりあえず探し続けるしかないんじゃない?」
噴水のそばで、カップルが言い争っていた。
「だから言ったでしょ! あっちの道の方が近いって!」
「いや、こっちで合ってる! 地図を見ろ!」
「その地図が古いって言ってるの!」
二人とも、それをちらりと見たが、今はそれどころではなかった。
リーゼロッテが言いかけた、その瞬間だった。
広場の反対側に、また羽のついた靴が見えた。
「あっちだ!」
二人で走り出す。人波に揉まれる。屋台の間を縫う。角を曲がる。
気づいたとき、リーゼロッテの足音が聞こえなくなっていた。
トオルは立ち止まって、振り返った。
人、人、人。
見知らぬ顔ばかりが流れていく。
「……リズ?」
返事がない。
もう一度振り返る。やはりいない。
いつの間にか、はぐれていた。
トオルは人波の中で、一人立ち尽くした。
周りは普通に行き交っている。誰も気にしない。幽霊が一人、人型に変身して途方に暮れていても、誰も知らない。
噴水のそばでは、まだカップルが言い争っていた。
「だから! あなたはいつもそうやって人の話を聞かないんだから!」
「聞いてる! 聞いてるけど、お前の言ってることが間違ってるんだ!」
(……道に迷ってんのか。俺と一緒だな)
トオルはそれをぼんやりと眺めた。
エルメシアの姿はもうどこにもない。リーゼロッテもいない。手がかりもない。
酒場の方から、陽気な音楽が聞こえてくる。
路地の奥で、猫が鳴いた。
トオルはとりあえず、来た道を戻り始めた。
「……エルメシアはどこだ」
誰に言うでもなく、呟いた。
雑踏が、答えるわけもなく、流れていった。
──つづく──
再開したけどみんなまた読んでくれるかな…
執筆最後まで続けるモチベください
ブックマークとか評価とかコメントとか待ってまーす




