戦士の墓:踏破
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祭壇の前に立つリーゼロッテが、兜を手に取る。
白と金の精緻な意匠。かつての彼女──アーレイスを象徴する装備だ。
「少しだけ、力を借りるよ」
そう言うと、リーゼロッテはその兜を首の上にすっとはめた。
瞬間──霊廟全体に、青白い光が走る。
足元の床に魔法陣が浮かび上がり、崩れかけた聖域の奥に、風が流れ込んできたような錯覚が生まれる。
「……これで帰り道ができた」
そう呟く彼女の声は、少しだけ重く、それでいてどこか懐かしさを含んでいた。
「帰るって、入り口まで?」
「うん。あそこに繋がる転移魔法陣だよ。霊廟の管理権限を使えば、こういう機能も動かせるのさ」
そう言いながら、リーゼロッテは兜をそっと外す。
そして──祭壇の中央に、ゆっくりと戻した。
「持っていかないのか?」
「うん。この兜は、ここにあるからこそ意味がある。霊廟ってのは、土地を安定させるために存在してる。全部持ち出したら、バランスが崩れちゃうんだ」
軽く拳を握って、甲冑の胸元をポンと叩く。
「それに、私の本体はこの鎧。こいつがあれば十分さ」
俺は、ふっと笑ってうなずいた。
「……これからも、首無しでよろしく」
リーゼロッテは声を出さずに、肩をすくめて見せた。
転移陣が光を増し、地面が青白く揺らめき始める。
光に包まれた次の瞬間──
俺たちは、霊廟の外に立っていた。
広い荒野。吹き抜ける風。遠くまで続く地平線の先に、旅路が広がっている。
「ねえ、トオル」
「ん?」
「次は、“賢者の書房”へ行こうか」
「……賢者?」
「アセノス。頭でっかちで理屈っぽくて、まあちょっとアレな奴なんだけど……次に向かうべき霊廟さ」
「ふうん……まあ、悪くないかもな」
つづく
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