死霊の寝床:踏破
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「……いなくなった、か」
長い戦いの末、悲しむジェンキンスは、静かに光へと還った。
あれだけの存在が消えたというのに、ダンジョンの空気は、どこか穏やかだった。
──静かすぎる。
まるで、もうこのダンジョンに“格上”の存在は残っていない、と言われているようで。
「……そっか。俺、このダンジョンじゃもう、最強クラスなのか」
ぽつりと呟いて、少しだけ自嘲気味に笑う。
だって、俺の姿は──火の玉に手が生えただけの、しょぼいゴーストなんだから。
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それから数日、俺はダンジョンの探索を続けた。
まだ見つけていない通路がないか、隠された部屋がないか、せっせとダークボールで照らしながら。
でも結局、それらしいものは何もなかった。
「死霊の寝床」は、ジェンキンスを倒した時点で、もう俺にとって“制覇した”も同然だった。
ダンジョン内のモンスターたちも、俺の姿を見ると少し距離を取るようになった。
中には、俺の《祟り》を受けて消滅したやつもいたし──
《影移動》でいきなり背後を取られて驚いて、そのまま逃げ出したやつもいた。
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そう、俺はこの戦いの中で、一つ気づいたことがある。
《祟り》というスキルは、どうやら「意識」や「精神」がある存在にしか効かないらしい。
ゾンビやスケルトンには通じなかったけど、ジェンキンスには大ダメージが通った。
……てことは、俺にも効くってことだよな?
「つまり、他の《祟り》持ちに襲われたら──けっこうヤバいのかもな」
思わず苦笑い。
俺、《物理無効》持ちだけど、霊的干渉には滅法弱いタイプです。よろしくお願いします。
やれやれ、まだまだ油断はできないらしい。
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……と、そんなこんなでダンジョン探索も終わりが見えてきた。
ジェンキンスを倒して、死霊の寝床の最深部も踏破した。
あとは、もう──この場所を出るだけ。
浮遊しながら、俺はダンジョンの出口へと向かう。
風の通り道になっている、地上への裂け目。ほんのわずかに、陽の光が差し込んでいる。
──世界は、まだ広い。
地上には、もっとたくさんの魔物や、人間や、何かがいるはずだ。
ここから先に何があるかなんて、まったく分からない。
でも、不安よりもワクワクの方が大きい。
やがて、見慣れたダンジョン入口。空気が、外とつながっている。
その手前で、俺は一度だけ振り返った。
「……またな、ジェンキンス」
誰にともなく呟いて、外の世界へと浮かび上がる。
俺は火の玉になってから、こんなに遠くまで来たんだな。
こうして、俺のささやかな冒険は、次の舞台へ進もうとしていた。
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