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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
詩人の湖畔・狩人の水面編

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神託

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・応援・感想、全部作者の栄養になっています。よろしければぽちっとしていただけると泣いて喜びます。それではお楽しみください!


光が、走った。


天球全体が、低い音とともに震えた。レールが軋む。太陽の光がじわりと滲んで——月のシンボルに飲み込まれていく。

リングだけが残った。

太陽の縁だけが金色に光って、その中心を月が覆っている。湖畔全体が、昼でも夜でもない奇妙な薄明かりに包まれた。

俺は空中で、その光景を見下ろしていた。

(……できた)

───────────────────

湖畔に降り立つ。

木陰に、気配があった。

「あら——久しぶりじゃない」

アポーニアが立っていた。昼の光の中にいる時と同じ笑顔で、しかしどこか戸惑ったように天球を見上げている。

対岸の岩の上に、もう一つの気配。

アルタスが立っていた。弓矢を手に、こちらを静かに見ている。その視線がアポーニアに移る。

沈黙。

「…………」

「…………」

二人が、向き合った。

「なんで昼なのよ」

「なんで夜なのに出てる」

同時に言った。

それから互いを見て。

「お前が先に言うな」

「アンタこそ」

「俺は言ってない」

「私も言ってない」

「言った」

「言ってない」

俺は少し後退した。

(……なるほど、双子だ)

リーゼロッテが、鎧の肩を揺らした。たぶん笑っていた。

ニッグが「ニ……グ」と言った。

───────────────────

しばらくして、アポーニアがこちらに向き直った。

「——まあ、いいか。あなたたちが動かしたんでしょ、シンボル」

「そうだ」

「スカルナイトも倒して?」

「倒した」

アポーニアがにっこりと笑う。

「合格ね」

アルタスが対岸から静かに言った。

「……認める」

───────────────────

アルタスが岸まで歩いてきた。

弓矢を構える。矢先が青白く光り始める。

「受け取れ」

光の矢が、俺の胸に向かって飛んだ。

当たる——と思った瞬間、衝撃ではなく、光が染み込んでくる感覚があった。

頭の中に、音が響く。

───────────────────

【スキル獲得:《マジックアロー》】

───────────────────

「遠距離から、魔力の矢を放つ。狙いを外さない」

アルタスが短く言った。それだけだった。

───────────────────

アポーニアが前に出た。

微笑みながら言う。

「じゃあ、私が君に授けるスキルは——」

その瞬間。

アポーニアの額に、光とともに紋章が浮かび上がった。

アポーニアが、押し黙った。

「……ど、どうした?」

思わず問いかける。

一瞬だった。

アポーニアの目が、悲しげな色をした気がした。

次の瞬間には、もう太陽のように明るく笑っていた。

「《セイクリッドフレア》。全身から聖なる光を放つスキルよ」

その言葉を聞いた瞬間。

リーゼロッテが動いた。

風のように。音もなく。

アポーニアの首根っこを、鎧の手が掴んだ。

「お前……ッ!」

低い声だった。今まで聞いたことのない声だった。

「自分が何を言ってるか、分かってるのか……!!」

アポーニアが苦しそうに顔を歪める。

(な——)

俺は固まった。

こんなに怒ったリーゼロッテは、初めてだった。

スッ、と。

一本の矢が、二人の間に割り込んだ。

アルタスが弓を引いていた。矢先が青白く光っている。

「……やめろ、リーゼロッテ」

静かな声だった。

「思う所はある……が、このバカ姉の能力は知っているだろう……」

リーゼロッテは動かなかった。

鎧の指が、きつく、きつく、アポーニアの首根っこを掴んでいる。

しばらくの沈黙。

やがて——リーゼロッテの手が、ゆっくりと離れた。

アポーニアが床に崩れ落ちる。ゲホッ、ケホッとむせながら、それでも笑おうとしている。

アルタスが、静かに矢を収めた。

アポーニアが立ち上がった。

服の乱れを直しながら、静かに口を開く。

「そう……私の能力は、神託」

一拍。

「信じて。この先——必要になるの」

リーゼロッテは、わなわなと震えていた。

鎧が、細かく軋んでいる。

それから。

踵を返した。

「行こう、トオル。ニッグ」

冷たい声だった。

「コイツらがこの先の話をしないのは分かってる」

「お、おい、待てよリズ——!」

リーゼロッテはもう歩き出していた。ズンズンと、振り返らずに。

俺とニッグが続く。

(リズはどうしたってんだ……)

階段の手前で、一度だけ振り返った。

アポーニアとアルタスが、並んでこちらを見ていた。

二人とも——寂しそうな顔をしていた。

俺は何か言おうとして、やめた。

前を向いて、歩いた。


──つづく──

最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やコメントをいただけると、続きを書く力になります。ブックマーク・応援もとても励みになっていますので、よろしければぜひ。また次回お会いしましょう!

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