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異世界転「生」できませんでした。-俺YOEEEけどたくましく生きて行きます。-  作者: 六六-B
詩人の湖畔・狩人の水面編

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ファントム

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・応援・感想、全部作者の栄養になっています。よろしければぽちっとしていただけると泣いて喜びます。それではお楽しみください!


風が、止まった。


最後の塵が俺の中に溶け込んで、湖畔に静寂が戻った。

俺は、石畳の上に立っていた。

手を見た。青白い光が、さっきまでより濃い。透けていない。指の先まで、しっかりと形がある。足の裏で、石畳の冷たさを感じている。

(……ファントム)

ステータスを確認する。

───────────────────

【執念深きトオル】

【種族:ファントム】

Lv:20

HP:60/60

MP:30/120

スキル:《祟り》《ダークボール(Lv7)》《鬼火》《影移動》《透明化》《鑑定》《ソウルタッチ》《幽幻》《霊体化》《実体化》

───────────────────

新しいスキルが二つ、増えていた。

《霊体化》と《実体化》。

さっきまでは無意識にやっていたことが、意識して切り替えられるようになった——ということだろうか。消費MPはない。

(試してみるか)

《霊体化》。

足の裏から、石畳の感触が消えた。体が、ふわりと浮く。さっきまでの霊体と同じ感覚だ。

《実体化》。

また、石畳が戻ってくる。冷たい。固い。

(……便利だな)

そこに、足音が聞こえた。

鎧の軋む音。いつもと同じリズムのはずなのに——一歩、また一歩。どこかゆっくりだった。

リーゼロッテが、目の前に立った。

「そんな……」

声が、低かった。

「これじゃまるで——」

言葉が、途切れた。

鎧の手が、そっと俺の顔に触れた。

すり抜けなかった。

実体化しているから。当たり前なのに、その当たり前が、なんだか妙に感じた。

次の瞬間、肩をガシッと掴まれた。

引き寄せられる。

ギリギリギリ……。

「ちょ、ちょっと待——ほ、ほげー!! 死ぬ!!」

とっさに《霊体化》。

スルッと、リーゼロッテの腕をすり抜けた。一歩後ろに出る。

俺は自分の手を見た。さっきまで実体だったのに、今は石畳をすり抜けている。

「……おお。便利だな」

リーゼロッテが、ンッンッと咳払いをした。

「ようやく触れるようになったから、絞め殺してみようと思ってね」

「な、なんだよそれ……!」

笑いながら言い返して——ふと、止まる。

(?)

リズが鼻をスンッと鳴らした気がした。

……頭が無いんだ、そんな訳ないか。

「ニ……」

声がして振り返った。

ニッグが、胴体だけで石畳に座り込んでいた。湖の向こうを、静かに見ている。

遠くの水面に、何かが浮いていた。

二本。

「……あ、腕」

《実体化》のまま、湖面に向かって足を離した。体が浮く。そのまま水面の上を飛んでいく。

腕まで来た。プカプカと浮いている。一本掴む、脇に抱える。もう一本掴む。

戻る。

ニッグの前にしゃがんで、右腕を肩口に押し当てた。ぐちゅ、という音とともにくっつく。左腕も同じように。

ニッグがぱたぱたと両腕を動かして確認する。

「ニ……グ」

「どういたしまして」

立ち上がって、湖面を見た。

水底に、鈍い光がある。

月のシンボルだった。リーゼロッテが溝から外したまま、水底に沈んでいる。あれを取って、空の太陽のシンボルまで持っていく。

「俺が取ってくる」

《霊体化》。

水の中へ、すうっと入っていく。水の抵抗がない。暗い。深い。

月のシンボルが見えてきた。水底に横たわって、鈍く光っている。

手が届く距離で——《実体化》。

両手で掴む。

持ち上げようとする。

動かない。

(……重い)

もう一度、力を込める。

ずず、と動く。砂を引きずるような感触がある。

さらに力を込める。

ずずず——ふっ、と浮き上がった。

抱えると、思った以上に重かった。石というより、金属のような密度がある。

(これを持ったまま、あそこまで飛ぶのか)

水面に向かって浮上する。月のシンボルを抱えたまま、水を割って空に出た。

湖畔に降り立つ。リーゼロッテとニッグが、こちらを見ていた。

「いけそう?」

「やってみる」

足が、石畳から離れる。

ゆっくりと高度が上がる。月のシンボルが腕の中で重い。普段の浮遊より、明らかに遅い。

(……ギリギリだな)

下を見ると、リーゼロッテとニッグが小さくなっていく。リーゼロッテの鎧が、こちらを見上げている。

上を見た。

天球のレールの上を、太陽のシンボルがゆっくりと動いていた。分針のような、静かな速度で弧を描いている。

(あそこまで持っていく)

高度を上げる。腕の中のシンボルが重い。抱え直して、太陽のシンボルへ向かって進む。

近づくにつれて、光が強くなる。眩しい。

あと少し。

太陽のシンボルが眼前に来た。レールの上で、静かに動き続けている。

トオルは月のシンボルを構えた。

重い。腕が震える。

(重ねるぞ——)

月のシンボルを、太陽のシンボルへ向けて押し込んだ。

触れた瞬間——


──つづく──

最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やコメントをいただけると、続きを書く力になります。ブックマーク・応援もとても励みになっていますので、よろしければぜひ。また次回お会いしましょう!

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