スカルナイト
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スカルナイトが、ゆっくりと剣を構えた。
骸骨の馬の上で、巨体が動く。月明かりに照らされて、白い骨が冷たく光っていた。馬と騎士を合わせて、高さは十五メートルはあるだろうか。湖畔の縁を埋めるほどの巨影が、こちらを見下ろしている。
蹄が、地を踏みしめた。骨と石が打ち合う、乾いた音がした。
「……でかいな」
「うん」
リーゼロッテの声が、いつもより低かった。
俺は鑑定を走らせた。
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【スカルナイト】
Lv:???
HP:???
MP:???
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(読めない……ユニーク個体か)
スカルナイトが動いた。
骨の馬が地を蹴る。十五メートルの巨体が、一瞬で距離を詰めてくる。
「散れ!」
三人が左右に飛んだ。剣が振り下ろされる。地面が砕けた。湖畔の石畳が陥没して、衝撃波が水面まで広がっていく。
「重い……!」
リーゼロッテの鎧が、振動でぎしりと軋んだ。
スカルナイトはそのまま馬の勢いで通り過ぎ、湖畔の向こうで悠然と旋回した。馬の機動力を最大限に活かしている。突っ込んでは離脱、突っ込んでは離脱。一撃が当たれば終わりの、重い攻撃を撒き散らしながら。
「攻撃を試す!」
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【スキル発動:《ダークボール(Lv7)》】
【MP:57 → 54】
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兜に直撃させた。
——スカルナイトの動きは、止まらなかった。頭が少し揺れただけで、次の突進の構えに入っている。
「闇属性、効きが悪い……!」
「効いてないわけじゃないけど、こいつのHPじゃ削りきれない」
リーゼロッテが冷静に言った。
ニッグが前に出た。長剣を抜く。ぎしぎしとした動きが消えて、刃が静かに月光を映した。
スカルナイトの突進に、ニッグが正面から踏み込んだ。
剣戟が、湖畔に響いた。
ニッグの斬撃が、スカルナイトの剣を弾く。返す刃で骨馬の足を狙う。スカルナイトが手綱を引いて躱す。剣戟が連続する。火花が散る。
しかし——スカルナイトの剣は、ニッグよりも一回り重かった。
ニッグの剣が弾き飛ばされた。よろめいたニッグの胸に、スカルナイトの剣が叩き込まれた。
ニッグが、湖畔の縁まで吹き飛ばされた。
「ニッグ!」
俺が駆け寄ろうとした、その時。
ニッグが、立ち上がった。
剣を握り直す。濁った眼が、まっすぐにスカルナイトを見据えた。
そして——口を開いた。
「グ……」
絞り出すような声だった。
「グ……セ、イン……」
俺は息を飲んだ。
「ト……」
ニッグが剣を構えた。長剣が、白く光り始めた。聖属性の光だった。月光と混ざり合って、湖畔を眩しく照らしていく。
「スラッシュ……!!」
ニッグが、剣を振った。
白い斬撃が、空気を裂いた。
スカルナイトに向かって、聖なる光が飛んでいく。
スカルナイトも、剣を振った。
闇属性の黒い斬撃が、ニッグの白い斬撃と——真正面からぶつかった。
光と闇が拮抗した。
数瞬。
そして——相殺した。
衝撃波が湖畔に広がる。水面が揺れる。
その勢いで——ニッグの右腕が、ポーンと飛んだ。
肩口からきれいに抜けて、湖畔の石畳の上に、ころころと転がっていった。
ニッグは特に動じることもなく、剣を地面に置いて、左手で右腕を拾った。肩口に押し当てる。ぐちゅ、という音とともに、くっついた。
それから——スカルナイトを睨みつけた。
濁った眼の奥に、確かな殺気があった。
「…………」
「……お前」
俺はぽつりと呟いた。
「今、喋ったよな……?」
リーゼロッテも、鎧の肩がわずかに揺れた。たぶん驚いていた。
「喋ったね」
「ニッグ以外の言葉、初めて聞いた」
「私も」
それだけじゃない。
「しかも、聖属性……?」
ニッグはゾンビだ。アンデッドだ。本来、聖属性は自分の存在そのものを祓ってしまうはずの属性だった。
それを、自分で扱った。
「お前……何者なんだ」
ニッグはそんな俺たちの方を見もしなかった。ただスカルナイトを睨んだまま、足元に置いた剣をゆっくりと拾い上げた。
剣の構えが、さっきより深い。
(こいつ……本気だ)
そして、生前の何かを思い出させる動きだった。
しかし。
ニッグの一撃が相殺されるのを見て、俺は確信していた。
正面からの斬り合いでは、こいつには勝てない。
(弱点を見つけなきゃ、削りきれない——)
俺は意識を集中した。
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【スキル発動:《ソウルタッチ》】
【MP:54 → 34】
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白いオーラを纏った右手を、スカルナイトに向ける。
巨影の中に、光が浮かび上がった。
——両目だった。
頭蓋骨の眼窩の奥で、二つの白い光が静かに脈動している。他の部分は何もない。ただあの両目だけが、明確に「核」として光っていた。
(あれが弱点だ)
「リズ、ニッグ」
俺は声を低くした。
「弱点が見えた。両目だ」
──つづく──
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