↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
59/64

影の皇子、ユリウス 覚醒 ②


兄レナースを死に追いやった叔父ライオスを討ち取り、この荒れ果てた帝国に再び秩序を取り戻すこと。そして、兄が愛した民を、これ以上の血から救うこと。


だが――

そのためには、ユリウス自身が「冷酷な皇帝の影」にならねばならなかった。


処刑場を後にし、教会派の厳重な護衛に囲まれながら、ユリウスは馬車へ向けて歩き出す。

沿道に群がる民衆から、声が上がる。


「ユリウス様! 白百合の皇子様!」

「どうか、どうか我らをお救いください!」


絶望に満ちた瞳で自分を見上げる民たちの姿。

ユリウスは足を止めず、ごくわずかに優しげな笑みを口元に浮かべて見せた。


それは、数年かけて完璧に作り上げた「理想の皇子」の貌(かお)だった。



その時。

カツン、と静寂を切り裂くような金属音が、雨の音をかき消した。


馬車の影、死角となっていた路地裏から、数条の黒い影が飛び出してきた。

ただの盗賊や暴徒ではない。全身を泥でくすんだ漆黒のプレートアーマーで包み、手には帝国軍の幅広剣を構えている。


「ライオスの刺客――魔導騎兵か!」

護衛の騎士が叫ぶ間もなく、黒い刃が疾走した。

鮮血が雨を染める。

首を跳ね飛ばされた騎士が倒れ、枢機卿が悲鳴を上げて石畳に転がった。


「ユリウスの首を獲れ! ライオス陛下に捧げるのだ!」


刺客のリーダー格と思われる大男が、血濡れた大剣を構え、一直線にユリウスへ向かって突き進んでくる。圧倒的な殺気。


教会の軟弱なお飾りの騎士たちでは、束になってかかっても止められない。


「ユリウス様、お逃げください!」

教会の聖職者たちが乱動し、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。


ユリウスは――逃げなかった。

淡い灰青色の瞳に、沈着な冷気だけが宿る。


細身で華奢な体に重すぎる白銀の長衣をなびかせ、ユリウスは静かに右手を伸ばした。

倒れた護衛の騎士の手から、一振りの剣を引き抜く。

かつて天才と謳われた兄レナースから教わった、剣の握り方。指の配置、重心のかけ方。

血に染み付いた記憶が、瞬時にユリウスの身体を動かした。


「失せなさい。この国を蝕む虫ケラども」


ユリウスは冷徹な声を放ち、美しく繊細な顔立ちに、氷のような殺意を宿した。


しかし、漆黒の鎧兵たちは怯まない。

リーダー格の大男の大剣が、ユリウスの首筋を狙って振り下ろされる――。


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。