第9話 お許しが出たようなので
「ふへほはー! つっっかれたあぁー!!」
案内された客室で、ミチルは豪華なベッドにダイブ。
勢いよく倒れ込んだので、スプリングの反動がすごい。ぼいんぼいんと体が跳ねた後、ふっかふかのベッドに沈んだ。
「あ……やばい、もうこれ、すぐ寝れそう」
ミチルはうっとり目を閉じる。
するとベッドが更に深く沈む。ジェイが隣に腰掛けたのだ。
「ミチル、今日は大変だったな」
ジェイの大きな手がミチルの髪を撫でるように梳く。
温かくて気持ちいい。ミチルはついゴロニャンしたくなったが、慌てて飛び起きた。
「ううん! ジェイの方が大変だったよ、いろんな事聞かされてさ」
自身が命を狙われていること。
父親も暗殺されていたこと。
そんな衝撃の事実を一度に聞かされて、正気でいるのは並大抵のことではない。
あと、ど緊張で壊れたラジオになったこと。
ミチルからのほっぺちゅーでうっかり愛に溺れたこと。
おじさん三人の前で♡♡♡が震えるほどのあっついキッスを披露したこと。
……それも正気ではいられない!
「凱旋して早々、こんな重大事件が出てくるなんてねえ……」
ミチルは己のトラブルメーカーっぷりを呪いそうになる。
そりゃあ、やり残したものをスッキリさせには来たよ。
でもさ、行ったらもう全部事実がわかってて、行動指針も決められた。
全部お膳立てされて、それでいいのかね!? それでオレは自立できたって言えるかね?
「はあ……」
カエルレウムを留守にした時間が長すぎた。
ジェイの事を気づいていたのはミチルだけではない。ミチル達が世界を救っている間にも、ネモフィラ将軍やクローバーは動き続けていた。大人ならばそれは当然の事である。最初から最後まで全部自分でやりたかった、というのは子どものワガママだ。
「ミチル、今日はありがとう」
色んな鬱憤を全て晴らすかのようなイケメンスマイルをジェイは浮かべていた。
ジェイのキラキラ笑顔は、全ての憂さを浄化する特殊効果がある。
「ええー♡ それほどでもお〜」
以前のミチルなら「そんな事ないよ」とか謙遜したかもしれない。
だが、ミチルとジェイはすでに×××する仲になっている。
そんな間柄に遠慮は無用。伴侶からの愛の御礼は謹んで頂戴するのだ!
「ミチルのおかげで、私は巨大な壁に立ち向かう勇気が持てた」
そしてジェイも愛を語ることに躊躇しない。
愛し愛される事に自信を持っているから、己の内心をミチルにだけは見せられるのである。
「ミチルがいてくれなければ、私は父の死の真相に潰されていたかもしれない」
「ジェイ……」
自分にだけ見せてくれる本心に、ミチルの心臓がきゅんとなる。
やべー、抱きしめたい。
ていうか、抱かれたい。
何度でも言うがすでに×××する仲なので、欲望にも正直だ!
「……パーティーは明日。忙しいな」
驚愕のスケジュールに、さすがのジェイもため息を吐いている。
「うーん、オレが日和って逃げ出さないように、すぐやっちゃうんだろうねえ」
おそらくエーデルワイスから凱旋の知らせを受けて、クローバー達はそれに合わせて準備万端にしていたに違いない。用意周到な大人に利用されるのは少し悔しいが、ミチルとジェイだけでは国防大臣の爪の先さえ届かない。
「大丈夫だ、ミチルの事は私が必ず守り抜く」
ジェイはその手を取って、守るだけではない、対等の伴侶としてミチルを見つめた。
「だから、私とともに戦ってくれ」
「……ふあ、はぁい♡」
やっべー! カッコいい!
もう、抱いてー!
ミチルのそんな正直な欲望を叶えるかのように、ジェイから熱い口付けが贈られる。
「ふう……ん♡」
「ミチル、愛している……」
「ジェイぃ……オレもぉ」
二人はベッドに倒れこみ、なんかもうもみくちゃのラブラブ応酬が始まった。
明日早いのに。いいんだろうか。
「あ、待って、ジェイ」
「どうした、ミチル?」
ミチルはもじもじと恥じらいながら、一つの懸念を口にする。
「やっぱ、ダメだよお。借り物のベッド、シーツとか汚しちゃう……」
「ああ、それなら心配ない」
ふふ、とジェイは笑ってミチルのセーラー服のボタンに手をかけた。
「先程、部屋付きのメイドに言われた。『存分に汚しちゃってくださいませね』と……」
「——!」
ミチル、ショック!
プルケリマとカリシムスの♡♡♡を奨励するのはペルスピコーズだけではなかった!
寛容なのか、それともオレ達で遊んでるのか。いいや、これはイジってるんだ、なんてこと!
「だから、ミチル……む?」
調子に乗っているジェイがミチルのスカーフを引こうとして手を止める。
「ジェイ?」
「む、ミチルのスカーフを触ったら、手がピリっとした」
「なんで?」
そうなのだ。ミチルの水色のスカーフは保護者が与えた最後の砦。
心を許したカリシムスでさえも触るとちょっと痛い。ちなみに敵(色魔想定)が触れると黒焦げになる!
「ミチルが、スカーフを取ってくれるか……?」
「え……」
それって。
なんかそれって。
自分からウェルカムみたいな意思表示じゃない!?
「うん……」
ああ、でも。
止まらないんだ、この気持ちが。
「ジェイ……」
ミチルはスカーフをスルリと襟から引いた。
それから愛しい伴侶に手を伸ばす。
「大好き……」
「ああ、ミチル……」
ベッドもシーツも、いっぱい汚れちゃうね……♡




