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【BL】くしゃみ1.5部〜イケメンの故郷凱旋ハネムーン編  作者: 城山リツ
ジェイの章 私の誇り尊き天使

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第8話 披露宴ではめろ!

 ジェイの父親を暗殺したであろうブッドレア大臣。今もジェイを狙う所業を阻止するべく、カエルレウム魔法顧問クローバーが動く。

 彼の作戦は、国を挙げてのセレモニーを催すこと。名付けて『プルケリマ・ミチル様とジェイ・アルバトロス君のご成婚歓迎パーティー』だ。


「ごっ……せい、こん!?」


 突拍子もない事に、ミチルの目はまんまるクリクリ、くるりんぱ。

 ジェイも多分驚いて言葉を失っている。表情筋非発達なのでよくわからないが。


「そうです。君達はすでにペルスピコーズで儀式を終え、新婚生活の真っ最中だと聞いています。なんてめでたい、その二人が晴れて祖国に凱旋したのです、国王陛下から歓迎の祝典があって当たり前でしょ」


「は、はあ……」


 急に口数とテンポが早くなっているクローバー。詐欺師の常套手段である。ミチルに余計な事を考えさせずに、意のままに操ろうとしているのだ。


「ちなみにアルバトロス君にはこの度の巨大な功績を讃え、男爵位が贈られます。実家と荘園も復活してますよ、良かったですね」


「えっ、ナニ? どゆこと?」


 ミチルが戸惑っていると、同じく呆然としたジェイが簡潔に答える。


「つまり、私に貴族の身分が戻った、という事だ」


「エエー! マジー? ウソー? すっごーい!!」


 何という事でしょう。出会った時は麻の服、再会したら上級騎士服。さらに凱旋したら高級絹の服を着ることに。

 ジェイの出世、ここに完遂す。ミチルは両手を挙げて大喜び。

 ますますイケメン度が上がっちゃうよ。オレ、生きていけるかな!?


「ねえ、すごいでしょ? だからパーティーで囮になってくれますよねえ?」


「んん!?」


 クローバーから急に物騒なワードが飛び出した。

 ミチルは両手を挙げたまま、今度は目ん玉をひん剥いた。


「ブッドレア大臣の方は私が散々挑発しておきました。この機にきっと君達を狙うと思うんですよお」


「ハアアァ!?」


 なんて事してくれたんだ、バッカじゃないのお!?

 ミチルがそう叫ぶ前に、ジェイがその前に躍り出る。


「魔法顧問様、どうかお許しください。ミチルを危険な目には合わせられない!」


「ジェイいぃ……♡」


 身を挺して守ってくれる。まさにナイトとオヒメサマ。

 きゅんきゅん嬉しがるミチルを他所に、クローバーの意地悪な視線がジェイを貫いた。


「あれれ、いいんですかあ? これはネモフィラ将軍のご意向ですよお? まさか恩人の命令に背くなんて、騎士の君には出来ませんよねえ?」


「む……っ!」


 イタイ所を突く。なんて性悪なんだ。

 クローバーは胡散臭くて怪しい魔法使いだと思ったが違った。

 陰険性悪・魔法顧問なんだ!!


「ほらほら、将軍に忠誠を誓いますよねえ?」


「む、むむ……ッ!」


 仕事と家庭(?)、どっちを取るの。ジェイには究極の選択が突きつけられた。

 ミチルは固唾を飲んで棒立ち。なんか、そんな王道な「ヨメのワガママ」論でジェイを苦しめたくなんかないのに。


「ジェ……」


 そんなの答えなくていいよ、とミチルが言いかけた時。

 ジェイは澄んだ瞳できっぱりと言い放つ。


「私の全てはミチルです!」


「……ぺっ?」


 意表を突かれたのはミチルだけではない。

 クローバーも、将軍も、それから存在を忘れていたラベンダーも。目を丸くしてジェイに注目する。


「確かに過去の私があるのは将軍のお力ゆえ。だが、今の私が在るのはミチルがいるから。ミチルが私の全て、ミチルを危険な目に合わせて失うくらいなら、どうぞ私の首をお刎ねくださいっ!」


 怖いー!

 言ってる事が怖すぎるー!

 いくら性悪顧問でも、そこまで言ってないじゃん!


 ミチルは大袈裟なジェイの言葉に全力で突っ込みたかった。

 だけど、「ミチルが私の全て」が嬉しすぎて、なんかもうどうでも良くなる。




 パン……パン……パンパンパンパン……ッ




 ゆっくりと、それからリズミカルに拍手が鳴り響いた。

 もちろんこれはネモフィラ将軍である。どうも彼は心動くと拍手をする癖があるようだ。


「素晴らしい! 感動した! よくぞ申した、それでこそカエルレウムの英雄(カリシムス)であるッ!!」


「ははっ、ありがたき幸せ……!」


 ジェイは条件反射で将軍の前に跪いた。

 クローバーはなんだか白けた顔をして、ラベンダーはうっかりウルウルしている。


「顧問殿、作戦は練り直しだ」


「ええー? 僕がどんだけあの大臣と酒宴をしたと思ってるんですう?」


 将軍の言葉に、クローバーはわかりやすくぶうたれた。



 

 一人立ち尽くすミチル。

 ジェイはオレにここまでしてくれた。

 それならオレもジェイの気持ちに応えなきゃ。ジェイのためにならなくちゃ。




「そ、そそ、その必要はありませえぇん!」


 声が震える。だって囮なんてやっぱり怖い。

 だけど。


「ごせーこんパーティー、やってやろうじゃないのォオ!」


「ミチル!?」


 ジェイがビックリしてる。ごめんね、ジェイの決意をひっくり返すような事言って。


「囮なんてヨユー!」


 そうさ、怖くなんかない。


「だってジェイが守ってくれるもん!!」


 オレは、オレのイケメンを信じてる。


「ミチル……」


 ジェイを、信じてる。




「  エ  ラ  イ  ッッ  !!  」


 執務室に怒号のような将軍の叫びが響く。拍手喝采はラベンダーと合わせてダブル。


「いやー、良かった良かった。これで私の痛風も報われます」


 クローバーを合わせてトリプル喝采。ミチル讃頌の拍手、鳴り止まず。




「へへ、へへへ……」


 ミチルは照れながらジェイの手を握った。


「ミチル。私は……」


 ジェイはまだ少し不安気に瞳を揺らす。


「ジェイ、頑張ろうね」


 だから笑いかける。オレはジェイと一緒に戦うよ。

 だってそのために、オレはここに来たんだから。


「わかった。ミチルを全身全霊で守り抜く」




 決意に輝くジェイの顔。

 イケてるどころではなかった。

 なんかもう、美しすぎた。

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