養って
それから三日。
草。
魚。
まずい食事ではあるが、腹はある程度満たせるようになっていた。
森の中を歩きながら、エディルはふと思う。
「……」
しばらく沈黙。
「俺さ」
腕を組む。
「何しにここ来たんだっけ」
少し考える。
「……」
「てか」
「なんで俺、ここで自給自足してんの?」
森を見渡す。
魚。
草。
洞窟。
「……」
「王子だぞ、俺」
少し間。
胸を叩く。
「我、王子ぞ?」
沈黙。
「……」
「やってられっか」
立ち上がる。
「女に養ってもらう」
一人で頷く。
「そうだ、それがいい」
指を鳴らす。
「女に飯作ってもらって」
少し考える。
空を見上げる。
「落ち着いたら……あいつら探すか」
極限状態でひらめいた結論。
だが――
やはりクズだった。
これが。
ゴミクズニート王子。
エディルである。
森を抜けてしばらく。
エディルは木々の切れ間から、巨大な建造物を見つける。
「……なんか、でかい城あるじゃん」
それは王都だった。
かつて魔界を侵略した勇者一行がいる場所。
だがエディルは、そんなこと知る由もない。
「でかいとこってさ」
軽く伸びをする。
「女いそうだよな」
三日前。
熊に殴られ。
猪に吹き飛ばされ。
野犬に尻を噛まれていた男とは思えないほど、足取りは軽い。
「よし、行こ」
完全にウキウキである。
だがその時。
王都の門の方から、一人の女が飛び出してくるのが見えた。
「……なんだ?」
目を細める。
遠くてよく分からない。
だが、様子がおかしい。
さらにその後ろ。
鎧を着た兵士たちが追っている。
「あーあ」
肩をすくめる。
「可哀想に」
だが。
興味はない。
人間界の事情など知ったことではない。
女ではある。
だが助ける義理もない。
なにより――
エディルにはもう魔力がない。
今の最優先は、復讐ではない。
生きること。
そして――
「めんどくさ」
そう呟いて歩き出す。
だが。
逃げてくる女が、どんどん近づいてくる。
「……」
顔が見えた。
「……可愛い」
銀色の長い髪。
雪のような白い肌。
見慣れない衣装――着物。
まるで雪女のような姿。
「あんな服、見たことねえけど」
口元がわずかに緩む。
「それでも可愛いな」
距離はもうすぐそこ。
女は必死な顔で走ってくる。
「助けてください!」
涙目で叫ぶ。
その瞬間。
エディルの中で答えは決まった。
理由は一つ。
「……可愛いから」
ニヤリと笑う。
「助ける理由、十分だろ」




