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この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
ニート人間界へ降り立つ
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俺は動物以下

炎も出ない。

空も飛べない。

エディルは、自分の手を見つめる。

「……どうしろってんだよ」


だが。

腹は減る。

ぐぅ、と音が鳴る。


「……いや」

腕を組む。

「俺、魔族だし」

「なんとかなるだろ」


そう言って、森の中を歩き始める。

しばらくすると。

大きな影が動いた。


熊。

エディルは足を止める。


「余裕だろ」

肩を回す。

「元・極炎魔族なめんな」


熊が振り向く。


次の瞬間。

――ドォン!!

エディルは地面に転がっていた。


「……なんで?」

熊は何事もなかったかのように去っていく。

しばらく、地面に寝転んだまま。

やがて立ち上がる。


「……まあ」

服の土を払う。

「熊は、ちょっとデカかったな」

歩き出す。


今度は――

猪。


「負けるわけないだろ」


猪が突進してくる。

――ドォン!!

また吹き飛ばされる。


「……」

しばらく沈黙。

「……もしかして俺」

ぽつり。

「動物より弱い?」


その時。

後ろから。

ガルルル……

野犬。


「……うるせえな」

無視して歩き出す。


次の瞬間。

ガブッ。

「なにこれ!?」

尻を噛まれる。


「痛っ!!」

「しぬしぬしぬ!!」


全力で走る。

森を駆ける。

必死で木に登る。


「はぁ……はぁ……」

木の上で息を切らす。

下では野犬が吠え続けている。


エディルは空を見上げた。

「……」

ぽつり。

「人間でも魔法くらい使えるよな」

間。

「それ以下ってこと?」


――絶望した。

なので、動物は諦めた。

森の中を、とぼとぼ歩く。


「……無理」

「動物強すぎ」


ふと、地面の草に目がいく。

しゃがみ込む。


「……なんか」

草をつまむ。

「こういうの、料理人が採ってたよな」


魔界の城。

豪華な食卓。

思い出す。


「……」

一本ちぎる。

恐る恐る口に入れる。

もぐもぐ。


数秒後。

「まずっ!!」

思わず吐き出す。

「なんだこれ!?」

「苦っ!」

草を睨む。


だが。

腹が鳴る。

ぐぅぅ……


「……」

沈黙。

もう一度、草を見る。


「……今は」

小さく呟く。

「極限状態」


震えながら、もう一本。

「……いただきます」


もぐもぐ。

苦い。

青臭い。

まずい。

それでも、飲み込む。

目に涙が浮かぶ。


「……」

ぽつり。

「野菜って」

間。

「うまいな……」

涙を流しながら、食べ続けた。



だが。

草だけでは、腹は満たされない。

川の前にしゃがみ込む。

水の中。

魚が泳いでいる。


「……」

目を細める。

「魚なら」

腕をまくる。

「勝てる」


バシャッ!

魚を掴む。

「よっしゃ」

少し笑う。

「楽勝じゃん」

しばらく眺める。


そして。

「……火」

沈黙。

「出ないんだった」

肩を落とす。


少し考える。

「……まあ」

魚を見る。

「魔族だし」

牙を見せる。

「生でいけるだろ」


ガブッ。

もぐもぐ。

数秒後。


「まずっ!!」

魚を睨む。

「生臭っ!!」

「鱗多すぎ!!」

固まる。


沈黙。

「……」

もう一口。

もぐもぐ。

顔をしかめる。


「温かい飯……」

遠くを見る。

「食いてぇな……」

それでも。

食べるしかない。

泣きそうな顔で、もそもそと食べ続けた。



やがて。

体力は限界に達する。

岩場に座り込む。


「……今日はもう無理」

空を見上げる。

日が沈みかけている。


「とりあえず」

立ち上がる。

「寝るか」

近くの洞窟へ入る。


暗い。

だが奥は風も少ない。

壁にもたれる。

しばらくして。

体が震え始める。


「……寒」

腕をさする。

「寒い」


魔界では感じなかった寒さ。

本来なら。

魔力で火を起こす。

それが当たり前。

だが。

今は――できない。


「……焚き火」

外を見る。

木。

枝。

落ち葉。

材料はある。

だが。

動かない。


「……」

沈黙。

「火って」

少し考える。

「出すもんじゃねえの?」


元王子である。

火は“出るもの”。

作る発想がない。


「……」

枝を見る。

そして結論。


「無理」

奥に戻る。

体を丸める。


「寒い寒い寒い」

震えながら呟く。

「人間界……」

少し間。

「最悪だろ」


洞窟の奥。

その夜は、やけに寒かった。

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