表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
戦士 ドレイク
76/78

そこの二人

朝日が昇る。

ユキノは、ゆっくりと目を覚ました。

焚き火はすでに消えている。


ふと隣を見る。

エディルが眠っていた。

子供のような、無防備な寝顔。


(昨日あんなんだったのに)


思い出す。

あの、強い独占欲を見せた表情。

抱きしめ合った夜。


そのまま、いつの間にか眠っていた。

(……歳上なのに、子供みたい)

思わず、少し微笑む。


その時。

エディルが、ゆっくりと目を開けた。

視線が合う。

ふっと顔が綻ぶ。


「……おはよ」

そのまま、軽く額にキス。


「っ……」

ユキノは一瞬固まる。

だがエディルは気にした様子もなく、立ち上がるとそのまま洞窟の外へ出ていった。


「ちょ……」

戸惑いながら、ユキノも後を追う。


外。

朝の冷たい空気。


エディルはポケットからタバコを取り出し、

迷いなく火をつける。

煙を吐き出す。


「やっぱ朝はこれ!」

さっきまでの空気が嘘みたいに。

気怠げなのに、どこか機嫌がいい。


ユキノはそんな様子を、少し離れて見ていた。


だらけているのに。

どこか様になっている。

胸の奥が、少しだけ熱くなる。

それに気づいたエディルが、口元を歪める。


「絵になるだろ?」

怪しく笑う。


「どこが」

ユキノはそっぽを向いて答える。


「絵画だろ、これ」

当然のように言い放つ。


(……やっぱりコイツは)

さっきのときめきが、一瞬で消える。

だが、どこが惹かれてしまう。

ユキノは自身の気持ちを誤魔化すように、ため息をついた。




しばらくして。

その辺りの木の実を採り、簡単な朝食を取る二人。


ユキノが地図を広げながら口を開く。

「次、どこ行く?」


「どこでもいいよ、近いとこ」

エディルはバリバリと林檎のような実をかじりながら答える。


「どこでもいいって……」

呆れた声。


「ていうか、収容所から逃げるとき必死すぎて」

「ここがどこか分かんないんだよね」

ユキノはぼやく。


「じゃあ、とりあえず山降りてから考えようぜ」

食べ終えたエディルは立ち上がる。


「……まあ、それしかないか」

ユキノも頷き、歩き出そうとする。


だが。

エディルはその場で止まったまま。


「どうしたの?」

「歩くのだるいから、こっち来いよ」

言うが早いか。

ぐっと腕を引き、ユキノを抱き寄せる。

そして、背中から黒い翼がふわりと現れる。


そのまま――

ふわり、と体が浮いた。

「……ちょ、待って!急なの怖い!」

ユキノは慌ててエディルにしがみつく。


「ギャーギャーうるさいな」

呆れながらも、そのまま空へ。

山の麓へ向かって飛び始める。


「ほんとに!アンタって人は!」

ユキノは怒鳴る。


「離したら死ぬぞ」

エディルは意地悪く笑う。


さらに。

「最高の男だろ」

ニヤリと。


(……あとで絶対ぶん殴る)


ユキノは内心でそう思いながら。

結局、しがみついたまま従うのだった。



山の麓へ降りたあと。

周囲の地形や方角を確認しながら、二人は歩く。


どうやら現在地は――フルマニア地区の近くだった。

そのまま徒歩で移動を続ける。




フルマニア地区。

花と水の都。


以前泊まった宿屋の店主が言っていた通り――

これまで訪れたどの地区よりも、華やかで、洗練された街だった。

遠目からでも分かる。

道行く人々は皆、綺羅びやかで。

服装も、雰囲気も、どこか上品だ。

街のあちこちには花が咲き誇り、

中央には大きな水路が流れている。


「……綺麗な街だね」

ユキノがぽつりと呟く。

入口付近の標識を見る。

「フルール、って言うんだ」


「ほんとに綺麗だな」

エディルも頷く。

「ほんとに」


ユキノはその様子を見て、ふと違和感を覚える。


「……本当に街見てる?」

「見てる見てる」


即答。

「すんごい綺麗」


だが視線の先は――

街ではなく。

行き交う女性たち。


(……こいつ)

無言で、エディルの足を踏みつける。


「っい゛!!?」

悶絶するエディル。

ユキノはそれを無視して歩き出そうとする。


その時。

「……なんか兵、多くない?」

足を止める。


「……言われてみれば」

エディルも目を細める。


街の入口。

明らかに、王都の兵が多い。

見張るように立っている。

空気が、少し違う。


「……正面からはやめとくか」

「そうだね」


二人は顔を見合わせる。

そして。

そのまま街を迂回し、裏手から入ることにした。




裏手から街へ入る二人。

細い路地裏。


だが、それでも街の様子は十分に伝わってきた。

何度も行き交う兵。

巡回の頻度が、明らかに多い。


本来なら、穏やかで落ち着いたはずのフルールの街。

だが今は違う。

どこか騒がしく、張り詰めている。


まるで――

誰かを探しているようだった。


「……なんか、騒がしいね」

ユキノが小さく呟く。


「そうだな……あ」

エディルが何かに気づく。


路地裏の壁。

そこに貼られた、一枚の紙。

手配書だった。

近づいて、目をやる。


そこには――

ユキノの顔。

そして、もう一人。

エディルの顔も、並んでいた。


「やだ……とうとうエディルまで貼られてる!」

ユキノは驚いた声を上げる。


だがエディルは、眉をひそめながらもどこか呑気に言う。

「もっとかっこいい写真使えよ」

少し不満そうだ。


「アンタね……」

ユキノは呆れる。



その時。

「そこの二人、ちょっといい?」

背後から、声。



女の声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ