表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
戦士 ドレイク
66/78

お返し

(あの姿……)

壁に叩きつけられながら、ドレイクは思い出す。


かつて魔界を襲撃した時。

エディルは、レックスにあっさりやられていた。

確かにあの時も、溢れ出る魔力は膨大だった。


だが、それでも――

こちら側が圧倒的な力でねじ伏せた。


なのに。

今、目の前に立っている“それ”は違う。

あの時以上の魔力を、肌で感じる。


角。

翼。

完全な覚醒。


(……別物だな)

思考を巡らせるドレイク。


だが。

エディルは、口元を歪めて笑った。

「まさか――これで終わりじゃねえよな?」


次の瞬間。

姿が消える。

間合いを潰す。

一瞬。


そして。

――ドンッ!!

黒炎を纏った拳が、ドレイクの腹に叩き込まれる。


空気が爆ぜる。

衝撃が収容所全体へと走る。

地面が軋み、壁が震える。


「……ぐっ!!」

ドレイクが低く唸る。

体がわずかに浮き、背後の壁へと叩きつけられる。 


だが。

貫いてはいない。


――それでも。

内側から抉られるような衝撃が、全身を駆け抜けていた。


「これ、仕返しな」

エディルがニヤリと笑う。

口元から覗く牙。


ドレイクはゆっくりと立ち上がる。

「……面白い」

呟く。

その瞬間。

魔力が、膨れ上がる。


(……一撃入れたのにか)

エディルはわずかに目を細める。

ダメージは確実に通っている。


だが。

それ以上に――

“立ち上がってくる”


「俺も、そろそろ本気出すからな」

ドレイクが低く言う。


そして。

「人器召喚」

静かな声。

「――鉄拳」


次の瞬間。

ドレイクの両手に、鉄製のメリケンサックが現れる。


装飾もない。

ただの鉄。

だが。

その拳から溢れ出す魔力は異様だった。

圧。

重さ。

禍々しさ。

“殴るためだけに存在する武器”

それだけが、はっきりと伝わってくる。


「……砕く」

短く。

「お前を」

ドレイクはエディルを睨みつける。


「……上等」

エディルも黒炎を拳に纏う。


視線が交差する。

空気が張り詰める。


そして――

再び。

二人は、ぶつかり合った。




その頃のユキノ。

(……助けて)

ユキノは拘束されたまま、三人の男に距離を詰められていた。


笑っている。

完全に、遊びの目だ。

弄ぶつもりでいるのが、嫌でも分かる。

さっきまでのことが、頭に残って離れない。


強引に距離を詰められたこと。

逃げ場もなく、顔を近づけられたこと。

唇に残る、不快な感触。

無遠慮に視線を落とされ、値踏みされるように見られたこと。


(……気持ち悪い)

体が、わずかに震える。

(……エディル)

心の中で、その名を呼ぶ。


その時だった。


ドンッ!!

鈍い衝撃音。

続けて、地震のような揺れが建物全体を襲う。


「何事だ!?」

三人の動きが、ぴたりと止まる。

「……ドレイク様に何かあったのか」

「他の収容部屋は――」


男たちは顔を見合わせ、小声でやり取りを始めた。

やがて。


「様子見てくる」

そう言って、二人が部屋を出ていく。


残されたのは――

男一人と、ユキノ。


だが。

先ほどまでとは違う。

男の意識はユキノから外れていた。

落ち着かない様子で、外の異変ばかりを気にしている。


(……一人なら、やれる)


ユキノは静かに息を吐く。

意識を一点に集中させる。

男の――頭上。


次の瞬間。

空気が凍りつく。

氷が一気に形成される。

巨大な氷柱。


男が気づく。

だが、遅い。


――ガンッ!!

氷柱が、そのまま頭部へ叩き込まれた。

鈍い音。

男の体が崩れ落ちる。

動かない。

気絶している。


ユキノはすぐに動いた。

(……鍵)

拘束されたまま、体を引きずるように近づく。

(確か、こいつが持ってた)

懐を探る。

手応え。

小さな金属の感触。


――あった。

拘束具の鍵。


ユキノは必死に手を動かす。

指先だけで鍵を差し込み、回す。


カチャッ。

まず、手の拘束が外れる。


「……っ」

続けて足。

もう一度、鍵を差し込む。


カチャリ。

鎖が落ちる。

自由になった。


「……やっと、取れた……」

思わず、力が抜ける。

安堵の息が漏れた。


だが、すぐに顔を上げる。

「……ここから、逃げないと」

小さく呟く。

ユキノは立ち上がり、扉へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ