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この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
戦士 ドレイク
64/78

お前が言うな

髪を掴まれたまま。

エディルとドレイクの視線が、ぶつかる。

距離は、近い。

逃げ場は、ない。


――沈黙。

重く、張り詰めた空気。

先に口を開いたのは、ドレイクだった。


「おはよう」


一拍。

「よく眠れたか?」


穏やかな声。

だが。

その目は、笑っていない。

奥で、何かが燻っている。

押し殺された怒りが、じわじわと滲んでいた。


「……あぁ」

エディルが、口を開く。


「よく眠れましたよ」

睨み返す。

逃げない。

軽口の形をしているが。

その奥には、明確な敵意。


空気が、さらに重くなる。

ドレイクは、少しだけ目を細めた。


「……そうか」

短く、返す。


だが。

髪を掴む手の力が、わずかに強くなる。


「余裕だな」

低い声。

「ここがどこか、分かってて言ってるのか?」


「知ってる」

エディルが、即座に返す。


「だから来てやったんだろ」

間を置かない。


一触即発。

その空気のまま。

ドレイクが、口を開く。


「お前とユキノ」


一拍。

「どっちが、アイリーンを殺した」


声色は、変わらない。

だが。


問いの奥に、明確な殺意がある。


「……どうでもいいだろ」

エディルは、被せるように言う。

「ユキノはどこだ」

問い返す。


沈黙。

ほんの一瞬。


「……いい度胸だな」

静かに、ドレイクが呟く。

次の瞬間


――ドンッ!!

腹に、蹴りが叩き込まれる。


息が、止まる。

身体が、浮く。

そのまま。

床へと、叩きつけられる。


「……っ……!」

声にならない。

内臓を抉られるような衝撃。


だが。

ドレイクは、表情一つ変えない。

ゆっくりと、歩み寄る。

見下ろす。


「俺の質問に答えろ」

低く。

「どっちが殺した」


その目は。

完全に。

“処刑する側”の目だった。


「……っ、どうでもいい」

息を吐くたび、腹が軋む。


「ユキノは……どこにいる」

弱さが混じる声。

それでも。

視線だけは、折れない。


ドレイクの眉が、僅かに歪む。

次の瞬間。


――ドンッ!!

再び、腹に蹴り。


「……っ!!」


同じ箇所。

鈍い痛みが、内側で弾ける。

思わず、声が漏れる。


「何が“どうでもいい”だ」

見下ろす。


「俺の仲間を殺した事実は、変わらん」

「答えろ」

冷たい声。



(……仲間、だと)

(俺の仲間も、この街の連中も)

(平気で殺してるくせに――)


声にはならない。

だが。

睨みは、消えない。


ドレイクが、それに気づく。

「……いい目だな」

低く、笑う。


「じゃあ、一つ教えてやる」

「ユキノは――生きてる」



その一言で。

エディルの呼吸が、僅かに戻る。

だが。


「別室で拘束中だ」

「俺の部下が見てる」


一拍。

「“殺すな”“バラすな”とは言ってある」

わずかに、口元が歪む。

「……あとは、好きにしていい」


空気が、凍る。


「……好きに、だと」

嫌な予感が、形になる。


ドレイクは、肩をすくめる。

「分かるだろ」

「綺麗な面してるしな」


軽く。

あまりにも、軽く。

言い捨てる。



――ブツッ。



何かが、切れる音。

「……ふざけんな」

低い。

だが、確実に震えている。


「まあいい」

ドレイクが、手に魔力を込める。


「お前を殺して」

「すぐ後に、ユキノも処刑する」

腕が、振り上げられる。


「――ふざけんなよッ!!」

叫び。

その瞬間。


――バキィッ!!

両手両足の鎖が、軋む。

次の瞬間。

引きちぎれる。


「……!」


ドレイクの拳を、紙一重で避ける。

床を蹴る。

距離を取る。


呼吸が荒い。

目は、見開かれたまま。

怒りが、溢れている。

口元から、炎が滲む。



「……これだから魔族は」

ドレイクが、呟く。

「野蛮で、強引で」

「あの時、跡形もなく殺しておくべきだったな」

淡々と。


エディルは、笑う。

「誰が、野蛮だ」


一歩、踏み出す。

「仲間だの何だの――」

「お前が語ってんじゃねえ!!」

空気が、弾ける。


次の瞬間。

二人は、同時に動いた。

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