俺がお前を守るから
「美味しかった!ご馳走でした!」
エディルは満面の笑みで食事を終えた。
「どういたしまして」
ユキノがそう答えると、エディルは満足そうに腹をさする。
「俺、葉っぱとか大嫌いだけど……なんかこれから食べれそうな気がする」
「二十超えた大人が言うこと?」
鋭いツッコミに、エディルはしょんぼりと肩を落とした。
だが次の瞬間、ユキノの表情が変わる。
さっきまでの柔らかい空気が消え、部屋に静かな緊張が広がった。
「私、勇者一行に復讐する」
その言葉は重く、はっきりと響いた。
エディルは少し目を伏せる。
「……許せないよな」
同じだった。
命を奪われ、居場所を壊され、何もかも奪われた怒り。
エディル自身も、まったく同じ経験をしている。
だがユキノは続けた。
「だから、ここで本当に今度こそお別れ」
「……なんで」
思わずエディルは聞き返した。
「これは私の問題。浮浪者を巻き込むわけにはいかないから」
「職なし、金なし、家なしも忘れてるぞ」
いつもの軽口。
だが、どこか力がない。
“別れ”という言葉が、現実として迫ってきていた。
ユキノは続ける。
「明日の朝、山を降りて……そこでお別れだね」
「お墓……ありがとう。本当に嬉しかった」
「……べつに」
エディルは目を逸らす。
ここで言うべきか。
自分も魔界を壊滅させられた、生き残りの魔族だと。
それを言えば、目的は同じになる。
一緒に戦う理由になる。
だが——
ユキノが魔族をどう思っているのか分からない。
恐ろしい存在だと思っているかもしれない。
軽蔑されるかもしれない。
そんな考えが頭を巡る。
結局、エディルは違う言葉を口にした。
「俺も行く」
「……え、なんで?」
「女一人だと心配だから。それに、戦いの場に安々と行かせるなんて俺の信条に反する」
「あんたの信条多くない?」
呆れた顔のユキノ。
だがエディルは気にせず続けた。
「俺がお前を守るから」
その言葉だけは、真っ直ぐだった。
ユキノの目をしっかり見て言う。
初めて会った時から、どこか惹かれていた。
それが愛なのかは分からない。
だが、男として守りたいと思った気持ちだけは本物だった。
「……何言ってんの」
ユキノは驚いたように呟く。
エディルは続けた。
「これマジ。絶対守る。死んでも守る」
「だから一緒にいたい」
お調子者とは思えない、まっすぐな言葉だった。
ユキノは少し困ったように笑う。
「そこまで言うなら……命かけてよね?」
「当たり前だろ!男に二言はあるか!」
「信条多すぎなのに?」
「それはいいの。セーフ」
二人は思わず笑った。
さっきまでの重い空気が、少しだけ和らぐ。
そしてユキノは、ふと思い出したように言った。
「そういえばさ」
「なんだ?」
ユキノはエディルをじっと見る。
「あんたって、何者なの?」




