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この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
新たな復讐
23/78

大丈夫だから

ユキノは村で亡骸となった両親を見つけ、そっと手を取り、静かに別れの挨拶をした。

先ほどの光景を思い出す。


エディルは、まだ一心不乱に墓穴を掘り続けていた。

ユキノはしばらくその様子を見ていたが、あまりにもエディルが辛そうだったため声をかける。

「……私も手伝うよ」

「いい。お前は皆にさよならって言え」

そう言って、エディルは断った。

ユキノが背を向けて歩き出そうとしたとき、エディルがふと思い出したように口を開く。

「……そういやここって、何人くらいいるの?」

「確か、五十人前後かな」

一瞬、エディルはギョッとしたような顔をした。

だがすぐに、

「わかった」

とだけ言い、文句一つ言わずに作業を再開した。


(なんで、あんなに必死に……)

出会って間もない二人。

成り行きでついてきただけの村。

縁もゆかりもない、浮浪者のような男。

(……ありがとう)

理由はユキノにもわからない。

それでも感謝の気持ちを胸に、両親、友人、そして村の人々を見つけては、ひとりずつ別れの言葉をかけていった。



やがて、辺りはすっかり闇夜に染まる。

寒さも依然として厳しく、空気は凍りつくようだった。

「……できた」

エディルが小さく呟く。

「埋葬しないとな」

そう言うと、先ほど掘ったばかりだというのに、再び動き出す。

村人たちの亡骸を抱え、墓へと運び始めた。

それを見たユキノは慌てて声をかける。

「待って!もう夜中だよ?ちょっと休憩して、朝にしようよ」

ユキノは必死に止める。

エディルは先ほどから必死の形相で地面を掘り続け、全身は泥まみれ。

汗が滴り落ち、両手には潰れた血豆の跡が残り、血もにじんでいた。

絶対に痛いはずだった。


それでもエディルは構わず、

「大丈夫だから」

それだけ言って、黙々と埋葬を続けた。



――そして。

朝日が昇る頃。

すべての埋葬が終わった。

エディルは肩で息をしている。

本当に体力の限界が近いようだった。

「……本当にありがとう」

「別にいいって」

エディルはぶっきらぼうに答える。

二人は墓の前で手を合わせ、しばらく黙祷した。


やがて、エディルが沈黙を破る。

「だー!もう寒い!死ぬ!死にます!」

地面に転がり、子供のように駄々をこね始めた。

その様子を見て、ユキノは思わず笑う。

「私の家、所々ボロボロになったけど、まだ一応住める状態だったよ」

エディルはすぐに起き上がる。

「まじっすか?行きます」

一瞬で上機嫌になった。


少し歩き、ユキノの家へ。

東洋風の平屋の家屋だった。

襲撃は受けていたが、村の奥にあったため、奇跡的に被害は少なく済んでいた。

「なんか2人で家って‥新婚さんみたいだね」

「黙らないと追い出すよ?」

「二度と喋りません」

そう言って室内に入る。

だがエディルは極度の疲労のため、

「……ちょっと寝させて」

そのまま室内に倒れ込んでしまった。

ユキノは驚く。

だがその寝顔は、安心した子供のように無防備で、どこか優しい表情だった。

「……」

エディルは完全に眠っている。

その寝顔を見つめながら、ユキノはそっと横にしてやろうと思ったのだった。

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