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この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
新たな復讐
20/78

職なし金なし家もなし

王都兵たちは、突然の黒炎に呆然としていた。


だがエディルは構わず続ける。

「ほんと困ったよ」

肩をすくめる。


「元から職無し、金無しなのにさ」

軽く笑いながら言う。


「家も、帰る場所もなくなるからさぁ」


――その瞬間。

エディルの目つきが変わった。

先ほどまでの軽薄さは消え、

そこにあるのは剥き出しの憎悪。


「……なんで村を壊した」

低い声。

「なんで人を殺した」


王都兵の一人が答える。

「勇者一行の命だから」と。


エディルの眉がわずかに動く。

一歩、踏み出す。

「……だから」

視線が鋭くなる。

「なんでこの村にした」


兵士は淡々と答えた。

「この村は美人が多いと聞いた」

「だからここで婚約者を選びたいそうだ」


エディルは首を傾げる。

「なんでそいつが直接来ないの?」


「知らない。ただ命令を遂行するだけだ」

「この村で一番美しい女を連れてこい」

それだけだと、兵士は言い切った。


エディルは、小さくため息をつく。

「んで、逃げられて振られたからって」

焼けた村を見渡す。

「こんなことする必要ある?」


兵士は迷いなく、

「命令を果たすまでだ」


沈黙。

そして――

エディルは、ゆっくりと笑った。


「ほんと……」

「クズな奴らばっかだなぁ!!」


叫びと同時に地面を蹴る。

突撃。

魔力は戻りきっていない。

全盛期には遠く及ばない。


それでも。

胸の奥から湧き上がる感情。

嫌悪。

苛立ち。

屈辱。


そして。

また繰り返される、同じ悲劇。


(ふざけやがって)


黒炎のブレス。

さらに拳に炎を纏わせ、近接攻撃を叩き込む。

王都兵が吹き飛ぶ。


だが。

身体は限界に近い。

痛みも、疲労も容赦なく襲ってくる。

汗が滴る。


(なんで魔力戻んねぇ……)


焦り。

それでも、身体は動く。

なぜかは分からない。

守りたいと思ったからか。

答えは出ない。

それでもエディルは戦い続けた。


――数分後。

多くの王都兵は地面に倒れていた。

荒い呼吸。


だが。

まだ、二人残っている。

明らかに格が違う。


鎧。

佇まい。

空気が変わる。

エディルは静かに構えた。


「お前は何者だ」

問われる。


吐き捨てるように答える。

「だから……」

「職なし、金なし、家なしの浮浪者だっつってんだろ!」


再び突撃。


だが――

弾かれる。

拳が通らない。


「……痛えなおい」

兵士が鼻で笑う。

雑兵とは違う、と。

王都兵第三部隊隊長。

その名乗り。


エディルは肩をすくめる。

「はぁ?」

一歩踏み込む。


「女に対して多勢に無勢」

目を細める。


「女一人口説き落とす勇気もねえ」

低く、吐き捨てる。


「……さぞ情けねえ男共なんだなぁ」

「王都も勇者もよぉ!」


空気が張り詰める。

兵士の目が怒りに染まる。

愚弄するなと怒鳴る声。

再び戦いが始まる。


「絶対処刑だ!」


叫びに対し、エディルは笑う。

「うっせえよこの粗チンが!」

「そんなだから女一人まともに抱けねえんだろ!」


煽りながら拳を振るう。

だが押される。

剣が振り下ろされる。


刃が届く――


その瞬間。

氷の壁が出現した。

剣が弾かれる。


振り返る。

ユキノが立っていた。


「……わたしも、戦える」


その声に。

エディルは一瞬で泣き崩れる。


「わーん怖かったー!」

「守ってくださいお願いします痛いんです!」


ユキノは呆れる。

「さっきまでカッコよかったのにダサ」


エディルは立ち上がる。

「……まあ冗談はここまで」

拳に黒炎を纏わせる。

「やるぞユキノ!」


ユキノも刀を構える。

「当然」


同時に動く。

エディルの拳。

ユキノの氷。

連携。


王都兵が押され始める。

焦る兵士。


だが。

二人も限界に近い。

それでも。

エディルは拳を握る。

最後の力を振り絞り――

叫んだ。


「……これが愛の力なんだよ!!」


渾身の一撃。

黒炎の拳が鎧を砕く。

隙。

ユキノが踏み込む。

鞘付きの刀を振り下ろす。


鈍い音。

兵士は崩れ落ちた。


静寂。

エディルが息を吐く。

「……やったな」


ユキノは呆れる。

「ってか愛の力ってなに?」


エディルは胸を張る。

「愛は愛です」

「馬鹿じゃないの?」


さっきまで命を懸けていたとは思えない。

二人は、小さく笑った。

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