同じ悪夢
三日間。
ひたすら歩き。
時には行商人の荷車に乗せてもらいながら。
ようやく――
アルディス山の麓へと辿り着いた。
麓ですでに、うっすらと雪が積もっている。
見上げれば。
山は一面、銀世界だった。
「はぁ……はぁ……」
エディルがその場に崩れ落ちる。
「やっと……着いた……しぬ……」
「貧弱すぎない?」
ユキノが呆れた目で見下ろす。
エディルは山を見上げる。
「……ってか村なくない?」
「ここから登るんだけど」
「まだあんの?!」
絶望の声。
だがユキノは気にせず歩き出す。
「ちょ、お待ちになってー!」
情けない声を上げながら追いかける。
しばらく登った頃。
ユキノが振り返る。
「ってか、いつまでついてくるの?」
「え?」
エディルは真顔で答える。
「お前の親に挨拶しないと」
一拍。
「兼ねてより交際させていただいておりますって」
「交際してねえだろ」
「じゃあしよ」
「やだ」
即答。
ユキノはそのまま登っていく。
そして。
ぽつりと。
「……私、彼氏いるんだけど」
エディルが固まる。
だが。
「大丈夫!」
すぐに復活。
「彼氏いても気にしないから!」
「ダメに決まってるでしょ!」
本気のツッコミ。
そんなやり取りをしながら。
二人はさらに登っていく。
その時だった。
エディルが、ふと立ち止まる。
「……なんか臭くない?」
「アンタじゃないの?」
「おい」
エディルは顔をしかめる。
「違う。なんか……焦げた匂い」
ユキノは首をかしげる。
「そう?」
エディルは、もう一度息を吸う。
焦げた匂い。
それに混じる――
血の匂い。
人が焼ける匂い。
エディルの表情が変わる。
(……この匂い)
(あの時の)
魔界。
焼けた城。
焦げた死体。
記憶が蘇る。
エディルはユキノを見る。
「……お前の村」
低く問う。
「ここ登れば着く?」
「うん。ずっとまっすぐ」
その言葉を聞いた瞬間。
エディルは走り出した。
「え、待って!」
ユキノも慌てて追いかける。
山頂付近。
エディルは一足先に辿り着く。
そこにあったのは。
小さな村。
本来なら。
温かく。
人が暮らす場所。
東洋風の家々が並ぶ、穏やかな集落。
――の、はずだった。
だが。
村は燃えていた。
炎。
煙。
崩れた家々。
焼け落ちる音。
その中心で。
一人の青年が戦っていた。
全身血まみれ。
それでも。
巨大なハンマーを振るい。
氷の魔法で、必死に抗う。
そこへ。
ユキノが追いつく。
「……なにこれ」
目の前の光景に、言葉を失う。
そして。
青年に気づく。
「ハル――」
その瞬間。
背後から。
剣が突き刺さる。
鈍い音。
青年の身体が揺れる。
ハンマーが落ちる。
力なく。
そのまま。
ゆっくりと。
倒れ込んだ。




