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この世界はなんかおかしい  作者: 16時間
ニート人間界へ降り立つ
11/78

嬉しくないの?

先ほどまで笑顔で感謝していた女の表情は、一瞬で変わった。


無表情。


冷めた目。


だが。

そんなことはお構いなしに、エディルは続ける。


「いやー、ほんとお姉さん可愛いってマジで」

軽く身を乗り出す。


「これ、一目惚れってやつ?」

さらに距離を詰める。


「本当に運命感じるんだけど」

にやっと笑う。


「俺さ、今まで運命とか信じないタイプだったんだけど」

少し声を落とす。


「お姉さん見てたら、それもアリかなって思えてきた」

一拍。

「……良かったら、俺と付き合――」


最高の決め顔。

低い声。

完璧なタイミング。


だが。

言い切る前に――

ドゴッ。


顔面に衝撃。

女の拳が、容赦なくめり込んだ。


「ってぇなぁ!?」

思わず顔を押さえる。


女は冷めた目のまま言い放つ。

「黙って聞いてれば、なんですかそれ」

一歩も引かない。


「ブスなら助けない?」

眉がわずかに動く。


「その上、いきなり告白?」

そして。

「あなた、本当に最低ですね」


エディルは固まる。

自分の容姿には、絶対の自信があった。


ボサボサの髪も計算のうち。

気怠い雰囲気。

無駄のない体。

そして顔。

生意気な目つき。

それすら魅力と言われてきた。


今まで。

ナンパして断られたことはない。

(その後振られることはあるが)


だが。

目の前の女は違う。

落ちない。

それどころか――殴ってきた。


「……嬉しくないの?」

思わず聞く。


「なにが?」

即答。


「俺、イケメンだし」

「は?」

「今まで最初から邪険に扱われたことないんだけどなぁ……」


女は大きくため息をつく。

「今、はっきりわかりました」


冷たく。

「あなたは最低です」

くるりと背を向ける。

「助けてくれたことには感謝します。さようなら」

そのまま歩き出す。


エディルは呆然と立ち尽くす。


だが。

じわじわと。

怒りが込み上げてくる。


「おい!」

声を張る。


「ふざけんな!」

一歩踏み出す。

「助けてやったのにそれはないだろ!」


女は振り返らない。

「うるさいな、このろくでなし浮浪者!」


「うるせえ!」

即座に言い返す。


「誰がろくでなしだ!」

「命の恩人だぞ!」

「こんな人だと知ってたら助けなんて求めなかった!」

「黙って聞いてりゃこのクソアマ!」

一気にヒートアップ。


「お前なんか助けなければよかった!」

指をさす。

「ちょっと顔が可愛くて乳がデカいからって調子のんなボケ!」


女が振り返る。

「どこ見てんの、この色ボケ!!」


静かな森。

その中で。

二人の怒鳴り声だけが響く。

ギャーギャーと。

止まらない。


そのまま。

大喧嘩が始まった。

その声は、森の奥までこだましていた。

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