1月3日(木)
原案をぼやいた人:蒼風 雨静 書いた人;碧 銀魚
この世界では、一つの民族につき、一人の守り神がついているそうだ。
アグレスの民にとっての守り神がフォーレイであり、ドラゴンたちにとっての守り神がゲックであるという。僕には他のドラゴンと区別がつかなったが、確かにフォーレイも大仰な翼がなければ、人間と区別がつかないかもしれない。
かつて、それぞれの民族は領土や物資を求め、争いを繰り返していた。
それは、僕が生きていた現世の歴史も変わらない。
だが、この世界の守り神たちは、自分を信仰する人々が死んでいくのが悲しんだ。
なので、守り神同士で話し合い、民族間で争いをしないよう、取り決めをしたそうだ。
だが、取り決めに従わない守り神がいた。
それがフォーレイだ。
彼女は取り決めの後も、他民族や他国への攻撃をやめず、時には今回のように直接手を下すこともあった。
ここ数十年は、この島にアグレスの民族ごと上陸し、ゲックの民族であるドラゴンを蹴散らしながら、国を大きくしてきた。
しかし、ドラゴンにはスレイトがいたため、流石のフォーレイといえども、簡単には攻略ができず、事態は一進一退のまま、数十年膠着状態となっていた。
だが先日、ついにドラゴンは国王と女王を倒し、一気にアグレスを弱体化させることに成功。ついにはゲック本人が最後の王族直系であるエレーナを襲撃するに至った。
これに焦ったフォーレイは、守り神の間で禁術とされる方法を用いた。
それは、この世界より文明が進んだ異世界から人間を召喚し、送りこむという方法だった。
それにたまたま選ばれたのが、藤嶺麗人……勇者レイトだったというわけだ。
しかもフォーレイは、僕に戦闘力というスキルまで与え、何も知らない僕はゲックを撃退してエレーナを助けてしまった。
そして、勢いそのままに、スレイトまでも倒してしまい、フォーレイはエレーナを使って、一気に畳みこもうとしている……というのが、今の状況だそうだ。
だが、ここで疑問が浮かんだ。
フォーレイは、スレイトを倒した僕達パーティーを圧倒するほどの力を持っている。ならば、単純に考えると、フォーレイはスレイトより強いから、わざわざリスクを冒して僕を召喚したり、パーティーを作って討伐に行くように仕向けなくても、自分で倒せたのではないかと思ったのだ。
だが、どうやら事はそんなに単純ではないらしい。
フォーレイは守り神なので、物理的な実体を持っていないため、強靭な肉体を持つスレイトと戦うとなると、かなり相性が悪かったらしい。
具体的には、フォーレイが得意とする魔法の類がスレイトには殆ど利かず、物理攻撃を仕掛けるには、脆弱な人間であるアグレス民をぶつけるしかない。尚且つ、フォーレイの強引なやり方は他の民族の守り神はよく思っておらず、協力してくれる者はいなかった。
「この苦境を脱するには、事情を知らない屈強な者を呼び出し、我等にぶつけるしかなかったのだ。」
ゲックにそう言われ、僕は自らの愚かさを呪った。
アグレスについて教えてもらったとき、この国の歴史に関することが、まるまる抜け落ちていた。アグレスの侵略と侵攻の歴史が明るみになってしまうからだ。
せめて、そこの違和感に気づくべきだった。
だが、それを僕より後悔していたのは、ローレンだった。
彼女はアグレスで生まれた、アグレスの民だ。
だから、アグレスの歴史についてはよく知っていた。わかっていて、僕へのレクチャーでは、隠していたのだ。
「ごめんなさい……」
ローレンは涙を流した。
この国で生まれ育った彼女にとって、自分たちの民族を守り、発展していくための侵略や侵攻は当たり前のことで、それを疑問に思ったことはなかったそうだ。
だが、他民族であるクローディアや、日本仕込みの平和ボケした思想を持つ僕と接していて、次第に感化されていったそうで、密かに苦悩していたらしい。
「でも最後の反抗は、レイトが姫様にとられちゃうと思ったら、居ても立ってもいられなくなっただけ。アグレスの女は、本当にダメだね。」
えっ、となった僕の隣で、クローディアがその十倍驚愕していた。
話がそれたが、結局、両者の均衡が破られた今、僕たちパーティーはどちらかに加担するしか、道が残されていなかった。
フォーレイの元に戻って、アグレスの侵略に手を貸すか。
ここに残って、フォーレイと対峙するか。
当然、僕たちの心は決まっていた。




