↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/6

翠による尋問タイム

 魅墨と別れた後は何事もなく帰宅し、食事を食べ終えて部屋に戻る。そして、肘掛け椅子に腰掛けて一息ついた。


 普段であればここからがくつろぎタイムなのだが、今日はそれは許されないらしい。ノックもなく翠が部屋に入室してきた。


 今日の翠はスポーツブランドのジャージ。こいつはいくつ、寝間着を持ってるのだろう。


「お兄、正座」


 翠は入室するや否や硬いフローリングを指差して、正座を要求した。


 この野郎、兄であるこの俺を舐めてやがるな。思い知らせてやろうか。


「早く」


「はい」


 翠に催促され、俺はすごすごとフローリングに正座する。


 思い知らせる? ははは、ちょっと頭をよぎっただけ。翠怖いもん、無理無理。


「お兄どういう事? 黄島先生に聞いたけど、明日から土方さんと服装指導するの?」


 翠は腕を組みながら俺を見下ろしていきなり本題に入った。


 不機嫌そうな態度だが、何が気に食わないのだろう。


「ああ、そのつもりだけど」


「どうして土方さんなの?」


「んー、まあ全然話した事ないからな。親睦深める為にも俺がしたいなと思ってお願いしたんだ」


 翠の質問に、黄島先生に話した表向きの理由を説明する。裏向きは魅墨抑制だけど、そんな事は言えない。


 翠は俺の説明を聞くと、釈然としないような表情で目を瞑り何やら考え込んでいるご様子。


 納得してもらえた? してもらえない?


「……本当にそれだけ?」


「それだけとは?」


 翠の質問の意図が分からず、おうむ返しに質問を返す。


 何を一体聞きたいのだろう。


「その、えーと、土方さんの事が気になってるとか、その、付き合ってるとか」


「……は?」


 翠はもじもじしながら、人差し指同士をつんつんとつつきあって、小さな声で質問してきた。


 どうやら俺と魅墨が付き合ってると思ってたらしい。


 成る程、急に仲良くなったように見えたからそう思ったのか。


 おそらく、カップルになったから魅墨とペアになったんだろうと。そんないい加減な理由で仕事をするなと翠は怒っているのだろう。


 成る程、翠の怒っている理由がようやく理解出来た。たしかにそう思ってしまったら俺でも怒る。


 なんだかんだで翠も支援部の部員として仕事に対して真摯に考えてくれているようだ。お兄ちゃんは嬉しい。


 よし、それなら誤解を解いておかないとな。


「俺は魅墨とは付き合ってない。あくまで俺と魅墨はただの友人関係だ」


「……本当?」


「ああ、誓って本当だ。嘘だったら針千本飲まされても構わない」


「いやいや、そんなグロいことしないから。せめて水二リットル一気飲みくらいしかさせないよ」


 水二リットルもたいがいグロくなりますよ、翠さん。マーライオンしますよ。


 俺の冗談の罰提案に対して、翠から冗談とも本気とも取れる罰提案がなされる。コンビニで買えばすぐ出来るレベルの罰だけにタチが悪い。


 い、いや、でも本当になにもないからさせられる事はないんだけど。


「まあ、大丈夫だ。そんな事があれば、罰は甘んじて受け入れるよ」


 まあ、いい加減な仕事をしてるわけではないから俺は胸を張っていればいい。


 俺は魅墨と付き合っていたら罰を受け入れる事を伝えると、翠は目を丸くした。


「べ、別にそこまでは求めてなかったんだけど。……まあいっか。聞きたい事もわかったし」


「ああ。誓って、真面目に仕事してるだけだから」


「? そ、そう? わかった」


 なんだか翠の歯切れが悪いが一応納得はしてもらえたっぽい。


 俺の真摯さが伝わったようだ。


「明日から、お兄と土方さんでの服装指導だけど、登校時間はどうなるの?」


「一応は今日と同じ時間で考えてるかな」


「ふーん、そう。わかった。ありがとうね、お兄」


 翠は満足気に頷いて礼を述べると、俺の部屋を後にした。


 ……足を崩していいのかな? いい加減痺れてきた。


 足を崩してもいいという許可は出なかったものの、フローリング正座はもう限界。


 俺は足を崩すや否や、痺れる痛みにそのままフローリングに倒れ込んだ。


 誤解を招かないようにしないとな。真面目に仕事してても誤解一つで不真面目だと思われてしまう。


 心に強く誓うと同時にスマホからラインの通知音が鳴った。


 ……誰から来たかは分からないけど絶対魅墨だ。


 分からないのに分かるという一行足らずで矛盾するが、俺はポケットからスマホを取り出してトーク画面を開く。


 案の定、魅墨からの通知だった。


【今日は送ってくれてありがとう。とても嬉しかった。やっぱり良いもんだな、蒼司と過ごす時間というものは。私にとってはかけがえのない時間のように感じるよ。それに君が離れる訳がないと言い切ってくれた事、すごく嬉しく思う。どうか、これからも親友として仲良くしてくれ。あと、明日も一緒に帰れると嬉しいな。なんて……迷惑か?】


 相変わらずの長文。


 こんな文章見られたら誤解を招いてしまいそうだ。ついさっき誤解を招かないようにしようと誓ったばかりなのに。


 いや、でもまあ親友だからな。


 親友という言葉を免罪符に置き換えて、問題ないと正当化する。


 親友だからラインもするし、親友だから一緒にも帰るよな。


【俺も楽しかった。あと、明日も送ってやるよ。親友だからな】


 だから俺は、明日も親友と帰ることを約束して返信を送った。

面白ければ

感想レビューブクマ

よろしくお願いします


評価は下のスクロールしたところにありますので、面白ければぜひお願いします。


また、元作品になります。

よかったら読んでみてください

妹が兄を好きになってもいいと掲示板に書いてから、妹の様子がちょっとおかしいんだが

https://ncode.syosetu.com/n4803fl/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。