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魅墨の友達が少ない理由

 夕日が照らす帰り道。俺は家とは違う方向に向かって歩いていた。


 理由は単純。魅墨の帰り道が途中までは一緒だったのだが、途中から分かれてしまったからだ。


 別にそこで分かれても良かったんだけど、魅墨はこれでも女子だからな。あとはとりあえず親睦を深めておいて、魅墨の事を知っておきたい。


 なんならやんわりラインは控えめにして欲しい事も伝えておきたい。


「な、なあ、蒼司本当に送ってもらってもいいのか? 全然私一人でも帰れるぞ?」


「ん? ああ、俺は別に構わないけど。もしかして迷惑か?」


「い、いやいやいやいや、迷惑なものか! むしろ願ったり叶ったりだ。こうやって親友と一緒に帰れるなんて私にとっては憧れの時間だからな」


「オーバーだな。真白と帰ったりしなかったのか?」


「オーバーなものか。みんな私を怖がるし、唯一生徒会仲間の真白は家が真反対だからな。誰かと下校するなんて小学生の集団登校以来だ」


 なにやら魅墨の闇の扉を開いてしまったようで、魅墨は遠い目をして悲しそうに笑った。


 まあ確かに今でこそ魅墨を知ったから俺も話せているが、最初の印象は怖かったから魅墨のクラスメイトの気持ちもわかる。


 話してみたら、まあ距離感がおかしいけどフランクで良い奴なんだけどなあ。


「まずは笑顔の練習とかはどうだ? 俺だって最初は魅墨怖かったからな」


「なっ!? そ、蒼司、そんなに私の顔怖いのか?」


「怖いというか、怒ってるように見えるんだよ。俺と話してる時みたいに笑ってみたらどうだ?」


「だ、だって、蒼司と話してたら楽しいから笑ってるんだぞ。急に笑えと言われてもどう笑ったらいいかわからん」


 魅墨を笑わせようと提案すると、魅墨は恥ずかしそうに笑えてるのは俺と話せてるからと言う。


 そんな事を言われてしまって、俺の方がちょっぴり恥ずかしくなってしまった。


「だ、だったら口調を直してみるとかは? 男勝りだからちょっと敬遠されてるのかも」


「く、口調か。難しいな。家が男ばかりで母さんも男勝りだから……」


「うーん、難しいか」


 魅墨を変える事で魅墨の友達を増やしてみようと思ったが、提案するすべてが魅墨にしっくりこないらしい。


 どうしたものか。


「ほ、本当はなんとかしたいんだ。口調の事も、わかってるんだ。だけど、自分の変え方がわからなくて」


「そうなのか。だったら、俺を頼っていいんだぞ。そんな時の為の親友だしな。それに、俺は支援部だ。魅墨が変わる支援をするぞ?」


 まあ、これで魅墨が変わってくれれば魅墨に友達が増えるかもしれない。


 本人が変わりたいというのなら、協力は惜しむつもりもない。俺がその事を伝えると、魅墨は目を見開いて、顔を真っ赤にして俺を見つめた。


「ほんっと、蒼司は良い奴だな。私はお前と親友になれて幸せだ」


「どわっ!? ヘッドロックはするな」


 顔が赤かったのは夕日のけいだったらしい。魅墨は満面の笑みで俺の顔を小脇に抱えた。


 あまりの不意打ちに驚きを隠せない。あと、俺の頬に若干柔らかな感覚があるのは考えない方がいいだろう。


 くそ、魅墨のやつ、男勝りの癖に出るとこはちゃんと出てるじゃないか。ほんとありがとう。……じゃなくて!


「魅墨離せー!」


「おわっ! むう、蒼司なかなか強引だなあ」


 俺は魅墨を離して、乱れたカッターシャツの襟を正した。


 魅墨は不満そうにブーたれていたが、その口元は嬉しそうに口角を上げていた。


「あ、ここが私の家なんだ」


 じゃれあいながら歩いている間に、魅墨の家にたどり着いたらしい。


 魅墨が自宅と指差したその家は、お世辞抜きに立派な日本家屋だった。


 庭には松の木とか見えるし、庭園と言うのだろうか、植木が綺麗に手入れされている。


 俺は唖然として見つめていると、魅墨は少し不安そうな顔をしていた。


「そ、その、ジロジロ見ないでくれ。みんな同じように反応するんだ。それで、だんだんと疎遠になっていくんだ」


「な、成る程な」


 魅墨の怖い顔を乗り越えるのを第一ステージとするのなら、この家は第二ステージと言うべきか。


 魅墨と仲良くなるハードルが高すぎるのに、家の威圧感に驚いて躊躇ってしまう人も少なからずいたのだろう。


 魅墨が友達を作るにはいささかハードルは高そうだ。


「そ、蒼司もだんだんと話せなくなってしまうのか?」


 魅墨は今にも泣きそうな顔で俺を見つめる。不安で不安で仕方ないのだろう。


 なんとなく、魅墨という人間がわかった。ただただこいつは寂しいんだ。


 距離感がおかしいのも、ラインが常識外れなのも、寂しいからなんだ。


 ……指摘して、控えてもらおうと思ったけど知れば知る程言いにくくなる。


 だったら俺が。親友の俺が魅墨を変えてやろう。


「バーカ、そんな事あるか。この程度でお前の親友はやめてやらねえよ」


「あいたっ」


 俺は不安そうな魅墨のおでこにデコピンを放った。


 魅墨は声を上げて、おでこを嬉しそうにさすった。


「……えへへ。ありがとうな、蒼司。お前と出会えて良かったよ。明日からよろしく頼むぞ。じゃあな」


「ああ。遅刻すんなよ。遅れたらまたデコピンだからな」


 ニコニコと笑顔で家へと入っていく魅墨の背中に、俺は手を振ってくるりと背中を向ける。


 さてと、帰るってライン送っておくか。


 俺はスマホを取り出して母さんのトーク画面を開こうとする。だが、通知が一件来ているみたいで、先にそちらを開いた。


 どうやら、翠のトークのようだ。一体なんだ?


【黄島先生から聞いたけど、どういう事? ちょっと、家で話あるから】


 文面からひしひしと伝わる翠の怒り。何を怒っているのか、何を黄島先生が言ったのかはわからない。


 でも、一気に帰りたい気持ちは薄れてしまった。


 なあ、魅墨。親友だったら泊めてくれないか。なんて、魅墨よりも距離感がおかしい事を考えながら、わかりました。と翠に返信を送った。


 ……はあ、憂鬱だ。



面白ければ

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よろしくお願いします


評価は下のスクロールしたところにありますので、面白ければぜひお願いします。


また、元作品になります。

よかったら読んでみてください

妹が兄を好きになってもいいと掲示板に書いてから、妹の様子がちょっとおかしいんだが

https://ncode.syosetu.com/n4803fl/

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