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恋人捜しは騎士団で  作者: 如月美樹
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 そこでちょうど音楽や鳴り止んだので、セブランは自分の胸に手を当て礼を取った。

 花純もドレスをつまみ腰を落とす。

 顔を上げたセブランは満面の笑みを浮かべ、手を差し出してきた。

 花純がその手を取ると、カイトたちの方へと足先を向けた。どうやら送り届けてもらえるらしい。

「ありがとう、心が軽くなった」

「いいえ」

 皆の元へ着くと、セブランは腰を折って取っていた花純の手の指先にくちづける。

 皆が息を飲む音が聞こえて、花純も大いに焦った。

「で、殿下・・・・・・っ!」

「また逢いたい」

 そう言われても、なかなか庶民である花純がこの国の王子様に会うことも出来ないだろう。

「・・・・・・いつかお会い出来たらいいですね」

 花純は曖昧な言葉で応えた。

「じゃあ、また」

 セブランは王族たちが座る席へと戻って行く。

 それを見送っていると、カイトに肘を取られ引き寄せられた。

「・・・・・・・・・」

 そんな非難のこもった目で見られても、こちらも困る。

 今度は反対側の肘を掴まれた。

 掴んだ相手はヴィートだった。

「・・・殿下と何を話していたのだ? あんなに声を上げて笑った殿下は、久しぶりに見た」

 どうやらセブランとヴィートは同じ年らしいので、面識があるようだ。それともそれ以上に親しいのだろうか?

 花純は解からない。けれど、そう突っ込んで聞きたい話でもないので放置することにした。

 でもセブランと話した内容は彼個人のことなので、たとえヴィートといえど話す気はなかった。

「普通の会話ですよ。多分庶民の話が面白かったのではないですか?」

「・・・・・・・・・本当か?」

 何をそんなにいぶかしんでいるのか? それとも、そんなにセブランのことが気になるのか?

 責めるような瞳のヴィートに、花純も少しだけ不機嫌になる。

「そんなに疑うのなら、殿下に直接お聞きして下さい」

「いや、疑っている訳では・・・・・・」

 そう花純に告げられて、ヴィート自身も疑問に思った。

 何故こんなに気になるのだ? 花純のことは、自分が庇護していると思っているからだろうか?

 皆は責任感の強い真面目な男と評価してくれるが、そう自分では思わない。

 興味のないものには、誰が何と言おうと手を貸すことはしない。

 ということは、花純のことは気に入っていると言ってもいいのだろうか?

 小さくて、可愛くて・・・。

 妹のような・・・・・・?

 いや、そうじゃない。妹なんて思っていない。

 では・・・・・・・・・。

(もしかして、俺は・・・・・・・・・。カスミのことを)

 そう考えた途端、心臓の鼓動が激しく鳴り響いた。

 自分は花純に、恋しているのか?

 カッと顔が熱くなるのが解かった。

 ヴィートはさっと花純の肘から手を話し、口元を手で覆った。

 花純の怪訝そうな瞳に、視線を避けるように逸らす。

 見ていられない。これ以上見たいたら、自分はどうにかなってしまう。

 花純に背を向けると、いつの間にかフラットが側にきていた。

「ようやく気付いた?」

 俺は解かっていたよ。とでも言いたいような顔に、鉄拳を喰らわせたい。にやにや笑う顔が、憎らしくて堪らない。

「・・・・・・あとで、顔を貸せ」

「嫌だよ」

「いいからっ」

 フレットの肩を逃げられないように掴む。

「怖いな~・・・」

 そっとヴィートは花純の側を離れた。

「貴女も随分罪作りじゃないの・・・・・・」

 呆れたように、アルジネットがそう呟いた。

 ヴィートの気持ちがすべて顔に出ていて、一層清々しいほどだった。

「え・・・? 何が?」

 解かってないのが、彼女たる所以か。

 天然ちゃんと言ってしまえば、可愛くていいが・・・。

「貴女はそれでいいわ」

 嫌味に見えないし、このままの方が面白そうだ。

 一連の行動を見て、壇上のヴィートの父レウォンはにやりと笑みを浮かべた。

 息子の初恋をした瞬間を見れた喜びに身を浸す。

 だがそれは一瞬のこと。

 今の自分は職務の真っ最中だ。

 王族様方の警護が今の自分の使命。

 気を引き締め直し、レウォンは周囲を警戒し視線を会場内へと流した。

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