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恋人捜しは騎士団で  作者: 如月美樹
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 寮に戻った花純たちは、翌日には普通に学園へと通学した。

 今日は先日行った試験の結果発表だ。はっきり言って、花純はもの凄く緊張していた。

 寮を出てからずっと手を繋いでいてくれたカイトも、花純を気遣って第三会議室まで付き合うと告げたほどだ。

 誓いを立ててからのカイトとの距離が、また近付いたように感じるのは花純の気のせいだろうか?

 接触率もその距離も、もの凄く縮んだ。

 直哉のこちらを見る白い目が、とても痛く感じる。

 カイトが早々に朝食の席でゴードン、オレグ、クリースに花純に誓いを立てたと報告した。三人の驚愕した顔に、これは直哉が言うように重大なことなのだと実感した。

 誓いはとても神聖なもので、法も左右するという。例えば誓いを立てた相手が傷つけられたり、貶められたりした場合、その相手を極端にいえば殺してしまっても罪が軽減されたり、無罪になる場合もあるらしい。

 誓い・・・怖い。

 と、花純が心の中で呟いたのも無理はない。

 カイトは笑顔で、騎士団に花純が入るのなら自分も騎士になると公言した。

 次男とはいえ、伯爵家の人間が身に危険が及ぶ騎士になってもいいのだろうか?

 そう疑問を投げかけると、貴族が騎士団に入ることはそう珍しいことではないらしい。

 貴族とは政務を担うか、もしくは軍部に入ることが多いという。そう定石とも言える暗黙のルールみたいなものがあるらしい。

 しかし一般人とは違い、やはりそこは日本でいうところのキャリア扱いになる。

 ヴェルビエ伯爵と言えば、国王のお声もかかるほどの名門貴族らしいので入って基礎を学べばすぐに役職がつくだろうと直哉は言っていた。

 何処の世界でも、やはりそういった融通的なものは存在するのだなと花純は思った。

 直哉と二人で第三会議室で待っていると、ケニーが颯爽と現れた。今日のケニーも、もの凄く格好いい。

 結果報告してくれるのが見知ったケニーでよかったと、花純は少しほっと息を吐いた。

「お見事です、カスミさん。さすがは知能が高いと名高い落ち人ですね。高等課にも入らなくてもよいほどの学力です」

 それを聞いて、肩の力が抜けた。

「この世界には慣れましたか?」

「まだ学園の外にはそう出ていないので、急に街で暮らさせるのも不安が残ります」

 直哉が花純を庇うような言葉を発した。

 花純本人もそう思っていたので、その言葉に相槌を打つように頷く。

 もう少しこの世界のことをゆっくり見詰めたいと思うのだ。

 日本へ帰ることには諦めがついた。それも最近のことなので、もっとゆっくりこの世界に馴染みたい。

「高等課へ入ることは可能ですか?」

「ええ。貴女が不安に思うのなら、いつまでいていただいても構いませんよ。資金は国が持ってくれます」

 国が持ってくれるのは有り難いけれど、いつまでも甘える訳にはいかないと思う。

 でもあと一年は学園にいたかった。

「では高等課に通わせて下さい」

「ええ、解かりました。ではナオヤさんと同じ教室へ入れるようにいたしましょう」

 それは大変助かる。

 花純はケニーの言葉に笑顔で大きく頷いた。

「教材などの用意もありますから、明日からお願いします。ナオヤさん、明日の朝、事務局までカスミさんと共に顔を出して下さい」

「はい」

 ケニーが言い終わったタイミングで、一時限目が終わるチャイムが鳴った。

「ではナオヤさんも、明日から普通通りに通って下さいね」

「はい」

 ケニーが会議室を出ると、直哉が笑顔で振り向いた。

「凄いよっ! 花純さん。満点に近いよ、これっ」

 答案用紙を見て、直哉が瞳を輝かせる。

 答えを埋められたとは思ったけど、ダコタ語の理解力に少々自身がなかったので不安だったのだ。

「明日から通う教室に寄ってから寮に帰ろうか?」

「うん」

 ちょっと緊張するけど、そんなことも言ってられない。実際に明日から通うことになるのだから。

 自分と花純の鞄を片手で持ち、直哉は花純と手を繋ぐ。

 これももはや当たり前みたいな感じになってしまったけど、止めた方がいいのではないだろうか? と今更ながらも、花純はそう思った。

 直哉もカイトも、もの凄く男前だ。クラスメートの女子からはきっと好かれているはず。それに凄く優しいし、紳士だし・・・。そんな男の子たちがモテない訳はない。

 こんなところ迂闊に見られたら、女子たちに恨まれはしないか?

 いろいろ考えている間にも、注目されていることには気付いていない花純だった。

「あっ! カスミさんっ」

 ちょうど休憩時間だった為、皆席を立って談笑していた。

 教室の入り口に現れた花純と直哉に気付いたオレグが、大きな声を発し手を振る。

「・・・皆も同じ教室なの?」

「そうだよ」

 よかった。これでいつもと同じような感じなる。

 花純を見たカイトが、素早くこちらにくる。

「ナオヤ、カスミさんの鞄」

 直哉が持つのも嫌なのか。

 直哉は苦笑を浮かべて、素直に花純の鞄をカイトに渡した。

 手もカイトに奪い取られる。

 花純は一連の動作を見て無言だ。

 カイトに手を引かれて奥へ行くと、ゴードンが声をかけた。

「どうだったの?」

「もう満点に近い」

 直哉が笑顔で応える。

「試験は難しくなかったの?」

 クリースの言葉に、花純はこてりと首を捻ってから声を出した。

「そうでもなかったと・・・・・・思う」

 曖昧な花純の応えに、皆がくすりと笑む。

「答案用紙、返してもらった? 見せてよ」

 カイトから鞄を受け取り、中から用紙を取り出す。

 皆が上から覗き込んで、無言になってしまった。

「これ・・・・・・難しいよ。カスミさん」

 クリースの声に、花純が『え?』と顔を上げる。

 花純には単純な計算問題だと思っていたのだけど。

「そ、そう?」

 ゴードンが他の教科も素早く見ると、皆へと回す。それぞれ一応眺め終えて、皆が重いため息を吐き出した。

「俺やナオヤ、カイトくらいなら解けるけど・・・。オレグやクリースには少し難しいかもな」

「俺ならギリギリいけるかなって・・・感じだと思う。オレグには絶対無理だけど」

「な、何だよっ!」

 不平を言うようにクリースがそう告げると、オレグが馬鹿にされたと感じたのか大きな声を出した。

 その顔をゴードンに抑えられて、花純を見た。

「これからどうするの?」

「高等課に通わせてもらうの。もう少しこの世界のこと学びたいし」

「その方がいい」

 カイトにも賛同してもらえた。

「じゃあ、明日からここに?」

 オレグの嬉しそうな声が、教室内に響いた。

「うん、よろしくね」

 皆が笑顔で花純を迎え入れた。

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