最終決戦前夜
すみません。土壇場でとんでもない新兵器が出来てしまったため予定の30%程度しか進んでいません。
終わる終わる詐欺ではないのですが、真田さんが悪いということで納得願います。
あと1・2話で終わります……たぶん
あきれたことに30時間後、バルーンは発射地点近傍に戻ってきていた。
北緯38度で地球を一周してきたのである。
日本の新潟沖で放たれた風船は山形・宮城を越え太平洋へ、アメリカはカリフォルニアからネバダ・ユタ・コロラド・カンザス・ミズーリ・イリノイ・インディアナ・ケンタッキー・ウェストバージニア・メリーランド・バージニア州を経て大西洋へ、そのまま欧州に入りポルトガル・スペイン・イタリア・ギリシア・トルコ・イラン・アフガニスタンを越えて中国の新彊ウイグル自治区・内モンゴル自治区を経由して楽浪軍管区から日本海に戻ってきた。
高度25000mからの詳細な衛星情報を上回る地図情報を満載のオマケつきである。
こうなった原因だが結論は誰もこれを人工物と認識できなかったということに尽きる。
直径2kmの風船が人工物と思われなかったというのもおかしな感じだが、そのほとんどが水素ガスでコア部分は直径30cm程度、しかも風船そのものが電波を吸収して赤外線に変える特質付き、つまりステルス。
強力な電波を浴びれば発熱はするものの、自然界の雲以下の電波反射のため薄い雲が成層圏を空気に乗って移動しているとレーダーでは判定される。
目視でも極限まで伸ばされた膜は透明そのもの、触りでもしないとわからないだろう。
その結果30時間かけて無事、戻ってきたのだが、原因の俺達とて最初から真田さんがつきっきりで追跡してなければ見失ったであろう難易度だったので各国のことを笑うことはできない。
「これは予想外に使い勝手のいい偵察兵器が出来てしまったな」
真田さんが苦笑しているが、1g1億円の樹脂とは言ってもここまで巨大にする必要性は無いので0.1gで直径100m程度にすれば1機1000万円で十分に採算が取れる。
多数飛ばして特定の解除キーの電波を拾ったときだけ、観測データを地上に送信するようにすれば安価な無人偵察機の出来上がりである。
内部にカメラを仕込むことで電池が切れるまで勝手に地表データを測定することが出来る。
唯一の問題は航路を自分で決められないことだが、それも数で補えば、駆動装置が要らない分、発見に手間取るステルス兵器の出来上がりである。
受信は基地でなくても船舶などでも解除キーで拾えるように設定すれば良い。
何より別に敵に利用されてもいいようにGPS利用で撮影しない地域をあらかじめこっちが指定できるのがすばらしい。
「長距離偵察機の必要性がなくなるかも知れません。」
アメリカはミサイル迎撃を耐えるためにSR-72ではマッハ6をたたき出しているが断熱圧縮による機体の高温化により自国の技術だけでは材料がまかなえず、日本の技術を必要とした。
その材料の一つがカーボンナノチューブ・コンポジットである。
カーボンナノチューブの特徴の一つに非常に高い伝熱性を上げることが出来る。
これを金属に混合することでエッジ部分の断熱圧縮による高温(原理はエコキュートと同じである)をプレート全体に伝わらせることで温度を下げ、放熱させやすくする。
その微妙な操作は金属結晶との兼ね合いもあって非常に繊細な製造工程を必要とする。
日本でも職人技が必要なレベルの操作であり量産性は悪い。
もっともそれより量産性(再現性?)が低いのが真田特製樹脂なのでなんともいえないが……
ともあれ、そんな、とんでもない副産物を生みながら第343増強航空隊の宇宙侵攻作戦は進んでいた。
ターキー01とアリス01にはコクピットにマネキンに良く似た人形が組み込まれていた。
このマネキン、ターキー01のほうが無茶苦茶高くついた。
理由は簡単で、アリス01のほうは赤外線発振装置を全面に組み込むだけなのに対しターキー01は実際に駆動させて圧感知させるために本当に動かす必要がある。
出力そのものは設定で倍率を上げられるが、どちらにしろ操作の基本はワイヤー操作である。
メイン出力のロータリーエンジンは宇宙に空気が無いため泣く泣く、超伝導モーターに置き換えたが、それ以外はチックに違和感を持たせないように従来装置が流用されたためである。
そして同時にこのマネキンを動かす特訓を俺とうららは受けていた。
専用のスーツを着込んで、カプセルの中で比重を調整した生理食塩水中に浮かんで、無重力に近い状態でVR環境でマネキンを動かすというもので、正直フワフワして頼りないことこの上ない作業を延々、続ける羽目になった。
うららのほうは普段とほとんど同じなのでまったく問題なかったらしいが、俺は人形乗りである。
筋肉が覚えていることが、ほとんどなので、踏ん張りが効かないのは、まったくもって困りきった。
そんなわけで訓練に合格するまで一月かかり、その間に打ち上げ用ロケットは準備が完了されていた。
その期間の間、俺は筋肉が落ちないように毎日アイソメトリックス運動を続けていたせいで、ほぼ全身の筋肉を訓練する手順を独自に考案できた。
(筋肉が減ったり増えたりすると体の比重が変わるため維持する必要があったのは弁明しておく)
チックについては予備のミサイルで、アリスについてはジェット燃料のほかに酸化剤を積み、ミサイルブースターを大増設することで対応することになった。
その姿は在りし日のスペースシャトルのように増加ロケットのほうが大きく、正に力技を感じさせるフォルムであった。
そして春もうららのある日宇宙侵攻作戦が始められた。
この作戦とはまったく無関係に米国PHA(Potentially Hazardous Asteroid) 協会が大騒ぎを起こしていた。
彗星ガス雲に突っ込んで速度がおそくなった小惑星アポフィスが速度低下した状態で地球に接近、再接近時には静止軌道衛星軌道より内側に侵入、従来では1.6%と試算されていた衝突確率が15%と再試算され危険性を示すトリノスケールは4から7に跳ね上がった。
この報告を受けた米国合衆国宇宙軍は正式に迎撃作戦を行う決定がなされた。
地上より発射された核ミサイルでアポフィスを吹き飛ばすもので、直径150m程度の小惑星であるアポフィスならば十分であろうと判断された。




