デススター
あと1・2話で終了予定です。
うららも呼ばれ、真田さん、佐藤顧問、俺、の4人で全自動麻雀卓を囲むように炬燵に座っていた。
「それで、さなだ、何の用事?今かなり忙しいんだけど。」
堂々と文句を言えるのは指揮官の特権なのだろうか?
うららは不満そうな目線を真田・佐藤コンビへ交互に送りつつ口に出した。
「春社長、天宮捕獲計画に若干の変更を行いたいと思いますので、その説明です。まずはこれをご覧ください。」
そういうと真田さんは手元のリモコンを操作すると炬燵の天板から立体映像が投射されていた。
「これは……地球?」
彼女の呟きのように空中に造影されたのは地球だった。
「今回の作戦で宇宙空間に送り出すエアーバックをこの8カ所に配置します。」
画面に北極南極を天頂とした角錐を二つ合わせたような8面体、その角の部分に配置された6つと南極北極からわずかにずれた点に配置された二点の合計8カ所が赤く示された。
「この二つは何ですか?」
俺も思わず聞いてしまう。
北南極の角錐の頂点と極めて近い位置に僅かにずれて配置された二つのエアーバックが意味がよくわからなかったからだ。
「それは北磁極と南磁極だな」
横から佐藤顧問が指摘してくれる。
「北極と磁石の北は微妙にずれている。聞いたことがあるだろう?」
佐藤顧問が補足説明してくれた。
「ええ、その通りです。そしてその二つと残り6つは役割が違います。」
わが意を得たりとばかりに真田さんが頷いた。
「磁極に配置された二つは地球の磁力を利用した発電ユニットで残り6つがAIによる監視防御ユニットになります。」
「イルカたちに対する説得・調教を行うついでに、この再利用したエアーバックで地球全周の監視装置を作ってドローンの防衛を行う予定ですが……」
「ちょっと待って!社長の私が初耳!」
あれ?うららが慌てて話に入ってきた。
「ええ、ですから今、話してます。」
真田さんもしれっと言ってる。
「今回はこの計画に若干の修正を加えてミサイル防衛能力を与えようかと思うのですが、その指令体としてチックとアリスを宇宙空間に送りたいと思います」
???
「ご存知のように宇宙空間はほぼ真空です。空気中での電気抵抗が3kV/mmであり、真空中でこの数値は20-40kV /mmになりますので約6倍の電圧をかけても集積回路内でのショートによる回路破壊は起こらないことになります。」
電流量の増加ってことは演算速度の上昇を招くから、俗にいうオーバークロック状態にできるということか。
現在の6倍の電圧での周波数アップ、放熱だけ何とかすれば、スパコン並みの性能になるだろう。
アリスも単純計算なら今のチック以上の性能を有するはずだ。
「可能なんですか?」
とはいえAIの保護者としては突っ込んでおきたくもなる。
「理論上は可能ですし、少なくとも性能向上は間違いありません。」
……でたな理論上可能、技術者が言うと「単なる言い訳」、狂科学者が言うと「新型出現の枕詞」
になる。
「それにしても、さなだぁ、なんで防衛能力付加程度で、うちらの子を空に上げるの?」
そこが問題といえば問題か、地上からのコントロールではまずいんだろうか?
「今回、予定しているミサイル防衛力は地上から打ち上げたきたミサイルに、エアーバックを射出してぶつけて物理的に捕獲または軌道変更する予定です。ICBMが核を含めほぼ完全に無効かされます。地上にコントロールセンターを置くとそこが集中攻撃されかねません」
……
風船ぶつけてミサイル逸らしますって、1gの風船だろう……あ、でも静止軌道でも時速1万キロ以上で飛んでるのか……可能ではあるな。
「このNo1からNo6のエアーバックにはそれぞれ1000発分の樹脂を装着させます。」
おいおい・・・1000発って1kgか可能そうだな。
「合計で6000発のエアーバックを初期装備で持っておきますので、随時追加で目標は2万発に設定します。対地攻撃能力は有さないため、月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家活動を律する原則に関する条約 にも該当しません。」
この24時間監視運用にチックとアリスを使いたいというわけか。
しかし、これは国際軍事力がガラッと変わる作戦になるぞ。
当初のAI調教がどうしてこうなったという話だな。
アメリカのB52、もう百年以上飛んでるが、ミサイル無力化でまた最前線配備になるのか・・・とんでもない長寿命機になるな。




