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文章内で、数字が漢数字なのは、縦書きで執筆している関係ですのでご了承下さい。
架空の言語が出てきますが、掲載先の使用フォントの都合上、不揃い、または、半角に見えない場合があることをご理解下さい。
<登場人物 設定書抜粋>
安芸 智/あき さとし
西暦1980年10月10日 男
体格:ほぼ、日本人と言える体格。同と足の比率は半々。
頭髪:黒が基本の焦げ茶の髪。分け目はないが、ざんばらではない。耳が半分ほど隠れる長さ。
顔 :釣り目気味。ややグレーが入った瞳。耳はとがっておらず、現代の日本人と同じ。鼻筋は通っており白人風。
性格:荒くれ者はなりを潜めているが、こと戦闘になると箍が外れることもある。お人好し寄りで、来るものは拒まない。だが、出て行こうとすると引き留めようとするもろさがある。
田辺 勇/たなべ いさむ
西暦1996年04月04日 男
体格:見た目はやや太い。
頭髪:赤茶の入った黒。スポーツ刈り。
顔 :細い故にたれ目が目立つ。瞳は黒。鼻筋の見えない小鼻。
性格:育った環境も手伝っているのか、慈愛とも言える優しさを持っている。一度信じた事柄に対しては、よほどのことがない限り初心を貫くことにしている。
剣峰 歩実/つるみね あゆみ
西暦1993年09月16日 女
体格:本人曰くぽっちゃり系。
頭髪:ストレートの黒髪。肩より長くしている。戦闘時はポニーテールに結っている。
顔 :小さいがぱっちりした黒い瞳の目。鼻筋の見えない小鼻。
性格:性格はおとなしいが、人なつこい。誰とでも直ぐうち解けることが出来る。時折見せる姉御肌的な言動は、年下の者に何かある場合にのみ現れる。
尾川 法雄/おがわ のりお
西暦1994年5月7日 男
体格:きゃしゃ。
頭髪:黒で短め。耳が出ている程度、頭頂部をふんわりさせて分け目はない。
顔 :ややたれ目で大きめ。瞳はやや茶。鼻筋は通っているが大きめの鼻。
性格:すさんでいる訳ではないが、いい加減なところがある。上を目指すためなら何でもする。学歴が全てに優先すると思い込んでいるため、学歴が低いと判断すると扱いが酷い。
森野 友実/もりの ともみ
西暦1998年06月06日 女
体格:下半身が筋肉質であり、上半身とはアンバランス。
頭髪:赤茶の入った黒で天然パーマ。耳が隠れるほどの長さ。
顔 :やや幼さのある造形。目は大きめで黒い瞳。鼻筋は見えない小鼻。
性格:性格はおおらかであるのだが、口数が少なく強くもの頃を言えない性格もある。また、優柔不断な一面もある。
山国育ちであり、自然が大好きで、野山を駆け回っていたためか、かなりの健脚である。
野本 栄二/のもと えいじ
西暦1989年05月10日 男
体格:身長の割に、細く痩せすぎ。
頭髪:短めの黒髪。現地にあわせ、後ろだけ長くしている。
顔 :やや茶の入った黒い瞳で細い目。丸顔でやや童顔。やや青白い。
性格:おとなしいにも程があるほどにおとなしく、何故営業部に配属になっているのか疑問なほど。更に、声も小さい方で縮こまっている場合は更に拍車がかかる。
<登場組織・国家 設定書抜粋>
株式会社 舞王/まおう
命名の由来:
初代社長である安芸 (あき)佐太 (さた)の出身惑星での二つ名で、桃井 (ももい)栄太 (えいた)面白がって一部に“魔王”をあてがう。これに腹を立てており、会社を興す際に安芸佐太が“魔王”にしようとして口論。最終的に、“魔王”ではなく“舞う王”で手を打った。意味も桃井栄太が知恵を絞ってこじつけ、『世界に舞う王(飛躍する会社)』という強引な手を使う。
事 業:
アンティークの扱いからスタートしているため、未だに主力の一つであり、チェーン店である「舞 (まう)ティーク」を展開している。但し、まれに、国籍不明の一品ものが混じることがある。
西暦1993年度に、異業種中の異業種であるゲーム開発部門を新設。RPGともシミュレーションとも言える「SALTAN (さるたん)」ブランドでゲームを展開、次世代ブランドとして「SALTAN Mo (さるたん・も)」ブランドで、MMORPGの展開している。
他社イベントのスタッフやMC、果てはアトラクションのスーツアクターなどを行っている。もちろん、自社の新作ゲーム発表会などでも同様の内容を行う派遣がある。裏業務として、異惑星に赴く派遣もある。
特殊な訓練施設として、埼玉県の山中に、公にしづらい精錬研究所があり、その地下に併設されている。
耶威磨/わいま
命名の由来:
耶衣と威弥、磨野が講和か戦闘を経て、三つの集落を起源とする意味合いで命名。
位置関係 :
惑星の“名”すらないが、南半球(公転方向に対して、地球の北が南)の赤道から南側にある大陸である“ナキヾΞ⊃Б(なぎみつち)”、北側にそびえ立つ山脈が連なる南の裾野から更に南側、川のほとりから内陸にかけてにある。
種 族:
容姿は、地球で言うところの“モンゴロイド”に近い。よって日本人とも見えるが、身長が地球換算で160センチに満たないため、現代日本人が入ると目立つ。
文 明:
中世の日本である、飛鳥から平安時代に相当。しかし、物によっては江戸辺りの技術水準があり、発展度がまちまちである。
株式会社 空間倉庫/くうかんそうこ
命名の由来:
ワームホールが別の惑星上の空間と繋がっており、それが倉庫のようにたくさんある事をヒントに、倉庫業を主体とした事業を行う事から命名された。
事 業:
倉庫貸し。主に企業向けに区画や隔壁で区切られた倉庫を貸している。
空間貸し。ここで言う空間とはワームホールの事で、別の空間(惑星)を繋いでいる事から“空間貸し業”と呼んでいるが、表だった宣伝活動は行っていない。
<登場道具 設定書抜粋>
アゼニウム/ア素
概 略:
第二次大戦後の日本で発見された新元素。但し、公に出来ない元素である(西暦2017年時点では前者を使用)。また、空気中にガスとして存在するが、アルミニウムと同量の元素量を持つ。
命名の由来:
あくまでも、(株)舞王、(株)空間倉庫に関係する組織での呼称である。当初は、“ア素”と仮の名を新たな元素という意味と、発見された経緯などから命名される。後に、化学の周期表上で、アルミニウムの原子量を持っていることから“ニウム”が付与され、(株)舞王と(株)空間倉庫では“アゼニウム”と命名。
発生 原理:
空気中にガスとして存在するが、何故戦後になって発見できるようになったのか、専門外であるため不明のままとなっている。
無物質特異化現象/むぶっしつとくいかげんしょう
概 略:
新たな現象、あるいは事象のことを指す名称である。ゲームの魔法と似ているところがあるため、“魔法”と呼ぶ者もいる。
命名の由来:
物質が無いところで、特殊/特異な現象が起こることから。
発生 原理:
“アゼニウム”が現象の発生原因と仮定。後の研究で、“儚 (ぼう)素”と命名した同位体が触媒となって事象を起こす。
空間特殊穴=ワームホール(虫食い穴)
概 略:
位相幾何学の中であり得るのではと考えられている構造であるが、今のところ解明できていない。何を持って構成されているのか、何を以てそこにあるのか、今のところ解明できていない。
命名の由来:
リンゴの虫喰い穴に由来する(ウィキペディアより抜粋)。
発生 原理:
今を以てして、この現象の発生した理由、原理は不明であり、維持するための電源となる物は判明していない。
刃/とん
概 略:
日本国の江戸時代や明治初期まで使われていた、日本刀に酷似している武器であり、刃物系となるのも同じである。
形 状:
片刃であるが反りはなく、刃先を切り落としれた形状で、中華包丁をイメージさせる。
チョーカーとイヤホン
概 略:
異種族の言語を翻訳するための装置である。
形 状:
固有名称が無いため、構成に至った経緯を説明。翻訳機をどのように携帯するか。鞄の類いはひったくりに遭いやすいため、身につけやすく、宗教的な物と言い訳ができるチョーカー型が選ばれた。日本の数少なくなった集積回路製造を駆使し、なんとかごまかせる程度の厚みと、データ量をカバーできるサイズを作り上げる。イヤフォンとは無線でつながる。
電 源:
充電池を内蔵。イヤフォンについては、電波の一部を誘導電流として充電される。
ヂリリリ。と、けたたましく鳴っているのは、五つの目覚まし時計である。昨晩、泊まった宿泊施設の一角で、就寝した勇達の部屋から響いているのである。
「ん」と、小さく漏らし、寝返りを打ちながら、「もう、朝か?」と、まだ寝ぼけ眼のままベッドの中で、もぞもぞしているのである。と、「全員、起床!」と、大きな声が響き渡ると、「誰? ん~。安芸さんの声? 今、何時だ? ! そうだ!」と、呟いてガバッと起き上がったのは勇である。
「急いで起きないと」と、まだ半ば寝ているような状態ではあるものの、できる限り急いで身支度を調えるのであった。
一方、「ん? 誰よ。さっき寝たばっかりよ。ん~」と、未だに夢の中に浸っている御仁がいたのである。と、更に、「起きろ! 耶威磨の朝だぞ!」と、間を置いて“耶威磨”という単語を交ぜる智であった。すると、「! そっか、別の惑星に来てたんだっけ。安芸さんに怒られるぅ」と、呟くや勢いよく掛けている寝具をはねのけたのは歩実であり、手早く身支度を済ますのであった。
勇が個別の寝室を出ると、隣にある居間には、智、法雄、友実が椅子に座って寛いでいたのである。
「おはようございます。遅くなりました」
「いや、まぁ。遅くはないが、おはよう」
その直後、勢いよくドアを開けて、「も、申し訳ありません。ぐっすり寝てしまい……」と、いきなり謝ってしまう歩実であった。
「つ、剣峰さん、おはようございます」と、友実がにこやかに挨拶すると、「あっ。おはようございます」と、何を言っているのかとでも気が付いたのか、やや小声で挨拶する歩実であった。
「まぁ、うん。慣れないこともあるだろう。……さて、顔を洗ってもう少し身支度をしてから、朝食にしようか」と、智が、やや寝癖の残る法雄に視線を向けつつ、全員の身支度完了を以て、部屋を出ることとしたようである。
朝食を済ませた一行は、迎えに来ていた栄二に引きつられて、この惑星の営業拠点である店舗へと向かうのであった。
店舗に向かう途中、栄二が、「あ、明日まで、昨日の、か、会議室を取ってあります。で、で、ですので、明日はむ、迎えなしに、そちらに来て頂ければとお、お、思います」と、吃りながらも、声に元気があるようである。
初日と言うこともあり迎えをしたのであろうが、実は、宿泊施設からは真っ直ぐ進むだけの道であり、店舗が突き当たりにあるのであった。日の差す時間であるが故、勇と友実が辺りを見回していたところ、「田辺君、森野君。散策はお昼にして店舗に急ぐぞ」と、智に釘を刺されてしまうのであった。それから、程なくして店舗に到着したのである。
「そ、そ、それでですね。こちらにき、来た際は、小さいですがこ、こ、この受付で、せ、責任者の名前を告げて下さい。そう、そうすれば、担当のえ、営業に連絡さ、されますので、よ、呼びに行くこともないようになってます」
「なるほどな。システムとしてはよく出来ていると思う。流石に空間倉庫が作ったというか、社長の手腕と言ったところか」
智の褒めように、栄二はなんとも言えない表情であった。確かに、自社が管理している物件ではなく、栄二は、一社の営業として常駐しているに過ぎないからであろう。
ぞろぞろと店舗内を移動していると、勇が、すれ違う人の多さに、「皆さん、もう仕事を始めているんですね」と、日本の感覚では、まだ早朝に入る時間帯である。であるにもかかわらず、結構な人が忙しなく動いている事に、目が行かない筈もないのである。
「そ、そうですね。こ、こちらの知的生命体のか、方々は、朝が早いで、ですから。……そ、そ、そう言う皆さんも、日本の感覚では、は、早いほうだと思いますよ」
「……確かに、そうでしたね」と、墓穴を掘ってしまったと言わんばかりに、笑って誤魔化す勇であった。
そうこうしているうちに、昨日と同じ第五会議室に到着した面々であるが、「……さて、野本君に説明を始めて貰う前に、昨日の田辺君の質問。この拠点。営業拠点のことやらを説明しておこう。ここは、我が社の物件ではなく(株)空間倉庫の物件になる」と、言ったところで勇が口を開こうとすると、智が、手でそれを制したのである。「何故、他社物件を使っているのか、と聞きたいだろう」と、続けると、頷く勇であった。
「そもそも、ワームホールがある場所を管理しているのは、(株)空間倉庫だ。よって、現地へ行くにも他社が管理する場所を通らなければならない。まぁ、空間倉庫の設立自体、ワームホールのためだったそうだからな。それとは別の話だが、実際、異惑星に派遣を行っているのは、我が社だけではない。それに、派遣以外、建築・建設やら資材やらを生業にしている会社も、(株)空間倉庫の株主にいる訳だ。更に言えば、今のところ異惑星上に繋がっているワームホールは、各惑星で一つしか見つかっていない。であるなら、異惑星上の拠点を共同にしてはと、なったそうだ。大雑把にはこんな所か。そこで、田辺君の質問としては、この拠点は(株)空間倉庫の物件であり、我が社を始めとした派遣を行っている会社は、間借りしていることになる。作りが同じになるのは、別設計にする手間、建設の合理性、後は、異動があった際の利便性などもあるんじゃないかな」
蕩々と語る智であるが、時折目を閉じて何かを思い出しながら、と言った素振りも見せているのである。
「安芸さん、分かりました。ありがとうございます」
聴いている勇達は、大分はしょった説明ではあっても、それなりに納得したようである。
「そうか、大雑把で申し訳ないが、理解してくれたのはありがたい」
「自社物件を持てないのは、おかしいです」と、怒りを露わにして捲し立てるのは法雄であり、智が、「説明した通り、ワームホールを管理しているのは(株)空間倉庫だ。別惑星上のワームホールの管理と隠蔽を考えた上での結論と言うことだろう。店舗とワームホールの管理を分離したとして、結局(株)空間倉庫に頼ることに違いがない。であるならば、纏めておいた方が、派遣業としてもやりやすくなる。と言ったところだろうな。……ひとまずはこれくらいにして、本題である依頼の予定について、野本君、よろしく頼む」と、法雄の憤慨をあしらう智であった。
「そ、そ、そうですね。まず、こ、この周辺から行きましょう。しゅ、周辺は、森と言うよりは密林。あ、あるいは、しん、森林地帯と言っていいと思います。そ、そ、それから、この辺りにはち、知的生命体が住んでいる痕跡はありません」
「何で、もっと便がよいところに作らなかった」
智に、きつく栄二は年上であることを解いたにも関わらず、どうも下に見たいようである。しかし、栄二も負けじと、「……。……べ、便が良いと言いますが、が、ここは地球では、あ、ありませんから。何処に行って、ても、何もありません」と、なんとか法雄に対抗できたようである。
“ふぅ”、と一息ついて、「い、一番近い知的生命体の集落、い、いえ、部落とい、言った方が規模的にはあ、あっていますが、そちらとの、ぶ、文明差があります。その辺りも含めて、ちょ、ちょうどよい場所だと思います」と、苦笑いしながらも続ける事が出来た栄二であった。しかし、「フン。そんなもの、こちらから宛がってやれば良いだろう。何をやっている」と、法雄が言うのは、知識や技術ではなく、その物を作って渡せばよい、と言う事なのだろうが、「尾川君。君は、まだそう言うことを言うのか。いい加減にしなさい!」と、頭を抱え、天を仰いだ智の小言が爆発するのであった。
「し、しかし、社長! 社の業績の妨げになる如何なる物も、排除しなければいけません。それに、俺の実績にもなります」
「いい加減にしろ、と言った」
その智の怒りに触れ、法雄は驚愕の表情をしたかと思うと、俯いて黙るのであった。
その遣り取りが終えたと判断した栄二が、「……え、えー。つ、続けても良いでしょうか?」と、確認を取ると、にこやかに頷く智がいたのである。
「次に、惑星全般についてです。重力は、一.三~一.一倍ほど、地球より高いです。一日は、約一九時間。一年は約三〇〇日です。気候は、地球と同じで変化はありますが、地球の感覚からすると激しく変化すると言ったところです」
「なるほど。……なんとなく重く感じるのは、重力が高いからだったか」
「一九時間……。時差、と言うよりは、時間が違うのね。感覚がおかしくなりそう。はぁ」
「そうですね。自分も、大分こちらになじんでしまってますので、戻った時が怖いです」
「まぁ、そう言うな。もうしばらくは、異動はないからな」
「そ、そうなんですか?」
「ん?」
「安芸さん。フォローになってませんよ、それ」
「そうか? すまん」
勇と歩実の言葉に、感想会の様相を呈してしまう一同であったが、栄二が、「次に、この惑星で出会った知的生命体についてですが。容姿は、日本人に似ていますが、身長が大分低いです。日本人の殆どが頭一つ分高いと思います。知的生命体の部落は、“耶威磨”と呼称していまして、漢字に似た文字で、”わ”は“有耶無耶”の“耶”で、“い”は“威嚇”の“威”、“ま”は“播磨”の“磨”に似た文字を使っています」と、説明していると、「その“ちび”達を排除すれば良いのか?」と、突然、突拍子もないことを言い出す法雄であった。
「尾川君。説明を遮る上に、何故かと疑いたくなる思考はどう言う事だ?」
「はぁ。社長ともあろう人が、説明すると言うことは、排除対象だからではないのですか?」
「待て、まず、何故“排除対象”という結論に至るんだ。今は、この惑星で出会った知的生命体、いわば、人類について、どういった特徴があるのかを、知らない我々に教えるための説明会だぞ。依頼の話はまだしていない」
「……なるほど。そう言うことでしたか。てっきり、我が社に立ちはだかる対象の説明かと思ってました」
「君はぁ。……すまない野本君、続きを頼む」
法雄が口を開くと、どうも険悪な雰囲気にしかならないようであるが、智は、問い詰めるのを諦めたのであろうか。
「は、はい。次に、言語ですが。……」と、栄二が無言になってしまうと、「どうした? 何か問題でもあったか?」と、智が尋ねたのである。すると、「い、い、いえ。問題ではないんですが、そ、そのぉ。た、た、多少崩れているんですが、が、に、日本語のカタカナがし、主体で、さ、先ほど説明し、した通り、か、漢字と思われるも、文字も使用しています、です」と、栄二が自信がなさそうに、いや、突拍子もないことと取られるだろうと、怯えたように喋るのであった。
「えっ? 日本語ですか?」
「日本人がここにいるの?」
「つ、つ、つ、剣峰さん、そんなことある、わ、訳ないじゃないですか。そうですよね、あ、あ、安芸さん」
法雄を除く三人が、びっくりした表情で思い思いに言葉を並べるのであった。そして、その視線は智に向くのであった。
「ん? まぁ、宇宙は広い。似たような文字と言語体系があったとして、何の不思議もない、とは言えんか。……驚いてはいる。アルファベットに似た文字は、当社で赴いた文明でほとんどを占めているが。カタカナか……。野本君。ちなみに、君が把握している中で他文明にはあるのか?」
「い、いえ。そ、そこまでは、き、聞いてい、ません。も、も、申し訳ありません」
「いや、謝る必要はない。現地に張り付いている訳だからな、そうそう、他の情報は入ってこないだろう事を失念していた」
「い、いえ。そ、それでは、次に、ぶ、文明のじ、状態ですが……」と、言いかけたところで、栄二の説明が止まると、「野本君、どうした?」と、智が、すかさず何かあったのかと身構えるのであった。
「あっ、すいません。気が付いたら、もうお昼です。食事休憩を取りますか?」
「あぁ、そうか。何事かと思ったぞ」
「す、すいません。……それで、まだ続けますか?」
「そうだな。ここらで一旦、軽食程度の休憩を取るか。食事場所は?」
「そうですね。この拠点内にも、麺類やサンドイッチや惣菜パンを作って出せる食堂はあります。後は、宿泊施設の食堂だけです」
「宿泊施設まで行くのも、あれか……。拠点の食堂で良いか?」と、智が移動時間を考慮する。更には、地球時間的には、まだ昼より前である。四班全員が、軽食で良いと言うことになった。
*
食事休憩を取った一同が、会議室に戻ってきて、「それでは、続きを始めます」と、栄二が、幾分か四班になじんだようで、軽やかに喋るのであった。
「えーと。文明からでしたね。わ、耶威磨では、農耕や酪農があ、あるのですが、鍛冶も、さ、昨日見て頂いた刃か、からも、か、か、かなり成熟しているとのけ、見解があります。い、い、一方で、農耕、き、機具などは、か、かなりお粗末なつ、作りと言ってもいいのだ、だと思いますが。が、農耕機具にか、関しては、に、日本に当ては、嵌めると、や、弥生時代ぜ、前後く、くらいだそうです。鍛冶にか、関しては、せ、戦国時代辺りだ、だそうです。あ、後は、ち、治水で、上下す、水道がかなりは、発達しています。え、江戸時代辺りではな、ないかとの見解です」
「どう言う事だ? まぁ、知的生命体の進化度合いは、必ずしも、地球と同じように進むとは考えにくいが。それにしても、分野毎に、進歩の開きがすごいな」
栄二の説明に、驚愕の表情をする智であり、挙げ句には、学者張りの解説を始める始末である。こういった考察の類いが好きなのかも知れない。
「! す、すまん。説明の腰を折ってしまった」
「い、いえ。しゃ、安芸さんなら、こ、考察が始まるとき、聞いていますので」
「だ、誰だぁ。そんなこと言った奴は。……まぁ、冗談はさておき、続きを聞かせてくれ」
冗談交じりに場を和ませつつ、目を輝かせる智であった。
「は、はい。せ、政治か、関係ですが、司祭や巫女とい、言ったシャーマンに類するち、地位の者が、お、治めています。こ、この地位を“かみこ”と、と言います。か、漢字が当てられていまして、“神”、“姫”と、ひょ、表記されるようです。そ。その他にも、“かとく”、“ふも”、“こぐん”などのか、官位か役職と、お、思われる名称があります。あ、後は、りょ、“領主”と言う称号に、ぶ、分類されると思われる“はらのかり”、“こぐのかり”、“まじのかり”があ、あります。こ、これらも、わ、割り当てられているか、漢字がありますが、が、は、省きます。……お、お気づきとは思いますが、み、巫女やシャーマンがり、領主や君主にいたのは、に、日本で言うと、縄文、弥生か、そ、その後くらいまでの時代に該当するのですが、ぶ、文明とのぎ、ギャップがあります。先ほど、あ、安芸さんが言われた通り、地球と同じ道を辿るとはか、限らない、と言う事なのかも知れませ、せん」
栄二の説明に、友実と歩実は、知識的にパンクしたようで、呆然とする一方、勇は、「なるほど。安芸さんが興奮するのも分かります。しかし、こう、なんと言えばいいんでしょう。……そう、ちぐはぐすぎますね」と、統治の体制と、文明の進み具合に、釈然としないようである。
「……確かに。田辺君の言う通り、ちぐはぐ感が拭えない。……しかし、ここでそう言う議論をしても仕方がないな。そろそろ、本題である依頼について、説明を頼めるか」
「わ、分かりました。依頼主は、昨日も言いましたが、耶威磨です。依頼内容は、山向こうに道を通したいが、調査の過程で、“イニ”が出て逃げ帰るしか出来なかった。この、“イニ”についての調査依頼です」
「いに、とは何だ?」
「すいません。そのまま読んでしまいました。“イニ”とは、日本で言うところの、“未確認生物”と言ったところで、“鬼”に該当すると思います。古い言い方ですと“おぬ”になります」
「鬼、ですか。何故なんですか?」
「い、い、いえ。あ、あくまでも……日本語……に訳した……場合に“鬼”該当すると言うだけです。ですが、話を伺っている中で、彼らが出会ったことがない、生物全般を指しているのだと、判断して、つ、通訳では、“おぬ”、を使う……ようにしています」
「なるほど……。余計なことを言いました、すいません」
勇が潔く謝ると、「い、いえ。大丈夫ですよ。現地課として勤務していると、日本と感覚が違ってしまうことを学んでいますから」と、栄二がいつになくなめらかに語るのであった。
「ちょっと、良い……ですか? 野本……さん、の説明だと、俺が、下々がする調査をやる、と言う事になりそう……ですが、あってますか?」
「そう言うことだな。問題があるか?」
「大ありです。何故、首席卒業の俺が、下々がすべきことをしないといけないんですか」
「……はぁ。それが、会社として行う仕事だからだな。請け負った仕事であり、上司が配分した仕事だからな、それをこなす気がないのであれば、今だと即刻退職だが、するか?」
「……」
法雄の、自分理論に基づいた解釈を、得意げに語るのであるが、智の言い分と、“退職”を突きつけられ、項垂れるしかなかったようである。
「うむ、よし。異論はないようだ。野本君、続けてくれ」
「は、はい。わ、分かりま、ました。次ですが、翻訳機について説明します」と、栄二が語ると、「翻訳機ですか」と、勇が呟いたのだが、「あ、えーとで、ですね。と、当然ですが、ち、知的生命体で、あ、ある以上、ど、独自の言語が、がある訳です。わ、我々が操……る言語と、似ていてもち、違うことがありますし、わ、我々の言語も通じるは、筈がありません。で、ですので、聞くと、時は日本語でき、聞こえ、は、話すと相手の、げ、言語で、は、発声者の声色を、似せるようになっています」と、栄二が長い台詞を以て説明するのである。
「そう言えば、来る前に説明があったような……。何処にあるんですか?」と、少々興味を持った勇が、捲し立てるように、身を乗り出さんが如くの勢いであった。
「田辺君。落ち着きなさい」
「……! す、すいません。少々先走りすぎました」
「んん。現物はこれです。翻訳機は、二つから成っています。まず、本体となるチョーカー、型の物です。形状ですが、携帯する上、で箱状の物ですと、相手に言い訳し、しづらいことがありますが、チョーカー型で、ですと、宗教絡みにし、しやすいこともあって、この形状です。それと、受信機となる小型、のイヤホンですが、に、日本の技術を持って、一番小さいサイズで作られ、耳の穴に殆ど、の方が埋める事が出来る筈です。それから、本体、とイヤホンは無線で、繋がっていますし、グ……グループ内での、簡易通信機としても、つ、使えるように、グループ機能も、あります。概要は以上です」
栄二の説明に、勇と友実の目が輝いているのが、傍から見ても明らかであり、「田辺君はともかく、友実ちゃんも、この手の事が好きなのね」と、呆れ返る歩実である。
「と、当然です! もう、あの秘密のドアも良いですが、やはり、異星人と来れば翻訳機ですよね。ファーストコンタクトの時は、さぞ大変だったんですよね。クゥ、萌えます」
「あっ、思い出したわ。空間倉庫でも、秘密基地だぁって、言っていたこと」と、数日前のことを思い出し、呆れ返る歩実であった。また、友実に対する評価も、変わることとなるのであろう。
「も、盛り上がっている、と、所、申し訳ないですが、お伝えしたいことがあります」
栄二がトーンを落として、言いにくいことでもあるかのように、輪を掛けておどおどしているようである。
「野本君、どうした。問題がありそうな雰囲気だが」
智が、助け船でも出そうとしているようにも見えるが、栄二の泳ぐ目に、一抹の不安を感じたのかも知れない。
「い、いえ。も、問題、とは言えなくもないのか、かも知れません。……えーと、で、ですね。耶威磨のと、登録している、げ、言語、と言いますか、言葉遣いが、が少々特殊でして、聞いた際にふ、ふ、吹き出さないようにお願いしたいのです……」
やや尻つぼみになりがちな栄二の言葉に、「それはどう言う意味なのか、ここで説明できるか?」と、その真意を問う智であるが、「いえ、こ、ここではちょっと、恥ずか……。いえ、そうですね。し、強いて言えば、じ、じ、時代劇風と、お、お、思ってい、頂ければよいと思います。で、ですが、ち、近い言葉遣いになっていると、じ、自負はしています」と、言い訳のようであり、煮え切らない言い回しとなるのであった。それに対して、「そうか、分かった」とだけ告げる智であった。
智のフォローのような物を受けた栄二が、備え付けの時計に目をやり、「ほ、翻訳機は、お、お配りします、初期、設定は、済んでい、います。か、各自の声色を、記憶させるか、関係で、この場で、装着して頂きます」と、配り始めるも、「今時チョーカー? ちょっとダサい、かな」と、呟いたのは歩実である。それに対して、「確かに。俺はしたことないから、違和感は拭えないけれど。野本さんの説明通りの意味であるなら、首に巻く、と言うのは宗教絡みにもしやすいかも知れませんね」と、勇がいつものように、分析した結果を述べるのであった。只、納得も何もなく、智が躊躇なく装着したことを見て、無言で装着する者が一名いたようである。
「説明は、以上になります。し、質問がない、ようであれば、大分、良い時間にな、なっていますので、昨日と同じ、宿泊施設に、向かって頂きます」
栄二の確認に対して、現状で、質問する者はおらず、智が、「それじゃ、宿泊施設へ向かうか」という号令で、営業拠点を後にするのであった。




