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勇者一行派遣業~耶威磨(わいま)のおぬ~  作者: 木眞井啓明
第二章 最終研修

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 文章内で、数字が漢数字なのは、縦書きで執筆している関係ですのでご了承下さい。

 架空の言語が出てきますが、掲載先の使用フォントの都合上、不揃い、または、半角に見えない場合があることをご理解下さい。


<登場人物 設定書抜粋>


若松 一郎/わかまつ いちろう

 西暦1980年06月21日 男

 体格:やや痩せ気味。

 頭髪:手入れを気にしていない程に、適当になっている黒髪。

 顔 :細い目。鼻筋が通っている小鼻。薄い唇だが横にやや広い。

 性格:おおらかでのんびりしている。口調にもそれが表れており、マッドなイメージの化学ではないと思わせる。とは言え、学者肌であることに変わりはなく、時折危ないことを言い出す。


桃井 美郎/ももい よしろう

 西暦1953年6月18日 男

 体格:昭和の漢であるためか、良く鍛えており、所謂おじさん太りはしていない。

 頭髪:黒で短め。耳は出ており、七三で分けられている。

 顔 :真一文字の細めの目。瞳は黒。鼻筋は見えない小鼻。やや薄い唇。

 性格:生真面目であるが、温厚であり、計算高い。仕事の姿勢と同じだが、他者に対して厳しいところがある。

 この性格は栄太(えいた)、栄二郎(えいじろう)とも似たようなもので、桃井家の宿命と言える。


安芸 智/あき さとし

 西暦1980年10月10日 男

 体格:ほぼ、日本人と言える体格。同と足の比率は半々。

 頭髪:黒が基本の焦げ茶の髪。分け目はないが、ざんばらではない。耳が半分ほど隠れる長さ。

 顔 :釣り目気味。ややグレーが入った瞳。耳はとがっておらず、現代の日本人と同じ。鼻筋は通っており白人風。

 性格:荒くれ者はなりを潜めているが、こと戦闘になると箍が外れることもある。お人好し寄りで、来るものは拒まない。だが、出て行こうとすると引き留めようとするもろさがある。


田辺 勇/たなべ いさむ

 西暦1996年04月04日 男

 体格:見た目はやや太い。

 頭髪:赤茶の入った黒。スポーツ刈り。

 顔 :細い故にたれ目が目立つ。瞳は黒。鼻筋の見えない小鼻。

 性格:育った環境も手伝っているのか、慈愛とも言える優しさを持っている。一度信じた事柄に対しては、よほどのことがない限り初心を貫くことにしている。


森野 友実/もりの ともみ

 西暦1998年06月06日 女

 体格:下半身が筋肉質であり、上半身とはアンバランス。

 頭髪:赤茶の入った黒で天然パーマ。耳が隠れるほどの長さ。

 顔 :やや幼さのある造形。目は大きめで黒い瞳。鼻筋は見えない小鼻。

 性格:性格はおおらかであるのだが、口数が少なく強くもの頃を言えない性格もある。また、優柔不断な一面もある。

 山国育ちであり、自然が大好きで、野山を駆け回っていたためか、かなりの健脚である。


剣峰 歩実/つるみね あゆみ

 西暦1993年09月16日 女

 体格:本人曰くぽっちゃり系。

 頭髪:ストレートの黒髪。肩より長くしている。戦闘時はポニーテールに結っている。

 顔 :小さいがぱっちりした黒い瞳の目。鼻筋の見えない小鼻。

 性格:性格はおとなしいが、人なつこい。誰とでも直ぐうち解けることが出来る。時折見せる姉御肌的な言動は、年下の者に何かある場合にのみ現れる。


木野下 太一郎/きのした たいちろう

 西暦1982年09月22日 男

 体格:背が低いことも手伝って、小太りに見える。

 頭髪:黒髪で、短めに切り揃えられているが、刈り上げはしていない。

 顔 :ホームベース型、と呼んでも良い程えらが張っている。目は何時も笑っていると言われる程細い。先祖に白人がいたのではと思える程に鼻筋が通る小鼻。

 性格:人当たりが良く、怒ることはめったにない。優しさと捉えられがちであるが、怒りたくないから怒らせないように観察しているため、口数が少ない、人見知りと言われる。



<登場組織・国家 設定書抜粋>


株式会社 舞王/まおう

 命名の由来:初代社長である安芸 (あき)佐太 (さた)の出身惑星での二つ名で、桃井 (ももい)栄太 (えいた)面白がって一部に“魔王”をあてがう。これに腹を立てており、会社を興す際に安芸佐太が“魔王”にしようとして口論。最終的に、“魔王”ではなく“舞う王”で手を打った。意味も桃井栄太が知恵を絞ってこじつけ、『世界に舞う王(飛躍する会社)』という強引な手を使う。

 事   業:

  アンティークの扱いからスタートしているため、未だに主力の一つであり、チェーン店である「舞 (まう)ティーク」を展開している。但し、まれに、国籍不明の一品ものが混じることがある。

  西暦1993年度に、異業種中の異業種であるゲーム開発部門を新設。RPGともシミュレーションとも言える「SALTAN (さるたん)」ブランドでゲームを展開、次世代ブランドとして「SALTAN Mo (さるたん・も)」ブランドで、MMORPGの展開している。

  他社イベントのスタッフやMC、果てはアトラクションのスーツアクターなどを行っている。もちろん、自社の新作ゲーム発表会などでも同様の内容を行う派遣がある。裏業務として、異惑星に赴く派遣もある。


  特殊な訓練施設として、埼玉県の山中に、公にしづらい精錬研究所があり、その地下に併設されている。


耶威磨/わいま

 命名の由来:耶衣 (わい)と威弥 (いわ)、磨野 (まわ)が講和か戦闘を経て、三つの集落を起源とする意味合いで命名。

 位置関係 :惑星の“名”すらないが、南半球(公転方向に対して、地球の北が南)の赤道から南側にある大陸で、自分たちがいる土地を“ナキヾΞ⊃Б(なぎみつち)”と呼んでいる。その北側にそびえ立つ山脈が連なる南の裾野から更に南側、川のほとりから内陸にかけてにある。

 種   族:容姿は、地球で言うところの“モンゴロイド”に近い。よって日本人とも見えるが、身長が地球換算で150センチ程のため、現代日本人が入ると目立つ。

 文   明:中世の日本である、飛鳥から平安時代に相当。しかし、物によっては江戸辺りの技術水準があり、発展度がまちまちである。



<登場道具 設定書抜粋>


アゼニウム/ア素

 概   略:第二次大戦後の日本で発見された新元素。但し、公に出来ない元素である(西暦2017年時点では前者を使用)。また、空気中にガスとして存在するが、アルミニウムと同量の元素量を持つ。

 命名の由来:あくまでも、(株)舞王、(株)空間倉庫に関係する組織での呼称である。当初は、“ア素”と仮の名を新たな元素という意味と、発見された経緯などから命名される。後に、化学の周期表上で、アルミニウムの原子量を持っていることから“ニウム”が付与され、(株)舞王と(株)空間倉庫では“アゼニウム”と命名。

 発生 原理:空気中にガスとして存在するが、何故戦後になって発見できるようになったのか、専門外であるため不明のままとなっている。


無物質特異化現象/むぶっしつとくいかげんしょう

 概   略:新たな現象、あるいは事象のことを指す名称である。ゲームの魔法と似ているところがあるため、“魔法”と呼ぶ者もいる。

 命名の由来:物質が無いところで、特殊/特異な現象が起こることから。

 発生 原理:“アゼニウム”が現象の発生原因と仮定。後の研究で、“儚 (ぼう)素”と命名した同位体が触媒となって事象を起こす。

 本当に短い期間であった引率者による指導が終わり、西暦二〇一七年七月七日。

 その朝一番に、集められた新人達。新人研修としては初めて、講義前のミーティング程度ではない、所謂会社の朝礼が始まろうとしていたのである。

 ざわめいている新人達に、「はいはい。それじゃぁ、始めますよ」と、開口一番、気の抜けるような調子で静粛を求める一郎(いちろう)であった。

「短期間であったようですがね。引率者の指導はどうでしたかね。上手く出来た人も、出来なかった人もいるでしょうね。……さて、最終の研修先が、この間にやっと決まりましたからね。……まぁ僕も、君達が使う無物質特異化現象《むぶっしつとくいかげんしょう》を起こす化学式の調整に、かなり苦労しましたよ。とにかく、派手な使い手がいますからね。ホント、勘弁して欲しいですよ」と、いつの間にか愚痴をこぼす一郎(いちろう)に、「んん」と、背後から咳払いが聞こえてくるのであった。

「あぁ、さて。これ以上続けると、お叱りが倍増しそうですから、班毎の最終の研修先を発表しましょうか」

 一郎(いちろう)の言葉に、修学旅行にでも行くかの如く、はしゃぎだしてしまうのであった。

「君達! はしゃぐのを止めなさい!」

 一郎(いちろう)の背後から、やや高めの声が響き、新人達はびっくりしたのであろう一瞬にして動作が止まり、直ぐに、怒られたと気が付き姿勢を正すのであった。

「いきなり失礼しましたね。副社長の桃井(ももい)です。若松(わかまつ)君、後ろから失礼しますよ」と、声を上げた美郎(よしろう)が、一郎(いちろう)に謝罪しながら並びに立ったのである。「えぇ、副社長。構いませんよ」と、その場を譲るように一歩下がるのであった。

「良いですか。これから赴く先は、今までとは違うんです。正規の依頼に基づいて受けた業務になります。よって、これは、株式会社舞王(まおう)を背負って依頼内容を遂行する義務が生じると言う事です。修学旅行に行くような気分では困ります。更に言えば、行く先は地球ではありませんからね。困ったとしても、あなた方を助けてくれる組織は存在しません。ですから、ほどほどの緊張感は持って下さい。それと、基本は、あなた方が考えて行動して貰う事になりますが、引率者の指示は絶対です。逃げろと言われたら、何を置いても逃げなさい。それは、あなた方はもとより、引率者にも危険があると言うことを忘れないように」

 言い終わると、くるりと踵を返して、元の位置に戻るのであった。

「副社長ありがとうございます。……と言う事でね。君達は、何か決まる度にはしゃいでいるねぇ。まぁ、今しばらくは叱ってもらえるとは思うけれど、何れは……。分かるよねぇ」

 脅しを掛けてくる一郎(いちろう)に、「若松(わかまつ)君。その辺にして、発表してもらえるか? 後ろが詰まってくるぞ」と、一郎(いちろう)の鬱憤晴らしに釘を刺したのは、智(さとし)であった。

「あっ。分かりました。怒られてしまいましたよ。さて、研修先を発表しますかね」

 そう言った一郎(いちろう)は、一班から順に実地研修となる、依頼先を発表していくのであった。


「“わいま”と言う国か」

「どんなところ何でしょうか。僕は、ちょっとワクワクします」

「友実(ともみ)ちゃん。副社長が言っていたでしょ、修学旅行じゃないって」

「えっ。あっ。で、でも。き、緊張しすぎ……るのは、よ、良くないって、言ってました」

「まぁ、そうではあるんだけどね」

 依頼元にもなる“耶威磨(わいま)”という国について、いろいろと想像を巡らす四班であったが、発表された研修先に興味がわいているのであろう新人達は、一郎(いちろう)の注意があったにも関わらず、どうしてもざわめいてしまうのであった。

「君達。さっき注意したばかりでしょう。騒がない。……それでは、宣伝部、派遣課、班統括係の木野下(きのした)太一郎(たいちろう)係長から、派遣に関わる諸々を説明して貰います」

 一郎(いちろう)の“いい加減にしてくれ”と言わんばかりの表情に、互いに注意し合いながら静まる新人達であった。

「若松(わかまつ)化学(ばけがく)班班長から紹介の通り、班統括係の係長をしている木野下(きのした)太一郎(たいちろう)だ。もう少し、若松(わかまつ)君の苦労を慮るようにすると良いかな。……では、今回は研修と言うことではあるが、通常の派遣業務と同じ扱いとなる。よって、持ち込みその他についても同様の扱いとする。質問は後から受け付けるため、まずは説明を聞くように。

 ……まず持ち込みについて、各人の所有物、小物であっても全て持ち込み禁止。持ち込めるのは、会社支給の備品のみ。次に服装だが。下着以外の私服や背広は持ち込み禁止。とは言え、下着にも規定があるから資料を渡す。変わって、会社支給の派遣業務用の一式に、着替えて貰うことになる。付け加えるなら、配布する着衣の上に現地の服を着て貰う事になる。よって、こちらの服は不要と言うことだ。何故、持ち込めないのかを説明する。

 文明の水準はまちまちであるが、主に、地球の歴史に当て嵌めると中世前後が多くなっている。当然、こちらにあってあちらに無い物など、ごまんとある事になる。これらを持ち込むことは、相手の進化に多大な影響をもたらす恐れが高い。文明とは、そこに発祥した、知的生物が独力で掴むのが最良であると我々は考えている。故に、文明に影響があり得る物は最小限にすべきと結論した。質問はあるか?」

 太一郎(たいちろう)の説明は、ある種、漠然としており、社会経験の少ない新人には、まだ何がどうなっているのか、理解が及ばない者がいるようである。そんな中、「すいません。田辺(たなべ)勇(いさむ)です。質問してもよろしいですか?」と、勇(いさむ)が意を決したかのように質問するのであった。

「田辺(たなべ)君。どうぞ」

「スマホや携帯電話についても、だめと言うことでよろしいでしょうか」

「……スマホや携帯電話は、先端技術と言ってもいい機器だ。当然許可されない。そもそも、派遣先には基地局もないから、通信すら出来ないので、持っていく必要はないだろう。おっと、肝心な物を忘れていたな。ここで説明しておこう。各々の班が向かう先は、他文明であることから、当然言語は独自の物となっている。よって、相互の言葉を翻訳する機械を装着して貰う。装置としては、かなり小型であるが、できうる限り肌身離さずとしたいためと、見つかりにくいことを考慮した結果。音声を聞く物はワイヤレスイヤフォンで、本体はチョーカー型で作られている。尚、周囲にいるメンバーとの交信も可能としている。そうだな。一応言っておくか。翻訳機は技術の粋を集めて作られている物だ、業務中は外すことを許可しない。当然、風呂に入る際もだ」

 太一郎(たいちろう)の説明に、「ゲームできないじゃん」や、「携帯がないと……」などなど、騒ぎ出す始末である。

「分かりました。次です。衣服すらだめというのは、化学繊維が問題になるからでしょうか?」

「ふむ。君は、かなり優秀と言えるな。その通りだ。地球の歴史でも、中世頃にはまだ化学繊維の元すら発見されていなかった。それを踏まえて、同様の進化を辿る可能性を考慮したと言うことだな」

 ざわついていた新人達であったが、勇(いさむ)がした質問の回答に、理解しきれなかったのか、知識不足か、逆に静まりかえってしまうのであった。

「ありがとうございました」と、勇(いさむ)が礼を述べると、「他にはないか?」と、促されるものの質問する者はおらず、「では、派遣着を配布する」と言うことになったのである。

「それじゃぁ、配りますよ。パッキングに、名前が書いてありますから、間違えないように持っていって下さい」と、どんと段ボールを置く一郎(いちろう)であった。


 昼を挟んで、班毎に部屋に分散した新人達であった。

「さて、短期間で君達の力量も把握できた。まぁ、欲を言えばいろいろあるが……。これからに期待したいところではあるが、尾川(おがわ)君」

「は、はい!」

「野球ボールくらいの火球を連射できるようになったか?」

「そ、それは……」

「はっきり答えなさい」

「は、はい。社長の命令に従って、小さい火球の連射を目指しました。しかし、まだ出来ていません」

「そうか」と、智(さとし)が区切ると、「しゃ、社長」と、法雄(のりお)が何かを言おうとするが、「あぁ、まだ終わっていない。私の指示したことが出来ていない以上、出来るまで続けて貰うしかない。例外がないとは言わないが、これが上司からの指示というものだ。分かったか」

「はい」

 智(さとし)の表情と、捲し立てるような言い方に、法雄(のりお)はやや俯いて返事をするしかなかったようである。

「……さて。そうだな、四班の派遣先である、“耶威磨(わいま)”について、分かっていることを説明するか」

 智(さとし)が、ホワイトボードにどんな種族であるのか、ざっと書き出していくのであった。

 最初に、国の名前とされる呼称を、漢字とかなで書き記され、次に、身長が一五〇センチ台であること、容姿は、日本人にかなり似ていること、髪は焦げ茶や黒、瞳は茶か焦げ茶、希に濃い灰色。などなどと書かれていくのであった。

「まぁ、資料をざっと纏めるとこんな感じだな」

「安芸(あき)さん。その赤丸の下にある、ゼロの概念がないとは?」

「うん。剣峰(つるみね)君、そこはこれから説明しよう。我々は、“ゼロ”と言う状態が“ある”と言うことを認識しているな。まぁ、“ゼロ”というのは、“無い”という意味になる訳だが、これが実はかなり重要で、時と場合にもよるが、物事には“無”から始まる物が存在するし、それがないと解釈できないことが結構ある。小難しく言っても仕方がないか、科学技術などではかなり重要度があるそうだ。“ゼロ”がないとこれらが始まらないと言うことだ」

「ん? そうなんですか」

「まぁ、俺はそちらの畑にいたことがないから、聞いた話にはなるな。これ以上は勘弁してくれ」

「あのぉ。日本人にかなり似ているというのは、僕たちが混じってもばれないですか?」

「森野(もりの)君。向こうは概ね一五〇だからな、身長で分かるだろうな。君は一七〇くらいはあるだろう?」

「うっ。そうでした」

「いやいや、そう落ち込むな。現代の日本人で言えば、殆どの人が頭一つ分は高いからな。他には?」

「そこの、役職で良いでしょうか、そこの一番上に書かれているのは“かみひめ”と、読むんでしょうか? それは一体……」

「田辺(たなべ)君か。残念だが、その読み方は外れだ。“かみこ”と読むそうだ。それと、まぁ、現代日本に当て嵌めると、役職か、官職と言うことになるか。一番上に書いたのには意味がある。“神姫(かみこ)”は、最高権力者であり、巫女の役割もあるそうだ」

「……と言う事は、国王とか、皇帝とか……。いや、巫女的な役割というのであれば、今もそうではあるんですが、平安時代以前の天皇と同じ位置づけですか?」

「すまん。そこまで詳しくはないが、現人神、だったか? それに近いのかもしれんな」

「安芸(あき)さん。午前中に説明してくれた、係長が言っていた、現地の服を着るとは何ですか?」

「剣峰(つるみね)君、よく思い出したな。忘れるところだったよ。現地の服を着るとは言え、現地調達ではない。現地の繊維をこちらで、現地の服を再現した服と言うことだ。詳しいことは省くが、地球人にあった服に仕立てたと言えばいいか。向こうの拠点に各種サイズを用意してある。あぁ、後は生活習慣に関してがあるか。特に、行く先で違うのは挨拶だな。立った状態で肩書きのある人物に対しては、日本と変わらない顔を伏せた状態で腰を折る挨拶だな。それ以外は、顔を見合わせた状態での本当に軽い会釈。一番馴染みがないのは、謁見などの時だな、これは、実演するな」

 そう言った智(さとし)は徐に胡座をかき。両手を拳に握り、両膝の外側について、腰を深々と折って見せたのである。

「よっと。以上だ。えーと、これは男女に違いはないそうだな。ん? そもそも正座はないそうだ、間違えてもするなよ。特に女性陣」

「あ、あ、あの。あ、あ、安芸(あき)さん」

「森野(もりの)君。慌てるな」

「あ、あ、すいまてん」

「で、どうした。何か疑問か?」

「は、はい。えーと、正座ではなく僕たちも胡座、と言う事は、えーと、その……」

「……あぁ、なるほど。安心しろ、日本に近いとは言え、下の服装は全員裾の窄んだ袴だそうだ。股の部分も閉じているそうだからな」

「あ、ありがとうございます」

「これくらいで良いか? あぁ、そうだ。今回の依頼内容は、未知の領域の調査、と言う事だ。詳細は、向こうに行ってからになるが、何でも得体の知れない生物らしきモノがいるらしい。それの調査と言ったところだ。まぁ、買い物もあるから、早めに切り上げることになっているからな。今日はここまでだ」

 大雑把に、現地のことをレクチャーし終えた面々は、早々に退社と相成った訳である。

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