第6話 家族と親戚総出のデレデレ甘やかし大作戦!(前編)
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「……ルミィ……! ああ、私の愛しい天使……!」
部屋の扉が静かに開いたかと思うと、可憐なドレスを揺らした美貌の女性――私のお母様が、涙を浮かべて私のもとへ駆け寄ってきた。
そのすぐ後ろには、普段は帝国屈指の冷徹な宰相として恐れられているお父様(公爵)が、これ以上ないほど目尻を下げて追ってきている。
お仕事がとにかく多忙な二人は、病弱な私に滅多に会いに来られなかった。
でも今日は、久々にまとまったお休みが取れたらしい。
「まあ……! シワひとつない、なんてプリプリでモチモチのお肌なの……! 生まれてからずっとお部屋に閉じ込めきりにして、寂しい思いをさせてごめんね、ルミィ……」
お母様は壊れ物を扱うようにそっと私を抱き上げると、その温かい胸の中にぎゅっと優しく抱きしめてくれた。
ほっぺたをすりすりと寄せられる。お母様から漂う柔らかなお花のような香りと、あふれんばかりの母性に、私の脳内(アラサー女子)の心もじんわりと温かくなっていった。
(お母様……! 閉じ込められてたなんて思ってないよ! 陰でピピと筋トレしてステータス爆上げしてただけだから気にしないで……!)
声には出せないけれど、私は
「ふにゃあ……♪」
と、お母様の首元に小さく頭をすり寄せてみた。
「ああっ……! ルミィが、ルミィが私に甘えてくれているわ、あなた……!」
「なっ……! 羨ましいぞエルザ! 私にも、私にもルミィを抱っこさせてくれ!」
お父様が居ても立っても居られない様子で割り込んできた。
外では数千の騎士を束ね、国王すら一目置くと言われる威厳あふれる公爵様だ。しかし今の顔は、完全にただの親バカな父親である。
「ほらルミィ〜、papaですよ〜。パ〜パ〜って言えるかな〜?」
「ちょっとあなた、生後9ヶ月の赤ちゃんに無茶を言わないでちょうだい。でもルミィ、ママって言ってみる……?」
二人して私の顔の前に顔を近づけ、デレデレの笑顔で
「パパだよ〜」
「ママよ〜」
と交互にアピールしてくる。
(ふ、二人とも顔が近い……! そして愛が重い……!!)
そんな微笑ましい夫婦の時間を打ち破るように、部屋の扉が ドバァン!! と音を立てて開いた。
「お父様、お母様! 僕のルミィに何をされているのですか!!」
現れたのは、銀のトレイに特製ミルクを乗せたお兄様だった。
お兄様は紫色の瞳を吊り上げ、凄まじい足取りでベッドへ詰め寄ってくる。
「ルミィはまだ皮膚がとても繊細なのです! お父様の髭が当たったらどうするのですか! 今すぐルミィを僕にお返しください!」
「レオ、いくら息子でも父親に向かってその言い方はなんだ! 私はただルミィを高い高〜いしてあげたいだけだ!」
「ダメです! 脳が揺れます! ルミィのミルクの時間ですから、お引き取りを!」
(お兄様vsお父様の、不毛すぎるルミィ奪い合いバトルが始まったーーー!?)
お父様とお兄様がバチバチと視線で火花を散らす中、お母様はクスクスと嬉しそうに笑いながら、私を優しくあやしてくれている。
前世では一人で静かに暮らしていた私にとって、こんな風に家族みんなから奪い合われるほど愛されるのは、少し恥ずかしくて、でも跳び上がりたいくらい嬉しかった。
(ふふ……この家族の子供に生まれて、本当によかったな……)
私が家族の温もりに浸っていた、まさにその時――。
「ぬはははは! 楽しそうなことをしておるな、オルランド公爵家!」
廊下から、腹の底に響くような豪快な大声が響き渡った。
「なっ……!? この声は……!?」
「まさか……!?」
お父様とお兄様が同時に顔色を変える。
次の瞬間、護衛の騎士たちを
「よいではないか、よいではないか!」
と薙ぎ払いながら、一人のド派手な衣装を着たダンディなおじ様が部屋の中に躍り込んできたのだ。
その人物の顔を見た瞬間、私は心の中で叫んだ。
(えええええっ!? このおじ様……肖像画で見たことある! この国のトップ、国王陛下じゃないのーーー!?)
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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