第33話 嵐の前の学園生活と、第二王子の溜息
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
16歳の賑やかな誕生夜会が明け、学園には再び平穏(?)な日常が戻ってきた。
しかし、2年生の教室では、レナード王子とマリアの周りだけが異様な浮かれモードに包まれている。
「ねえレナード様ぁ、今日の放課後は王都で一番流行っているスイーツショップに行きたいですわ〜!」
「ハハハ! いいぞマリア。君の頼みならなんだって叶えてやろう。どこかの病弱で可愛げのない婚約者と違って、君といると心が安らぐよ」
相変わらずマリアにデロデロになりながら、右肩をガクンと下げた歪な体勢で語り合うレナード王子。
見学席のすみっこで、優雅にお手製の特注プロテインティーを嗜む私は、可憐な笑みを浮かべたまま心の中で冷ややかに観察していた。
(……殿下、右の骨盤が完全に下がっておりますわね。マリア様の体重に引っ張られて、脊柱起立筋のバランスが壊滅的ですわ)
『フラン! 王子様、あのままだとあと半年でギックリ腰になっちゃうよ!』
(自業自得ですわピピ。体幹の軸を捨てた者に、正しい姿勢は訪れませんの)
そこへ、書類の束を抱えた第二王子・ヴィンセント様が、遠い目をして歩み寄ってきた。
「……フランシスカ嬢。兄上とマリアのあの醜態……大変申し訳ありません。同じ王家の人間として、穴があったら入りたい気持ちです」
「まあ、ヴィンセント様。お気になさらないでくださいな。私はただ、殿下の背筋の衰えを静観しているだけですもの」
ヴィンセント様は周囲に聞こえないよう、声をひそめて溜息をついた。
「父上(国王)から伺いましたよ。学園の卒業パーティーで兄上が『婚約破棄』を突きつけてくる可能性が高いと……。本当に兄上の愚行には頭が痛いです。……ですが、フランシスカ嬢」
ヴィンセント様は真剣な眼差しで私を見つめた。
「もしその時が来たら、どうか手加減をしてあげてくださいね。学園のホールごと兄上を『粉砕』されては、後片付けをする私の胃が持ちませんので……」
「あらあら、ヴィンセント様ったらお戯れを。私はただの病弱で儚い侯爵令嬢ですわ?」
首を可憐に傾けて微笑む私に、ヴィンセント様は「(その笑顔が一番恐ろしいのです……)」と胃を押さえながら去っていくのだった。
いよいよ学園生活も後半戦。
運命の卒業パーティー(婚約破棄イベント)に向けて、私の体幹(と第二の人生への準備)は完璧に仕上がりつつあった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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