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第32話 国王陛下の頭痛と、二人の妃、そしてギルド長(回想)

この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。

これは、フランシスカの16歳の誕生夜会より少し前――。

王城の執務室で、国王(おじ様)が頭を抱えていた時のことである。


「……ギルド長。もう一度言ってみろ。我が姪のフランシスカが、なんだと?」


執務室の床に平伏し、滝のような汗を流しながらガタガタと震えているのは、王都冒険者ギルドのトップであった。


「は、はいぃっ! 騎士団には伏せておりますが……先日、単身でS級指定の氷結竜を撃撃破し、素手で地殻竜を叩き伏せた噂のS級冒険者《白銀の粉砕姫》様……その正体は、アイゼンベルク侯爵家のフランシスカ様で間違いございません……!」


「……は?? あのおしとやかで病弱なルミィが……竜を素手で……?」


国王は書類を落とし、呆然と天井を見上げた。

幼い頃から「病弱で儚い可憐な少女」として愛でてきた愛しい姪。

それがまさか、伊達メガネ一本で変装し、裏では国家級の魔獣を拳で粉砕しているなど、誰が信じられるだろうか。


「本当です陛下!! 彼女が放つ『圧倒的な体幹のオーラ』……! 嘘偽りございません! 彼女に睨まれた瞬間、私の胃に穴が開きそうになりましたぁぁ!!」


泣きつくギルド長をなんとか追い返した国王は、こめかみを強く押さえた。


「はぁ……ただでさえ後宮や後継者問題で頭が痛いというのに……」


そこへ、ふわりと甘く心地よい香りを纏って寄り添ってきたのは、国王が心から愛している側妃(ヴィンセントの母)であった。


「まあ、あなた。そんなに眉間にシワを寄せて……お疲れではありませんか?」


「……ああ、お前か。すまん、少し考えごとをしていてな」


国王は側妃の細い腰を抱き寄せ、その肩に疲れた顔を埋めた。

王妃との政治的なやり取りや国政の重圧から解放されるこの静かな時間だけが、国王にとって唯一の安らぎなのだ。


「ルミィのことでしょう? ヴィンセントからも聞いておりますわ。あの子は本当に健やかで(力強くて)素晴らしいお嬢様ですこと」


「健やかすぎるのだよ……。素手で竜を殴り倒す姪など聞いたことがない。それに……王妃の奴がまた裏で妙な動きを見せている」 


国王は吐き捨てるように呟いた。

レナードの母である正妃(王妃)は、自分の息子を何としても王位に就かせようと必死だった。

幼少期、アイゼンベルク侯爵家の権力と財力を利用するためにフランシスカとの婚約を強引にまとめたのも王妃だ。

しかし今や、レナードがマリアに骨抜きにされているのを利用し、王妃は「病弱で役立たずのフランシスカなど捨て、マリアの後ろだてとなる別の貴族派閥と組むべきだ」と、勝手に裏で手回しを始めているのだ。


「王妃はルミィを『ただの病弱な置物』と見下しているようだが……愚かめ。あの子の本性を知れば、失神どころでは済まんぞ」


「ふふ、王妃様がルミィちゃんの『お力』に触れる日が楽しみですわね」


クスッと悪戯っぽく笑う側妃の髪を撫でながら、国王は深く息を吐いた。


「あのバカ息子レナードが婚約破棄を言い出した瞬間、王妃の野心もろともルミィの『体幹の圧』で粉砕されるのが目に見えている……」


「頼もしい姪御様で羨ましい限りですわ、あなた?」

「煽るな……私の胃がもたん……」


妻の愛らしい微笑みに毒気を抜かれつつも、国王は誕生夜会で姪に渡すための「超高密度魔鋼鉄製のリストウェイト」を宝物庫から出すよう、重い腰を上げるのだった――。

ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。

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