第31話 超・高タンパクな16歳生誕祭と、ブレない姪へのプレゼント
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
高負荷なS級依頼で背筋と広背筋を極限まで追い込んだ夏休みが明け、季節は巡り11月29日。
王都のアイゼンベルク侯爵邸では、フランシスカの16歳の誕生夜会が盛大に催されていた。
会場には絢爛豪華なドレスに身を包んだ貴族たちが集まっていたが、主役のテーブルに並べられているのは色鮮やかな高級赤身肉のローストや特注プロテインジュースといった「超・高タンパク極上フルコース」である。
「ああ……! 我が愛しきルミィ(フランシスカ)! 16歳の誕生日おめでとう! 今日のドレスも世界一可憐だよ!」
目の中に入れても痛くない様子でフランシスカの肩を抱くのは、父親であるアイゼンベルク侯爵。
「お父様、ありがとうございますわ。日頃の体幹トレーニングの成果で、ドレスの着こなしも体幹の軸も完璧に仕上がっておりますの」
「素晴らしいよルミィ! 侯爵家の誇りだ! さあ、これは私からの誕生日プレゼントだよ!」
そう言って父親が差し出してきた箱を開けると、そこには宝石……ではなく、激しい運動後の筋肉の疲労を極限まで和らげる*最高級魔獣抽出マッサージオイルと、特製赤身肉1年分の目録』が鎮座していた。
「まあ! お父様、私の筋肉(背筋)のケアをここまで考えてくださるなんて……! 最高の贈り物ですわ!」
『フラン! このオイル、成分が凝縮されてて大胸筋のリカバリーに最高だよ! お父様素晴らしいね!』
姿を消したピピが興奮気味に念話を送る中、会場の奥から国王陛下とヴィンセント、そしてレナード王子たちが歩み寄ってきた。
「ふん、フランシスカ。誕生日おめでとう。僕からのプレゼントだ」
相変わらずマリアと腕を組み、軸のブレた体勢でレナード王子が差し出してきたのは、華奢で細いガラス細工の小さな髪飾りだった。
「病弱なお前には、そういう儚くて可愛らしいものがお似合いだからな! 粉砕姫のような無骨な真似はせず、大事にするが良い!」
(……握力0.5グラムで粉々に砕けてしまいそうな髪飾りですわね。まあ、お気持ちだけは受け取っておきますわ)
「ありがとうございます、レナード殿下」
私が可憐にお辞儀をすると、一通りの挨拶を終えたレナードたちはマリアを連れて別のテーブルへ向かっていった。その隙を見計らい、伯父様(国王)が手元のグラスを揺らしながら、小さな重厚な箱を私に手渡してきた。
「はぁ……。それにしてもルミィ、お前とレナードの婚約の件は……本当にすまんと思っているよ」
「まあ、おじ様。今さら何を仰いますの?」
そう、レナード王子と私の婚約は、私たちがまだ物心もつかない幼少期に、王家とアイゼンベルク侯爵家の繋がりを強化するために王妃たちに勝手に決められたものだったのだ。
「あの頃は幼かったから分からんかったが……正直、私は優秀で軸のしっかりしたヴィンセントを次の王太子にするつもりでいたのだ。まさか長男のレナードがあんなにもブレブレのおバカに育ち、挙句の果てにマリアとかいう娘に骨抜きにされてお前を軽視するようになるとはな。おじとして、そして国王として本当に顔が立たん」
伯父様は痛む頭を押さえるように溜息をつき、手渡した箱を目配せした。
「……ちなみに私からのプレゼントは、王家の宝物庫に眠っていた『超高密度魔鋼鉄製のリストウェイト(鍛錬用重り)』だ。今のレナードの軟弱なプレゼントより、お前にはこういう実用的な物の方が役に立つだろう?」
「まあ伯父様……! 装着するだけで背筋と大臀筋に更なる負荷をかけられるなんて、素晴らしい逸品ですわ!」
「(喜ぶポイントがやっぱりおかしい……)」と遠い目をするヴィンセント。伯父様は苦笑いを浮かべながら話を続けた。
「お前ほどの才能と可憐さ(と圧倒的な物理力)があれば、もっと良い男などいくらでも選べるというのに……。いっそ私からあの婚約を破棄してやろうか?」
「ふふ、お気持ちだけで十分ですわ、伯父様」
私は可憐に微笑みながら、優雅にお茶を一口すすった。
「殿下から一方的に婚約破棄を突きつけていただく方が、私にとっても好都合なのです。自分から破棄するより、被害者として綺麗に国を飛び出し、世界中の筋肉(トレーニング場)を巡る冒険に出られますもの!」
「(……破棄された後の第二の人生をノリノリで計画している……!)」
伯父様は引きつった笑いを浮かべつつも、「まあ、お前が傷ついていないなら良いのだがな」とどこかホッとしたように肩の力を抜いた。
『おじさん大丈夫だよ! フランは婚約なんて気にしてないし、レナード王子がどれだけブレても、フランの体幹は1ミリもブレないからね!』
姿を消したピピが念話で元気よくフォローを入れる。
「そうだな。むしろレナードの奴が婚約破棄を言い渡した瞬間、ルミィの『体幹の圧』で返り討ちに遭わないか、おじとしてははそっちの方が心配だよ……」
「まあ失礼ですわおじ様! 私はいつだって可憐で病弱な侯爵令嬢ですわよ?」
可憐な笑顔で首をかしげる私に、伯父様は「どこがだ」と呆れつつも、温かい眼差しで16歳になった姪の門出を祝ってくれるのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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