第27話 仮面舞踏会(?)と、ギルド長の決死の機密保持
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
夏休みの伝説的な活躍を経て、学園に戻ったある日の放課後。
生徒会室でヴィンセント様とお茶を飲んでいると、彼がふと真剣な表情で尋ねてきた。
「……フランシスカ嬢。前々から気になっていたのですが、あなたが冒険者ギルドに登録した際、まさか本名をそのまま使ったわけではありませんよね? 侯爵家の令嬢が冒険者をしていると知れたら、社交界が大揺れになってしまいます」
「まあ、ヴィンセント様。私をどなただと思っていらっしゃるのですか?」
私は優しく微笑み、胸を張った。
「当然、完璧な正体隠し(変装)と偽名を用意して登録いたしましたわ!」
「おや、そうだったのですか。それは失礼いたしました。……ちなみに、どのような変装と偽名を?」
「名前は『フラン』と名乗っておりますの!」
「……フランシスカの『フラン』ですね。家族しか呼ばない『ルミィ』という大切な愛称を出すわけにはいきませんものね。……で、変装は?」
「ええ、街へ出る時は、この『伊達メガネ』をかけておりますのよ!」
「…………」
ヴィンセント様は固まった。
私が胸ポケットから取り出した、ただの黒ぶちメガネをそっと指差す。
「……フランシスカ嬢。失礼ですが、それは変装と言えるのでしょうか? 髪色も目元もそのままで、メガネをかけただけのように見えますが……」
『大丈夫だよヴィンセント! フランがメガネをかけると、大胸筋の圧がさらに知的で知的じゃなくなるんだ! ギルドの誰もフランシスカ令嬢だって気づいてないよ!』
姿を消しているピピが胸を張るが、ヴィンセント様は深々と目元を押さえた。
「(……いえ、絶対気づかれていますよね……?)」
◇
実はその頃――王都の冒険者ギルド長室では、胃薬をあおるギルド長の悲鳴が響いていた。
大貴族の顔写真を熟知しているギルド長は、夏休み初日、伊達メガネをかけて優雅に微笑む少女を一目見た瞬間に察していたのだ。
(ひ、ひえぇぇ!? あのアイゼンベルク侯爵家の大令嬢、フランシスカ様じゃないか!! なんでこんな荒くれ者の溜まり場に!?)
しかもその直後、可憐なメガネ姿のまま『地殻竜』を素手で粉砕する姿を目撃し、ギルド長は泡を吹いて倒れかけた。
(侯爵家のお嬢様がメガネ一枚でドラゴン殴り倒してるぅぅ!? もしお怪我でもされたら侯爵家に首を飛ばされるし、かといって『お嬢様ですよね?』なんて突っ込んだら、あの体幹の圧(物理)で消し飛ばされる……!!)
恐怖で胃に穴があきそうになったギルド長は、即座にギルド内に「超極秘・箝口令」を発令していたのである。
『おいお前たち!! あのお方のお名前は“フラン様”だ!! 決して本名や素性を深掘りするな! “完璧に変装されている”体で接しろ! 触れた瞬間、体幹の圧で消し飛ばされるぞ!!』
こうして、ギルド内では「絶対に正体に触れてはいけない(誰もが空気をつむ)S級冒険者・フラン様」という厳重な機密保持が完成していたのだった。
◇
「というわけですので、正体がバレる心配はありませんわ!」
「……なるほど。ギルド長さんの胃の心配をしたくなりましたが、まあ、レナード兄上にバレていないなら良しとしましょう……」
遠い目をするヴィンセント様に、私はニッコリと可愛らしい笑顔を向けるのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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